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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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612.王女も助けたい〜ラルフside

「何が……」

「ワフ?」


 同時に呟くポチに気づいて、突然の不思議現象が俺以外にも起こっていると悟る。


『王女なんか関係ねえ!

ベルジャンヌ、お前は子供だ!

子供が自分勝手な大人の理不尽を、我慢なんかしてんじゃねえ!』


 なおも続く怒声。


 すると少年の怒声に呼応するかのように、王女の様子が一変した。


「き、貴様?!」


 国王が慌てるのも無理はない。


 王女は聖獣達の拘束から難なく逃れ、国王が一斉に放った全ての刃を弾き、国王の前に踊り出た。


 国王が王女の進行を防ぐべく張った障壁も、結界も、王女が拳で殴って、硝子が砕けるかのように消しながら。


「あらあら、まるでショウワの格闘技マンガ」


 シャローナよ、ショウワやらマンガやらは、どこから……いや、本当にシャローナか?


 微笑ましげにポチを抱えて、王女を眺める顔が、まるで……。


『フレ〜! フレ〜!』


 すると今度は、頭の中の少年が片手ずつ、腕を横斜め上に上げた。

手の平がピシッと上へ向いている。


 上体をそらせて腹から声を出し、野太い声で叫んだ?!


「「はぁ(ワフ)?」」

『ベ・ル・ジャン・ヌ!』


 困惑する俺達など!そもそも知る由もないだろう。

少年は一言ずつ区切りながら王女の名を叫ぶ。


 一言発すると同時に片手ずつ前上方へ、次に再び片手ずつ両手を左右上方の位置に素早く戻す。


 な、何事?!


『フレ! フレ! ベルジャンヌ!

フレ! フレ! ベルジャンヌ!』


 すると今度は言葉を繰り返すと同時に、手をキビキビと前後左右へ、規則的に動かし始めた?!


「「?! ?! ?!」」


 ポチと共に拡大する困惑を抱える中、少年が声援……声援、だろうか?

声援を送り始めた。


 何に向かうともなく、宙に向かって声援を送る少年の、度肝を抜く声援だ。


「ぐっふぅ〜……幾つになっても推せるぅ……初(ナマ)応援団員……たまらん〜」


 んん?

鼻息荒いシャローナ……の中の人物は、俺の時代の学園で時折見る変態恍惚とした……。


 背中にゾワリと悪寒が走り、見てはならない禁断の何かを垣間見た錯覚を覚える。

魔獣を相手にするより、ずっと手強い逃走本能が刺激されまくりだ。


 もう間違いなく、シャローナの皮を被った……。


「ぐっうぅ」


 国王の苦しむ声に、ハッとする。

あまりに予想外な展開で、意識が完全に逸れた。


 見ると王女が、国王の首を正面から鷲掴んでいた。


 もちろん王女の手は小さい。

ただ掴むだけで、あんな風に国王が苦しむ事はないだろう。


 身体強化?

いや、王女の体からは薄っすらだが、魔力の低い俺でも認識できるくらい、魔力が発せられている。


「貴様っ……ぐっ……余の魔力……乱して、魔法を阻害……」


 そうか、王女は国王の体内魔力に干渉している。

国王がこれ以上、魔法を発動しないように防いでいるのだと察した。


 確か治癒魔法の1つに、己の魔力を他者の体に流す方法があった。

かなり緻密な魔力コントロールが必要な方法だ。


 王女はその方法で更に、他者の魔力に干渉して、魔法を使えなくしたと言うのか?

理論的に考えれば、できなくはないが……不可能に近いはず。

どれだけ魔法の才能があるんだ。


「ふふふ。

エッシュの瞳の訓練に、付き合っていたお陰ね」


 シャローナの体で撫でられているポチを見れば……。


「……ポチ……」


 直感的にはシャローナの中の人物が誰か、既に理解している。

ポチも同じだろうが、ポチのこの変わりようには、つい呆れが口を突く。


 ポチは大人しくなった、というより、むしろ撫でてくれと言わんばかりに、頭をシャローナの手にこすりつけている。

尻尾なんか、はち切れんばかりに左右へブンブン振りまくりだ。


 それより今、エッシュと言ったか。

王女がソビエッシュを私的な場で呼ぶ時の愛称だ。


 少なくとも、この時点のソビエッシュとシャローナとの関係性でも、シャローナの中にいるのが俺の思う通りの人物であっても、愛称を口にするとは思えない。


 何より、ソビエッシュの瞳の訓練?

思い出されるのは時折、ソビエッシュの瞳が煌めいたようになる事。


 ミハイルにも起こる現象だ。

もしかすると血族間で引き継がれる、魔法とは違う固有スキルのような力の事かもしれない。


 魔法に秀でた王女なら、2人は定期的に交流もしていたから、知っている可能性は高い。


 それなら余計に、シャローナも、中の人物も知っているとは思えない。


 しかし常識を忘れて、俺がこれまでに見てきた出来事と、度々、王女の中に垣間見た、ラビアンジェ=ロブールらしき片鱗を繋ぎ合わせていけば……。


『助けたくば、見つけよ』


 あの中性的な声の主が告げた言葉。


 見つけた。

更に王女の真実も見つけた。

そして王女と、ラビアンジェ=ロブールの関係性も……。


 課題はクリアできた……のか?

自信はないものの直感的に、この試練が終わると告げている。


 しかし……このまま王女を……。


「王座と言うものに興味はない。

だからあえて放っておいたのに……愚かしいね」

「……っぐぁっ」


 父親、いや、異母兄の腹を蹴り上げる王女を、改めて見つめる。


 ここへ来た目的は、公女を助ける事。

なのに王女の真実を知った今、俺は王女も助けたい。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

ラビアンジェが元々記憶していた、ベルジャンヌが初めて怒った理由が変わって困惑しているのは、No.482に。

理由がわからないけど怒ったのよね〜、と国王に話していたのはNo.411に書いてます。

気になった方は、よろしければご覧下さいm(_ _)m

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