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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
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634.面食い

「ねえ、あなた達?」

「「何だ(何じゃ)」」


 問いかければ、馬鹿にしたような目を向ける、初恋漫談に沸いていた族長達。


「先代のフィルン族長であるリュイェンが、ベルジャンヌ王女から、とある卵を預かっていたのを知っているかしら?」

「もちろんだ。

卵は比較的すぐに孵化した。

ピケルアーラという、黒蛇なのに体がキラキラした蛇型魔獣だ。

ピケルアーラを我がチャド族で、いや、俺の家族として預かりたい。

俺は何度もリュイェン殿に申し出た」


 筋骨隆々族長が鷹揚に頷く。


「それは儂とて同じじゃ。

じゃがリュイェン殿は、王女から直々に預かったのだと言うて、手放してくれなんだ。

あんな美人な嫁を得ておいて、王女との絆も手放さんとは……」


 昔の気持ちが蘇ったのかしら?

ツルリ族長がギロリとベルシュリーを睨んだわ。


 ベルシュリーは、慣れているのね。

またか、と小さく呟く。


「親父は、ピケルアーラの意志を尊重していただけだ。

ピケルアーラが望めば、いつでも嫁に出すと言っていたが……」

「フィルン族長よ、皆まで言うな。

生まれたピケルアーラが面食い蛇だったのは、俺もシーン族長もわかっている」


 筋骨隆々族長の方は、諦めたかのような表現で首を横に振りつつ、ベルシュリーの言葉を遮る。


 それにしてもピケルアーラの話を持ち出したら、まさかこんな風に三者三様の反応を見せるなんて。


 つい、顔が綻んでしまうわ。


 だって彼らの中には、ピケルアーラへの愛情が滲み出ているもの。


 ベルジャンヌだった私があの日、卵だった()()()をリュイェンに託すと決めた事は、間違いではなかったみたい。


『シュピー』


 ふふふ、胸をなで下ろした私の気持ちが伝わったのかしら?

私にだけ聞こえる噴気音が、耳元で聞こえたわ。


 けれどピケルアーラったら……()()()()面食いだったのね?


 思い当たる節があり、族長達の会話に口を挟まず静観する。


「ピケルアーラはリュイェン殿の顔が気に入って、常に腰に巻きついていた。

だが時折、食指を変えて違う腰にも巻きつく時はあった。

決まって見目のよい、爽やかな雰囲気の男ばかりのな」

「それでも諦めきれず、ならばと我が子を6人も作り、ピケルアーラに腰を乗り換えんかと持ちかけたのじゃがが……」

「そこにいるフィルン族長が生まれて、成人する頃には、ピケルアーラは主に巻きつく腰をフィルン族長に移し、更にその息子のルカルドへと移してしまった。

16人いる俺の子や孫も、ピケルアーラは気に入らなかったらしい」

「儂は、ひ孫も入れれば20人はおったのに……」


 しゅんと項垂れる2人の族長達。


 どうしましょう……不純な動機で大家族になったって事しか、頭に入ってこないわ?


 けれどそろそろ話を軌道修正すべきよね。


「……そう。

なら、もしもピケルアーラがルカルドから、巻きつく腰をロベニア国の人間に乗り換えたなら?

チャド族とシーン族の老害になりつつあるそこの2人は口を噤んで、そろそろ次代の族長にその座を譲ってくれるかしら?」

「「老害だと(じゃと)?!」」

「そうよ。

少なくともリドゥール国は、そろそろ方針転換しなければ、何十年も前と同じく国力を落とすわよ?」

「はあっ?!

小娘、身の程知らずも大概にせんか!」

「王女とピケルアーラを引き離した元凶が、ロベニア国だ。

ピケルアーラが許すはずがない。

それにピケルアーラが腰を乗り換えた事と、次の代に族長を譲る事は別の話だ。

そもそもまだ次の族長だと認められそうな者もいない」

「そうじゃ!

次代はな、王女を稀代の悪女呼ばわりする国なんぞと交流して、リドゥールを発展させたいと意味のわからん理屈をこねる者ばかりじゃ!」

「王女を未だに稀代の悪女と呼ぶロベニア国から、何を学ぶ?

性根の悪さか?」


 私の言葉に激昂するツルリ族長と、激しい怒りを滲ませながら嘲る筋骨隆々族長。


 対してベルシュリーは終始無言。

僅かに眉根を寄せ、私の背後をじっと見ていた。

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