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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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606.婚姻を結ぶ必要が?〜ラルフside

「私は王女との婚約、いや、婚姻しか望んでいない。

他の者では意味がない」

「何故だ。

やはり王家の血を取りこみたいんだろう」

「王家の血?

笑わせる。

邪魔でしかない。

私は王女だけを長年望み、王女と婚姻を結ぶべく、今日まで次期当主として研鑽を積んできた」


 なるほど。

やはりソビエッシュはシャローナではなく、王女を求めているようだ。


 では何故、王女が亡くなってすぐにシャローナと婚姻を?

婚約を飛ばして、婚姻を結ぶ必要があったという事か?


 ソビエッシュとシャローナが婚姻した事で得をするのは……シャローナとチェリア家しか考えられない。


 ロブール家にメリットはない。

多分。


 そしてロブール家は名家の中でも名家とされている。

だからこそ貴族にありがちだが、他の家門はこの婚姻を邪魔しようとしただろう。

恐らく他の四大公爵家も。


 だとして窮地に立たされるのは、シャローナ自身。

チェリア家は既に没落しかけているから、当主を脅しても効果は知れている。


 シャローナの性格を考えても、その程度の事がわからないとは思えない。

何故シャローナも婚姻に同意した?


 ソビエッシュにもシャローナにも、王女が亡くなる前後で婚姻を結ぶ理由ができた?


「チッ、これが最後だ。

まさか貴様が、あんな卑しい血が流れる女に惚れるはずもないだろう。

意地を張らず、ベルジャンヌとの婚約を解消しろ。

アッシェ公爵家も王家も、ベルジャンヌという都合の良い駒を手放すつもりは毛頭ない。

貴様がこのまま認めないなら、この場で私が殺す。

長らく共に育ってきた仲だ。

それにロブール公爵家の財力が魅力的なのも認めてやる。

貴様達の婚約解消に、同意しろ」

「少なくとも私が邸に戻らなければ、ロブール公爵家はかつての先祖のように、この国から手を引くように動く。

ロブール公爵家当主からそう言伝を受け、国王にも伝えてある」


 少なくとも原状、ソビエッシュは王女以外との婚約も婚姻も、断固として拒否しているのは間違いない。


 だとすれば王女が亡くなった直後に、シャローナと婚姻を結ぶ理由が生じた?


「小賢しい……」


 ギリリとエビアスが歯噛みした時、エビアスの周囲に黒い靄がブワリと現れた。


 いや、違う。

靄はエビアスの体から発せられたように見えた。


「ならば……この者で試してやれ」


 靄が集まり、人のような影となってエビアスに耳打ちする。


「何だ、その靄は?」

「そうか……ああ、そうだ……」


 するとエビアスは、ソビエッシュの言葉に反応する事なく、影の言葉で何かを悟ったように頷く。

直後、ソビエッシュに向かって手をかざした。


 この牢は、魔法の使用を防ぐ魔法具でもあったはず。


 にもかかわらずソビエッシュの足下には、赤黒く禍々しい色を放つ魔法陣が現れた。


 その時、不意にレジルスが暴れる。


「駄目だ。

恐らくソビエッシュは、命までは奪われない」

「グルルル」


 慌ててポチを抱く腕と、首輪を掴む手に力を入れ、押さえる。


 ポチの不服気な唸り声は無視する。


 俺とてソビエッシュを助けたい気持ちはある。

しかしどんな魔法かもわからないまま動けば、助けられる者も助けられない。

下手をすると二次被害にも遭いかねない。


 俺はラビアンジェ公女とチームを組んだ際、公女から真っ先にその事を教えられた。


『正義感という言葉を笠にきて動くのは、単に感情をコントロールできない力量不足な愚か者がする事でしてよ。

まずは状況を分析し、機会を窺わなければ。

それが嫌なら、もっともっと知識と知恵と力をつけなさいな』


 公女は時に辛辣だ。

だが言葉には歴戦の勇士のような重みを感じた。


 チームを組むようになって暫くは、あらゆる責任から逃げ出す、無責任逃走公女だとばかり思っていたのに。


「……グッ」


 ソビエッシュの呻き声と、ドサリと地に倒れる音で我に返る。


「ベルジャンヌから魔力を奪うには、聖獣の祝福が邪魔をしているらしい。

だが聖獣と関わりのない貴様なら、こうして魔力を奪えるのだな。

貴様も、他の貴族達も、いつも私の邪魔ばかりをして、いい加減うんざりしていたのだ。

だから明日の後夜祭で、シャローナの側室入りを反対するような貴族達は、反乱分子として排除してやるつもりだ。

しかし排除するのだから、奴らの魔力を奪っても許されるな。

ソビエッシュ。

貴様も反乱分子の1つとして、処理してやろう。

もちろん邸には返してやるぞ。

全てが終わり、魔力が枯渇した息子を見れば、ロブール公爵も言う事を聞くようになるさ」

「があぁぁぁ……っう……」


 ソビエッシュの体が痙攣を始め、やがて呻いて静かになった。


「くっくっく……どのみちベルジャンヌは父上に逆らえない。

貴様が動けない間に、ベルジャンヌがお前との婚約解消を認めれば、処理は進められる」


 そう言い捨てた後、エビアスは高笑いしながら去って行った。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

お知らせです!

とうとう書籍四巻のカバーイラストが公開されました!

綺麗なので、購入いただく方もそうでない方も、ぜひぜひご覧下さい!

ラビアンジェ&ベルジャンヌなので、書籍版のベルジャンヌの顔を知らない方も、是非!

https://x.com/kadokawabooks/status/1886706247409524869

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