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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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617.旦那……ま、孫〜ラルフside

「王女!」

「ワン!」


 俺とポチは転移した王女を無意識に呼んで、駆け出そうとした。


 王女を助けなければ!

あんなにも酷い環境で、搾取され続けながら生きてきた王女だ!


 俺の記憶と勘が確かなら、王女はきっと今日亡くなる!

あんなボロボロの体で、悪魔と対峙する為に転移したんだ!

今日がその日に決まっている!


 ポチも公女の腕から抜け出そうと暴れる。


「駄目よ、ラルフ()()()()()()()


 だがシャローナでは決して呼ばない呼び方をされて、俺達は動きを止める。


 ああ……とうとう俺は、そしてレジルスも、課題をクリアしたんだ。

最後の課題は、もしかすると王女を行かせて、死なせる事か?


 そんなのは……。


「嫌だ!

公女、行かせてくれ!

王女を助けたいんだ!

何でわかってて、死ぬのを黙っていなければ……」


 そう言いながらシャローナの体を動かす、公女の表情を見て、口を噤む。


 レジルスも同じだろう。


「……公女?」


 思わず呟く。

何故なら公女は、困ったように、なのにどこか嬉しそうに、ただただ優しく微笑んでいたから。


「ベルジャンヌは、これから死ぬわ。

けれど……いえ、だからこそ、その後とても幸せな未来を生きるの」

「だが、死ぬんだろう」

「ええ。

死ななければ、あんなにも幸せだった未来を、家族の愛に包まれた一生を、決して手に入れられないから。

ベルジャンヌの魂は、死んで終わりではないのよ」


 まるで公女自身が体験したかのように、確定した未来であるかのような口調。


 家族の愛に包まれた一生?


 ロブール家は、間違いなく違う。

兄のミハイルに妹への愛情はあるだろうが、他の家族に愛情は感じられない。

それに一生?

生まれて、亡くなったような言葉だ。


 もしかすると公女は、2度か、それ以上に転生を繰り返している?


「だが……それでもベルジャンヌとして、せめてもっと……」


 思わず涙が溢れる。


「クゥーン、クゥーン……」


 ポチ、いや、レジルスもまた、公女の腕の中で項垂れて、涙を流す。


 稀代の悪女だと思いこんでいた王女の真実は、あまりにも過酷で、酷い一生だ。

魔法だけじゃない。

あらゆる才能と有能さを搾取され、無才無能だと蔑まれた……とても短い一生。


 そんな王女は死後も、俺が生まれて王女と同じ年になっても、何も知らない、知ろうともしなかった俺達に、稀代の悪女と濡れ衣を着せられ、罵倒され続ける王女。


 感情表現が下手くそでも、家族に愛されなくとも、王女は他人を思いやり、他人の為の最善だけをひたすらに導きだしてきた。


「もっとベルジャンヌは……幸せに……なるべきだっ」


 言葉に詰まる。

どうしてか、悔しい。

悔しくて泣いたのは初めてだ。


「ありがとう、ラルフ君」

「ごめん……ごめん、公女。

俺はずっと……ベルジャンヌ王女を稀代の悪女だとっ」


 言葉が上手く続かない。

涙が止まらない。


 そんな俺を、レジルスを抱えたまま、公女は抱き締める。


「大丈夫よ。

全ては過去の事。

決して変わらない出来事なの。

もしかすると未来も、過去と同じように決まっているかもしれない。

けれど些細な未来なら、変わる事もある。

これから先の未来を生きるあなた達に、ベルジャンヌだった私を知ったあなた達に、ベルジャンヌの生き様を誇って欲しいわ。

それだけで十分。

それだけで、ベルジャンヌの人生はまた1つ報われたと、ラビアンジェという、遠い未来の私は感じられる。

そう思えるくらい、ラルフ君の事が好きだもの」

「……へ?

す、き?

……好き?!」


 公女の言葉で、顔が一気に熱くなった。


 レジルスは、ギョッとして公女の顔を見ようと首を捻る。


 俺達は共に、涙が止まっていた。


「あらあら、嫌だったかしら?」

「いや、あ、違っ、そうじゃなく、嫌なはずがないっ、が……」

「ふふふ、良かったわ。

ラルフ君の真っ直ぐで、頼りがいのある気性。

前世の旦那さんや孫に似ていて、可愛らしくてずっと大好きだったの」

「……旦那……ま、孫……」


 思わず体を離して見た公女には、色恋など皆無。

むしろ慈しまれている……今は亡き祖母(ばあ)様そのもの……。


「ワフワフワフワフ!」


 レジルスが、俺の事はどうなんだと犬鳴きする。

人の発音に近かったが、そろそろ犬から人へ変化するのか?


「もちろん、レジルス王子も孫のように想っているわ。

ふふふ、もう大丈夫ね。

私の真実の1つを、見つけてくれてありがとう。

先に帰って……待っていてくれるかしら?」

「…………ああ。

ああ……もちろん。

待っているから……必ず帰ってこい!」

「ワン!」


 俺とレジルスは、最後に強く頷いた。


 胸はまだ痛む。

公女の好き宣言で気が削がれても、即答だけはできなかった。


 すると足下がグラリと揺れる感覚がして、意識が遠のくのを感じた。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

何だかんだと、気づけば四巻発売まで1ヶ月を切ってましたΣ(゜∀゜ノ)ノ

私の方の四巻関連作業は、恐らくもうないはず!

まだ表紙見てないという方!

これを機に是非!

美麗なラビ&ベルに仕上がってます(*´∀`*)

https://kakuyomu.jp/official/info/entry/kadb202503lineup

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