表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

637/700

626.本当の出会い〜影虎side

 月和といたはずの俺は、死者だけが訪れる事のできる輪廻の輪を眼前にして、月和との本当の出会いを思い出していた。


    ※※※※

「大丈夫ですか?」


 そっと差し出された白い手には、ハンカチ。

ハンカチには白い彼岸花が刺繍されていた。


「……あー……ぅっぷ」


 大丈夫ですと言いたかったけど、それどころじゃねえな、こりゃ。


 ……完っ全に、飲み過ぎだ。


 学生の頃から長らく付き合って、そろそろ結婚しようと考えてた矢先の、彼女の浮気。


 いや、前からちょっとずつ、怪しいなって思う事が増えてはいたんだよ。

そのせいで、しようと思ってたプロポーズを、ここ1年くらい先延ばしにしてた。


 なんて不幸話を思い出して、吐き気と戦ってみてんだけど……駄目だ……吐く……。


 思わずそのハンカチを奪うようにして、口元を覆う。


「そうだ」


 不意に頭の上で、ガサゴソと鞄を漁るような音が聞こえた。

暫くすると、袋を手渡される。


「ここに吐いて。

ほら、いいから」


 場所は駅を出た直後の階段。

そろそろ終電が出るから、俺達を慌てて素通りする人間が多い。


 袋を握りしめて、それでもどっかで理性が働く。


 いいって言われても、躊躇する。

だってこの袋は……。


「保冷バッグだから、すぐに液漏れなんてしないわ。

ここで床に吐き散らかすよりいいでしょう。

いいから、さっさと吐きなさい」


 多分弁当入れとかに使ってんだろう。


 何のキャラクターかさっぱりわからん……というか、キャラクターか、コレ?

何かのご当地キャラクターとかなら、まあわからなくもねえ奇怪な柄が刺繍された保冷バッグ。


 それを俺の手からさっと奪い直して、顔にフィットされちまった。


 そのままバシッと背中を軽くハタかれたら、もう止められない。


「ぅおえっ」

「そうそう、それでいいの。

ほら、全部吐いて。

我慢して、後から目も当てられない大惨事になるよりマシでしょう」


 どこの世話焼きババアだと思うも、口調も背中をさする手つきは優しい。


 正直、顔は全く見れてねえ。

声のかんじからすると、俺と同年代くらいか?


 相手の事を確認してえ。


 けどハンカチ握りしめて、袋にゲロっちまうのが止められねえ。


 そんなに時間は経ってなかったと思うんだけど、どうなんだ?

所々、記憶が途切れてるような気もする。


 スッキリしてきて、気が抜けたのもあったんだろう。


 失恋、というか、長年付き合った恋人からの、最悪な裏切りが精神的にキツくて、連日寝てなかったのも悪かった。


「やべ……ねむい……」

「うおっ?!

トラ兄?!」

「あらあら、お知り合い?」


 弟の声が聞こえて……どっか呑気な女の声がして……そっから……意識が……飛んだ。


 で、起きたら玄関入ってすぐの廊下に転がってた。


 布団が掛けられてあったから、弟がここまで運んでくれたんだろうな、とは理解した。


 俺は筋肉質で比較的ガタイがデカくて重い。


 対して弟は、見た目からしてインテリ系の体格だ。


 玄関入った所まで運んでもらえただけで、有り難い。


「あー、あったま痛え」


 とりあえず、布団を俺の布団に戻してから、人の気配がする台所まで行く。


 思ってた通り、弟が朝飯の準備をしてくれてた。


「あんな性悪な元カノごときの浮気で、やけ酒なんてするからだよ」


 弟よ、機嫌が悪いな。

兄ちゃんが悪かった。


「なあ、昨日、結局俺はどうなって家に帰ってきたんだ?」

「トラ兄……まさか覚えてないの?!

俺に電話したのは覚えてる?」

「あー、そこは覚えてる」


 意識がやべえ、酒飲みすぎた、吐く、とか思いながら、飲み屋近くの電車に乗る前に、大学生の弟に電話した。


 吐き気に堪えながら、何とか家の最寄り駅には辿り着いた。


 で、改札口から出入り口の階段付近で蹲ったまでは、ハッキリ覚えてる。


 誰か……女性に介抱されたような記憶はあるっちゃ、あった。


 でも記憶はおぼろげ過ぎるし、頭がガンガンする。思い出すのも一苦労で、早々にギブアップだ。


「うわ、それ本当?

本当に覚えてるのそれだけ?」

「兄ちゃんだって、飲んでやさぐれたい時はあるんだ。

あ、そろそろ味噌汁できた?」

「もう!

ほら、シジミの味噌汁!

あんな元カノにやさぐれるなんて、次の彼女見つける前に、人を見る目を養ったら!」

「できの良い弟で、兄ちゃん嬉しいよ。

嫁に行かずに、このまま家にいてくれて良いからな」


 なんて軽口を叩く俺達兄弟は、贔屓目に見ても仲が良いだろう。


 ちなみに両親は既に他界。

5歳下の大学生の弟と、両親が残してくれたこの家で2人暮らしだ。


 言葉からも解る通り、弟は元カノとはソリが合わなかった。


「ハイハイ。

それで、昨日の事だよね」


 弟にあしらわれながら、シジミの身をちょいちょいたべながら、昨夜のやらかしが判明して……俺はとうとうテーブルに突っ伏してしまう。


 もう絶対、やけ酒はしないでおこうと固く心に誓った。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

お知らせです!

稀代の悪女4巻が、とうとう発売となりました!

一応今回も店舗特典にSSを書いているので、よろしければ対象店舗にて購入いただければと!

詳しくはこちらに↓

https://kadokawabooks.jp/product/kitainoakujo/322411000859.html


そして4巻もオリジナルシーン追加や、加筆修正もしまくってます(*´艸`*)

※今回こそ今までで1番、読みやすい文章になっているはず!(当社比……いつも頑張ってはいるんです……)

WEBとはラストも変わり、ミハイルのツッコミも増し増しです!

影虎が!? ラビアンジェのやべえ姿が!? なんて珍事も起こるので、WEBを知っている方にも新鮮に楽しんでいただけるかと(*゜∀゜)


今回も続刊は売り上げ次第だったりするので、書籍版としての悪魔ジャビとの決着や、影虎が本格登場して区切りがつく(予定)の5巻へと繋げていただけると、とてもありがたいですm(_ _)m

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ