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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
6-2

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632.乱入者

__コンコン。

「すみません、長。

あの……」


 内心、オルバンスが保管していたというベルジャンヌの肖像画は、誰がいつ描いたのかと首を捻っていた時、ノックがして、部屋の外から遠慮がちな声が投げかけられた。


 月影の正体は性別も含めて、基本的に隠しているわ。

あえて人払いをし、ベルシュリーと2人きりでいたから、遠慮するのも当然ね。


「邪魔するぞ、ベルシュリー」


 遠慮がちな声を遮ると同時に、無遠慮なしわがれた(お年寄りの)声がして、ドアが不躾に開く。

もう1人、別のお年寄りも連れ立って、許可なく入ってきた。


「……シーン族長、チャド族長」


 ベルシュリーは、軽く咎めるような口調だから、予定外のお年寄りが2人、乱入してきたのね。


 なるほど。

このお年寄り達は、リドゥール国三大部族である、シーン族とチャド族の長達。


 ベルシュリーがそれぞれの名前を呼びながら、それぞれに顔を向けて呼んだお陰で、どちらが誰かわかったわ。

きっとわざとそうしてくれたのね。


 気が利くオジサマ、素敵か!


 嗄れた声のシーン族長は、ヒョロリとしているわ。

頭がツルリとしている。


 チャド族長は、筋骨隆々なお年寄り。

髪は短髪で、元からなのか、加齢のせいかわからないけれど、真っ白。


「心配するな。

お前はそのまま外にいろ」


 恐らくドアの向こうで、遠慮がちに声をかけたベルシュリーの部下は、オロオロしているのでしょうね。


 部屋には絶対に入るなと命じていた部下に、ベルシュリーが軽く手を振り、自らドアを閉めに行く。


 その間にも2人の族長達は私の対面に、テーブルを挟んで許可もなく座る。


「月影、2人は君の正体を明確には知らなかったが……」

「そうね?

今は認識阻害の魔法もかけていないし、確証を得たという事かしら。

さすがに私の髪色は目立つもの」 


 後から来た2人の長達は、私を厳しい目で見る。

ベルシュリーと違い、歓迎されているとはとても思えない。


「ふん、やはりな。

出来損ないと噂されるロブール公爵家の末娘が、月影だったか」

「あらあら。

はじめまして。

リュンヌォンブル商会より派遣された月影よ」


 特に立ち上がる事もなく、筋骨隆々な方の長へと言葉だけの挨拶をする。


「平民の所作じゃな。

それは物を知らん、ロベニア国の公女故か。

それとも己がロベニア国では高い地位にあるからと、儂らを馬鹿にしておるのか」

「まあまあ。

今の私は月影として、フィルン族長に会いにきているわ。

基本的に正体は明かさず、デザインのみに専念するデザイナー。

それが月影であり、フィルン族長も同意して人払いをしてくれていた。

なのに突然、人が乱入してきたばかりか、挨拶も自己紹介もせず、乱入者が睨みつけてくる。

これでは対応に困るというものよ?」


 言外に失礼なのは、そちらだろうとツルリな頭皮の長へ指摘し返す。


 もちろん、どちらにも淑女らしい微笑みを投げておく。


「こちらがシーン族長。

そしてこちらがチャド族長だ。

月影。

我らが呼びつけておいて、すまなかった」

「ふん、デザイナーとして仕事を引き受けたんじゃろう。

なら月影の方が礼を尽くすべきじゃ」

「シーン族長。

彼女は月影としてここへ来ているし、条件つきとは言え我ら三大部族は、ロベニア国への留学者をリドゥール国より送り出すと決めたはず。

わかっているだろうが、月影は……」


 私を睨む族長2人の間に、わざと割って入るベルシュリー。

族長達を紹介し、私への謝罪はもちろん、族長達へも注意していく。


 イケオジ!?

好物よ!

帰ったらオジサマ推しの小説を書きたいわ!


 思わずベルシュリーの勇姿に、うっとりとした目を向けてしまう。


 ベルシュリーは祖父に似たのか、スラリとしながらも男性ならではの筋肉がついているの。


 ベルジャンヌからすれば、異父弟!

つまり弟よ!

弟を推す姉になっても良いかしら!?


「月影、何故そんな狂気を感じる眼差しを……しかも興奮気味?」

「うふふ。

有り寄りな有りの考えに、ついうっかり支配されているだけよ」


 ベルシュリーがそれとなく、腰掛けた椅子をテーブルから離したわ?


 大部族の長なのだから、ここはズズイッと男らしく、いっそ()の隣にでも座ってくれて構わないのよ?

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