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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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607.勝手だな?〜ラルフside

「ワン」

「ああ。

この穴を崩すようにして風魔法を使う。

風を調整して瓦礫が落ちるのを遅らせるから、ポチはシャローナの上に覆い被さって首輪の守護魔法を発動してくれ」


 動けなくなったエッシュを地下牢に置いて、俺はレジルス《ポチ》とシャローナの元へと急いだ。


 エビアスが去ってすぐ、ソビエッシュへと駆けつけた。

ソビエッシュは酷い魔力枯渇をしていたが、駆けつけたポチの首輪に収納されていたポーションを取ると、一気にあおって事なきを得た。


 ただ、ポーションは一時的な回復をさせるものの、本来の魔力量を僅かに下回らせる副作用があるらしい。


 また、直ぐ様動く事もできないそうだ。


 ベルジャンヌ王女は……ポーションを飲みながら普通に動いていなかったか?


 と、思わなくもないが、もしかすると王女は、気力と魔力枯渇の耐性がついているのかもしれない。


 確かラビアンジェ公女もそんな体質だ。

元々の魔力量が王女と違うだけで、同じような体質なのかもしれない。


 それはともかく、ソビエッシュの危機は脱したと判断し、ポチとソビエッシュ自身に促されるまま、シャローナの救出を優先する事となった。


 ポチに案内された穴から覗けば、シャローナは真下にいて、眠らされていた。


 魔法が使えない犬となったレジルスに指示を出し、人が1人通れる穴を空け、レジルスがサッと入る。


 シャローナの上に落ちる瓦礫は、ポチとポチに触れたシャローナに当たる事なく砕け散って砂塵となった。


「脱出だ。

案内を頼む」

「ワン」


 そしてシャローナが眠っていたシーツを割いて、ロープを作り、背負う形で互いの体にロープを巻いて穴から出た。


 通路は狭く、途中でほふく前進をしたり、壁を一部削ったりしながらポチの後に続く。


 今、俺達はどこを進んでいるのだろう。

何度目かのほふく前進から、人が1人普通に通れるような薄暗い通路に出て、そんな事を考えた時だ。


 不意にポチが歩みを完全に止めた。

犬耳がピクピク動き、ややあって壁に犬耳を当てる。


「ワン!」


 両後ろ足で立ったポチは、両前足で壁をタシタシとタップする。


 どうしたんだろうかと、先ほどのポチと同じように耳を壁に当てた。


「………………」

「………………」

「………………」


 何を話しているのかわからないが、幾人かの声が聞こえた。

その内の1人に、王女らしき声が混じっている?


「ワンワン!」


 再びポチが壁をタップする。


「壊せと言っているのか?」

「ワン!」


 ポチはそうだと言うように吠えて、頷く。


「離れていろ」


 そう言って、ポチが離れてから魔法で風を手元に圧縮して、風球を作る。


 手元から放つ事までは、俺の魔法技術でできないが、壁に押し当てれば一部が消し飛んだ。


 掻き消えた風球で空いた穴に、蹴りを入れて物理で壊す。


 それにしても、かなりの音と蹴りの反動が、シャローナにも伝わっているはず。

なのに起きない。


 間違いなく魔法か薬で眠らされている。


「ワン!」


 その時、ポチが駆け出した。

王女の声に反応したんだろうか。


 俺も王女の声がする方へと向かうと、犬足が地面を蹴る音と、やや下方から着地する犬足の音が僅かに聞こえた。


 内心、首を捻って角を曲がると、眼前に壁。

足下には道が無く、穴が空いているかのような空洞。


 なるほど、ポチはこの穴を……まさか落ちたのか?


「ワフ」


 少し小さな鳴き声がするが、怪我をしたような声ではない。


 と判断すると、犬足が遠ざかる音が。


 勝手だな?

ついて来いよ的な感じか?


 体に巻いたロープを外し、シャローナに巻きつけ直して壁にぶつけないよう注意しながら、先に降ろす。


 穴は比較的狭いのが良かった。

両手両足を左右に伸ばして、突っ張りながらそろそろと降りる。


 どうやら下には通路があり、下の通路の天井の一部に空いた穴と繋がっていたらしい。


 先に下ろして通路に横たわるシャローナを、踏みつけないよう避けて飛び降りた。


 片側は石造りの壁。

もう片側は、木製の壁になっている。

通路と思った場所は、木製と石造りの壁に囲まれた長細い小部屋だったらしい。


 レジルスの姿はない。

となると、どこかに隠し扉がある?


「……何故(なにゆえ)……」

「……それはロブール公子が決め……」


 男の声の次に王女の声が、少しハッキリと聞こえるようになった。


 男の声は……まさか国王か?

子兎だった時、1度だけ耳にした声に似ている。


 声のする側となる木製の壁に手を這わせる。


 魔法が使えないポチがいないなら、どこかに出口が細工されているはずだ。

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