表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
6-2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

647/698

636.解せない

「呼んでおいて、待たせてしまったな」

「仕方ないわ。

突然、三大部族の内、2つの部族の長が交代したのだもの。

それにお月見は好きなのよ」


 月明かりの下、ベルシュリーが静かに尋ねる。


 族長の急な交代があり、月影としての仕事は明日からとなった。


 先代扱いとなった2人の族長達は退任にゴネ、引き継ぎをしないと言い出した。


 けれど実は、既に族長の仕事は息子と孫、それぞれの世代の奥様達によって洗い出しや、根回し終わっていて、引き継ぎは必要なかったのだとか。

準備万端だったのね。


 とは言え他の2つの部族と違い、族長を交代しないフィルン族長であるベルシュリーが在任してこそ、可能だったみたい。


 なのにベルシュリーまで一緒に交代しようかと言い出し、それはフィルン族も含め、全ての部族から大反対を受けたとか。


 姿を消した状態のまま、私と一緒にお月見していたピケルアーラが、魔法を使って情報収集しては、とっても嬉しそうに報告してくれたわ。


 小さな子供が親に、とにかく何でも報告してるみたいで、可愛らしかったのよ。


「そう言ってくれると、ありがたい。

それよりピケ。

そこにいるのだろう」

「シュリー、久しぶり!」


 ピケルアーラが姿を現し、ベルシュリーにピョンと飛びつき、縦巻きに巻つく。


 顔を見合わせる1人と1体の絵面で、あちらの世界の動画で見た、人がアナコングに襲われる映像を思い出したのは秘密よ。


「ピケ、話せるようになったのか。

それにその姿は……」


 ベルシュリーは、念話でしか話せなかったピケルアーラの若々しい少女のような声にも、様変わりしたピケルアーラの姿にも驚いたみたい。


 それはそうでしょうね。

元は薄っすらと金の光が反射していた、黒蛇そのものの姿をしていたピケルアーラ。


 今は父親のラグちゃんと同じ、白銀の鬣に、胴の長い竜の姿になっている。


 けれど体の色は、母親であるピヴィエラと同じ白金色。

そしてピヴィエラと同じような、少し蝙蝠に似た一対の翼が生えている。


「その……瞳の色は……聖獣キャスケットと同じ?」


 ベルシュリーは、聖獣の瞳の色が、契約者の瞳の色と似るって知っていたのね。

父親のリャイェンか、ベルジャンヌの祖父だったロウビルから聞いていたのかしら?


 ベルシュリーは私の瞳をジッと見て、更に驚きから目を瞠り、一言「金環……」と漏らす。


 やがて合点がいったかのように……イケオジの慈し笑みがこぼれたわ!


「そうか……そうなのだな。

ピケは、やっと見つけたのか」

「うん!

ずっと会いたかったベルジャンヌに、やっと会えたの!」


 ベルシュリーは何かに、いえ、違うわね。

ピケルアーラが私をベルジャンヌと呼んだのに、そこには驚きを見せていないわ。

きっと私がベルジャンヌか、もしくはベルジャンヌに近い存在だと、本能的に理解して受け入れた?


 ベルシュリーは順応性に優れたイケオジに違いないわ!

ベルジャンヌからすれば、異父弟!

弟の推し活をする、年下の姉もありね!

お姉ちゃん、推しちゃうわ!


「……何か興奮していないか?」

「大丈夫!

ラビアンジェは推し活中なだけ!」

「……おし、かつ?」

「うん!

契約してるから、わかるよ!

ラビアンジェはシュリーを……」

「いや、ピケ、いい。

何故か嫌な予感がする。

知らないままでいいから、皆まで言うな」

「そう?」


 久々に会ったからね。

随分と話が弾んでいるわ。


 それにしても、嫌な予感て何かしら?


 首を捻りかけて、ハッとする。


 私からすれば弟。

とは言え、ベルシュリーからすれば私は部外者ですもの。


 感動の再会に嬉し泣きしそうなのに、私が邪魔で集中できないに違いないわ!


 遠慮せず、イケオジのイケ泣きを見せてくれても……。


「あー、月影。

いや、今は何と呼べば良いかな」


 ベルシュリーだけは、人前で私の名前を呼び分けていた事は気づいていた。


 私の滞在先は、ベルシュリーが生まれ育ったと聞いた、この邸。


 月影がリドゥール国の敵視している、ロベニア国の公女だった場合を考慮したからかしら?

どこにでも滞在させて、何かしらの危害が加えられると困るもの。


 それとも何か話があって?

わざわざ邸の庭に、人目のない時間を狙って呼び出したのだもの。


「ただのラビアンジェで構わないけれど……」

「何故、そのように生温い、年寄りくさい笑みを……」

「お姉ちゃんでも……」

「んんんっ。

ラビアンジェ嬢」

「残念」


 残念と思ったのは私の方なのに、盛大な咳払いからの、残念な何かを見るような、盛大にドン引きした顔で私を見たのはベルシュリーの方だった。


 解せない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ