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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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611.シャローナ?〜ラルフside

「そういう事だ。

愚かで、余の娘とも呼べぬ娘よ」

「……そういう事。

君が認めなければ、聖獣達は契約を破棄できない……」

「聖獣自身が死と引き換えにすれば、あるいは可能かもしれぬ。

なれど死と引き換えにしてまで破棄しようとせぬなら、所詮はその程度の気持ちという事」


 国王の言葉で、公爵達はうつむく。


 そうか、だからピヴィエラは……。


 蠱毒の箱庭で契約を破棄し、傷だらけになったピヴィエラの姿を思い出す。


 胸糞悪い。


 俺の時代、まだラビアンジェ公女と第二王子が婚約していた頃だ。

第二王子とその取り巻き達の、公女への言動を目の当たりにしていたあの頃。


 こんな醜悪に胸糞悪い奴らなんか、こいつらくらいだろうと思っていた。


 だが……この時代の国王(コイツ)より、ずっとマシだったな。


「そう……そして君は聖獣に縋らなければ、結局私に勝てない」

「何が言いたい」


 国王が、王女をギロリと睨みつける。


 王女は……面倒臭そうに見えるが、気の所為か?


「正直、君の魔法を直接受けても、私は死なない。

弱いんだ。

もちろん傷つきはするだろうね。

それに君、私を殺せないでしょう」

「ふざけるな。

お前が死ねばと、何度考えたかわからぬ」

「そう。

考えはするけど、殺せていない。

だって君はずる賢いから」

「侮辱するか」

「はあ……面倒臭い。

弱いから、頭が働く。

生かしてやっていると言いながら、その実、生かさなければ国王として価値を高められなかった」

「……黙れ」

「君、私達の実の父親、デュアルゴ=バンダ=ロベニアより、王に向いてないよ」

「黙れ」


 王女が確実に煽っている。

多分、内心では面倒臭がっている気がするが、慣れない煽りを王女がしている。


 そして一国の王なのに、国王も徐々に感情的に……ん?


 爛れた手で頬を撫でられている聖獣達の瞳。

2体の聖獣共、それぞれの契約者の瞳に、金の散った藍色が混じっている?


 更に国王の周りには、僅かだが赤い埃……いや、花粉だな。

目を凝らさなければわからない、微粒の花粉が舞っている。


 もしかしてドラゴレナが、国王の感情に働きかけて……。


「さすがだね。

自分の父親を殺さないと、王にもなれなかった異母兄殿」

「黙れ!

調子に乗るでないわ!

ならばその身で余の魔法を受けよ!

ヴァミリア!

ドラゴレナ!

ベルジャンヌが魔法を使わぬよう、逃げぬよう、押さえておれ!

ベルジャンヌよ、無駄な抵抗をすれば聖獣達もその契約者も、罰を与えると思い知れ!」


 とうとう感情を爆発させた国王は、結局、聖獣達の力を頼るらしい。


 王女は……ため息を吐いて、聖獣達から手を離す。


 依然、聖獣達の瞳はそのままに、2体の聖獣達は炎と棘蔦を王女の体に再び絡める。


 更に、王女を守っていたはずのラグォンドルの姿がない。

王女が遠ざけた?!


 まさかとは思うが……王女は国王の言う通り、無抵抗でいるつもりじゃ……。


 国王の周りに聖属性を除く、全ての属性で作ったと思しき矢と刃、槍が具現化する。


 無数の刃先は、全て王女へと向いていた。


「ワンワンワンワン!」


 その時、ポチが吠えて暴れる。


 王女達のやり取りに気を取られていた俺は、首輪から手を離してしまう。


 今にも駆け出そうとするポチ。


 その時だ。


「駄目よ」


 公女が駆け寄って、ポチを抱きしめるようにして止めた。


「大丈夫だから」

「ワンワン……ワフ?」


 いや、公女に瓜二つのシャローナだったな。

そう言えば、ずっと眠っていたが、とうとう起きた……本当に、シャローナだろうか?


 離せと言うかのように束の間、暴れたポチも大人しくなっている。

身をよじり、シャローナの顔を見つめ、キョトンとしているぞ?


「シャローナ、か?」


 どうしてだろう?

シャローナのはずなのに、妙に落ち着いていると思わせる微笑みに、違和感がある。


 しかし、そんな違和感を忘れるような怒鳴り声が、突如として頭に降ってくる。


『子供が我慢してんじゃねえ!

とにかく怒れよ!

それが子供の特権だろう!』


 流民達と乗った船に突然現れ、白い光を放ったあの少年だ。


 声だけではなく、姿が朧気に見えているからこそ、確信する。


 やはりソビエッシュの従者として控室にいた時、窓から出ろと言った声も、この少年の物に違いない。


 少年は相変わらず黒い詰襟服を着ている。

見た事がない程、丈が長い。

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