表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
6-2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

653/700

642.対抗〜教皇side

「この部屋にはないようだ」


 隠し部屋に入った私達2人は、埃を被った執務机や棚を漁った。

しかし先代教皇()が使っていたと思しきガラクタ以外、何も出てこない。


 最終確認に、ミハイルが再び瞳の力を使ったが、やはり見つからなかったようだ。


 とは言え、狭い部屋だ。

確認するのに、そう時間はかからなかった。


 この場所は、私が教皇となる前から在る建物だ。

老朽化したからと、ベルジャンヌ()様が存命中に先代教皇()が廃殿にした。


 姫様亡き後、私は復讐心から教会に入信した。

神など崇めはしない。

私自らの手で、この国を終わらせてやる。


 そんな決意を胸に、まずは見習い神官、次いで神官の中でも上位、そして次期教皇の座へと実力でのし上がった。


 次期教皇ともなれば、教会内に眠る禁術の数々にも気づく。

何よりあの頃は、悪魔(ジャビ)も私とつかず離れずの距離にいて、姫様を復活させられるかもしれない、一縷の望みを見出した。


 最後にはジャビに唆されるまま、ジャビの力を取りこんで、増大させた魅了の力を先代教皇()に使って、過去最短で教皇の地位まで駆け上った。


()()、ラビ様が他ならぬ、()()、探して欲しいとお願いされたヒュシスの欠片……どんな形態をしているのか、そろそろ教えていただけますか。

後は私に任せて、お忙しい公子はお帰りいただいて構いませんよ」


 だとすれば後は、ラビ様に教えてもらった隠し通路しか残っていない。


 そう考えて、ミハイルに帰宅を促す。


 そもそもラビ様は私に頼み事をしたのだから、ミハイルは邪魔だ。

手柄は私1人だけのもの。

ラビ様に褒められ、何なら男として見直されたい。


 そもそもラビ様は隠し通路に入る為の合言葉を、ミハイルに伝えていなかったらしい。

もちろん私も、姫様が、私に、直々に、教えてくれた事を、たかがラビ様の兄などに教えてやるつもりはない。


 姫様の侍女だった頃の記憶が変わり、ミハイルがどんな人間性を備えているかは、以前よりわかっている。


 祖父のソビエッシュと違い、思っていたより人間味があり、義理堅い。

四大公爵家の次期当主としては、リリだった頃の記憶が変わった事も手伝い、ついうっかりと心配してしまうくらい、お人好しかもしれない。


 しかし、お前の去年の初め頃までのラビ様への態度も、私は知っている。

ミハイルは義妹だったシエナから唆されるまま、実妹であるラビ様へキツく当たってきた。


 私自身、ラビ様が姫様だとハッキリ認めるまでは、ラビ様の瞳を狙っていた。

正直、ミハイルの事を責められる資格などない。


 教皇となった私は、魅了の毒牙にかけた先代教皇()を、病死に見せかけて表舞台から消した。


 代々の教皇達が隠し、恐らく意図的に増やした禁術の数々を見つけ、当然のように奴を実験台にした。


 やがて姫様を復活させるべく、奴が貯めこんでいた隠し金を湯水のように使って、キメラ実験を始めた。


 奴が「もう殺してくれ」と懇願してくる度、笑い転げそうになった。


 潜伏している凶悪犯罪を犯した罪人を、幾人も見つけては、実験台にした。


 姫様が死して何十年も経っているのに尚、稀代の悪女と呼ぶロブール(こんな)国の人間が、どれだけ苦しんでも罪の意識は芽生えなかった。


 それでも姫様の件を除けば、罪を犯していない人間に手は出していない。


 ギリギリのところで踏み止まっていたのは、姫様が復活した時、隣に立っていたかったからだ。


 さすがにその一線を超えれば、姫様は許してくれないと本能的に感じていたんだろう。


 実験は成功目前。

姫様の美しい外見も再現し、ジャビから渡された銀の混ざる白桃色の頭髪も、培養して増やせる見込みを立てていた。


 そして最後に、ラビ様の姫様と同じ(藍色の)瞳を狙ったのだ。


 そう、自分が仕出かした事が、どれほど罪深いかわかっている。

実験台にした人間達には、何も思わない。

それくらい自分が壊れていると自覚はしている。

それでも姫様の生まれ変わり(ラビ様)を狙った自分は、未だに許していない。


 だからミハイルを責める資格などないと、わかっているが、それはそれ、これはこれというやつだ。


 なんて考えていれば……。

 

()()、妹が自分から、()()、頼んできたのだ。

兄として時間を割くのに、何ら問題はない。

教皇こそ、忙しいだろう。

隠し通路の事は聞いている。

私に合言葉を教えて、執務に戻ってはどうだ?」


 ミハイルめ。

しれっと対抗してきたな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ