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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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613.初めてのオコ〜ラルフside

「君は確かに被害者。

そして1番の加害者でもある」

「がっ」


 王女が国王の胸ぐらを掴み、崩れ落ちそうなところを留める。

流れるように、国王の頬を拳で殴り飛ばした。


 公爵達も、聖獣達も、その光景をただ見ているだけで、一国の王を助けようとはしない。

いや、助けられないの間違いか。


「……お、お前っ、がっ……生まれさえ、しなけれ、ばっ……ッ!!」

「頭も悪い」


 もんどりうって転がったかと思えば、国王は更に御託を並べ始める。

かと思えば、王女が国王の側頭部を蹴って転がし、黙らせる。


「ああ、気を失っては駄目だよ」

「なっ……」


 本来なら頭が揺れ、意識を消失してしまうはず。


 しかし王女は治癒魔法を頭に使ったのだろう。


 国王の意識は保たれている。


 冷えた目で、国王の顔をじっと見つめる王女。

初めて見るが、きっと怒りを顕にしている。


 正直、怒りと言うには静かすぎるように感じるんだが……。


「あらあら、初めてのオコに、むしろ戸惑っているのね。

やっぱり反抗期にしては、可愛らしいわ」


 ……そうか、初めて……オコって何だ?

可愛らしい反抗期って、異母兄をフルボッコにする事が?


 シャローナ……の、中の人物の感性は、相変わらずだな。

むしろ()()()に安心してしまう、そんな自分の感覚が……不安だ。


 心のどこかで戸惑いながら、普段ならしなそうな(気の向くままに)倒れた国王の頬を無言で踏んづけた。


「ふ……っぐ、お前、の、その目!

やめ、ろ!

父上と同じっ、ふぐっ、止めろ!」


 無言の王女に頬を踏んづけられ、床に這いつくばる国王に、怯えが混じる。


「どんな目をしてるか知らないけど、止める理由にはならないよ」


 王女は更に、国王が制止の声を上げても踏みつけ続ける。


 国王がいつ意識を飛ばしても不思議ではないのに、そうならないところを見ると、王女は治癒魔法の他、精神系の魔法も使っているようだ。


「ぉぐっ、うっ、止め……っぐ、ち、父っ、上っ……ぁっぐっ、止めてっ、くだっ、さ……」


 国王の制止に懇願が入り初めたが、父上?

意識が混濁し始めたか、もしくは王女が精神系の魔法て感情を揺さぶっているか……両方かもしれない。


 王女が足を止め、ゆっくりと退かす。


 ただ見ていただけの公爵達が、国王の泣き崩れる様に、ハッとしたようになる。


 中でも国王と密な関係のように思わせていたベリード公爵は、痛みを感じるように顔を歪ませて視線を外した。


 国王は父親であるこの時代の先代国王と、何か確執のようなものがあったのか?

俺の時代には、国王の父親についての話は普及してい。

少なくとも末端下級貴族には縁のない話だ。


「うっ、も、もうっ……父上っ、お許しをっ、アシュリー……1度だけ目を瞑れとっ……そうすれば私に、譲位……目を瞑ったでは、ありませんか!

父上……約束を守らず、アシュリー……うっ、返してくれない、からっ……殺してっ……」


 国王はとうとう頭を腕で隠し、涙を流して丸くなる。


 それよりも……アシュリーは王女の母親で……国王は一体何を言っているのか、俺にはわからない。


「キュウン」


 ポチが気遣わしげな様子で首を後ろに捻り、シャローナの中の公女を見やるが、やはり俺には国王の言葉の意味は正解にわからない。


「ああ、やっぱりそういう事」


 しかし王女は合点がいった……いや、どちらかと言えば、答え合わせをしたら合っていた感じか?


「国王はね、婚約者だった私の母親、アシュリーを最愛だと言いながら、自分の父親がアシュリーに手を出すのを、あえて見逃したのよ」

「な、に……」


 俺には訳がわからないのを察してか、公女が説明してくれたが、思わず絶句する。


「どのタイミングで、そうしたのかはわからないわ。

国王を慕い、執着するスリアーダが手引きし、父親がアシュリーの尊厳を奪った。

その後、取り引きした可能性の方が高いとは思うけれど。

もちろん国王の言葉通り、父親は1度と言わず、私を宿すまでアシュリーは監禁されていた」


 公女の言った私の母親という言葉から、公女と王女の関係性に、更なる確信を持つ。


 だが公女の落とした真実が、あまりにも酷い。


 そして少し前、王女が国王に言った言葉と、ある光景が繋がった。

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