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639.リドゥール国の内情〜ベルシュリーside

「残念ね、ベルシュリー。

もっと賢く立ち回りなさい。

今のロベニア国王も、王家も、四大公爵家も、少しずつ変わってきているわよ?」


 年端もいかないはずのラビアンジェ嬢の圧を、ただ黙って受けながら聞く。


 儂の体に巻つくピケが、それとなく癒やしの波動を送ってくれなければ、体を震わせていたかもしれない。


 恐怖とまではいかないが、圧倒的な存在感の前に、膝を折りそうな自分を感じる。


 自分が生まれる前に亡くなったから、王女を見た事すらない。


 しかし今のラビアンジェ嬢を通して、もし王女が生きていたなら、今頃は国王になっていても不思議ではないと思わせられる。

それくらい、王者としての風格を感じてしまう。


「そもそも正義感をかざし、ロベニア国を否定しかしないのなら、何故この国にロベニア国民である月影を招く必要があったの?

更に私の正体がロブール公女だと確信するや、交渉しようとしていた理由は?」

「それは……」

「リドゥール国として今後、更に発展していくには、ロベニア国を含めた周辺国と、新たな関係を築く必要があったからよね?」


 図星を刺されて口ごもると、クスリと笑う目の前の少女。

末娘がロベニア国で流行っていると言っていた、悪役令嬢というより、むしろ悪女のような風格を醸し出す。


「私に気づかれた時点で、既にロベニア国からリドゥール国の足元を見られていると気づきなさい。

前の族長達の意志が強く、閉鎖的となってしまったリドゥール国から、若い国民達の幾らかが流出し始めたのではない?

そしてロベニア国が同じ過ちを繰り返さないよう監視していたのは、始まりこそベルジャンヌに恩を感じていたからだと、私も思っているわ。

けれど時が経ち、不出来なロブール公女として、ともすればベルジャンヌのように貶められていた私に、あなた達は何も手助けしていない。

あなた達は結局、何もしなかったの。

だからね、ベルシュリー。

あなた達がイメージするロベニア国民と、私の中のリドゥール国民であるあなた達の、一体何が違うのかが私には全くわからないわ。

あなた達はただ、ベルジャンヌを稀代の悪女と呼ばなかっただけ。

ベルジャンヌが売った恩に、ただ感謝していただけ。

ベルジャンヌの真実や、ロブール公女としての私の扱いを知っていると言うのなら、それこそもっと早く、今のようにロベニア国へと働きかけ、何かと引き換えに改善を要求する事だってできていた。

だって今よりも昔の方が、リドゥール国のロベニア国に対する発言力は、大きかったはずですもの。

早ければ早いほど、より簡単にロベニア国へ要求できたはずなのに、どうして長らく静観してきのかしら?」


 ラビアンジェ嬢は、既に答えはわかっていると言わんばかりの口調だった。


「他国と争って、再び国力が落ちるのを嫌悪したからでしょう。

だってロベニア国を征服したところで、次に待つのは国力が落ちた状態で、別の国と生存競争ですものね。

下手をすればリドゥール国の国力を支えている、エナDすらも利権を奪われてしまうわ。

逆を言えば、エナD頼みのこの国は、現在進行系で衰退している」


 ラビアンジェ嬢の言う通りだった。


 昔こそ、エナDは重宝されて高く売れた。

それこそ衰退したリドゥール国の国力を、祖父達が一丸となって盛り返す礎になった。


 しかしここ何十年も大きな侵略戦争がなく、王女によってもたらされた蠱毒の箱庭やエナDという、周辺国それぞれの牽制材料により、ロベニア国を中心に各国は平和な世の中を築いている。


 エナDの価値がかなり落ち、ラビアンジェ嬢の言う通り、閉鎖的な考えに偏り始めた上の世代を厭う若者達が増えた。


 若者達はロベニア国の独自文化に関心を高めている。


 儂の息子のルカルドや、ロベニア国王立学園ではカルティカの名で通う末娘、カルティカーナのように、1度国外へ出ると自国へ帰りたがらない者も増えてきた。


 中でも、今回月影を招く要因の1つとなったファッション文化。

トワという作家が書く小説や舞台、トワが見出したと噂される絵師が手掛けるイラストのような創作文化。

更に魔獣食材を使った奇抜な料理や、ラーメンのような食文化。


 これらには、今回の騒ぎで代替わりした族長達の下の世代だけでなく、儂より少し若い二人の族長達の世代も興味津々だったのだ。


いつもご覧いただき、ありがとうございます。

すっかり忘れていて、先行投稿しているカクヨムで感想頂いて思い出した、カルティカちゃんの名前の伏線。

ルカルドとカルティカの数年ぶりの再会で、カルティカを【カナ】と呼んでいたのは、本名がカルティカーナだったからなんですが……伏線回収のタイミングを、すっかり外してしまいました(;・∀・)

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