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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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605.末端貴族なのに〜ラルフside

「……は?

何だ、その理解し難い話は」


 エビアスが眉を顰めるが、俺もソビエッシュが何を言ったのか、理解しきれていない。


「王家や四大公爵家という枠に囚われて、中途半端に金儲けができるのを厭ったらしいな。

最後に四大公爵家の義務を果たそうとした……いや、恐らく0から金儲けがしたくなったんだろう。

気持ちは何となくわからなくもない。

その変人は、全ての資産をロベニア国内の孤児院、法整備、福祉関連に使う算段まで計画し、実行直前までいっていた」

「いや、私には全くわからないぞ」


 エビアスが合いの手のようにつっこむが、俺はふと、ラビアンジェ公女を思い浮かべてしまう。


 公女が時折変態……いや、堂に入った顔で、生き生きと不可解な魔法具を作る事がある。


 理解はできないが、誰に理解されずとも楽しいという気持ちを優先するのが、ロブール公爵家の特徴なのかもしれない。

そんな風な理解の仕方をする。


「だが当時の王と、他の四大公爵家当主が出奔を認めなかった。

代わりにロブール家だけは、王からの制約を受けるような宣誓を免除された」

「宣誓?」

「やはり知らなかったのか。

王太子としては名ばかりだからな」

「何だと。

貴様……」


 エビアスが貴様扱いをして睨みつけるが、ソビエッシュは意に介さない。


「当主になる際に誓う、聖獣を絡めた当主宣誓だ」

「何だ、そんな事か。

もちろん知っている。

あれはそもそも、聖獣と契約していないから……」

「あの宣誓には、当主が王の言いなりになるような、ある種の隷属魔法が仕こまれている。

それを知らずして、王太子を名乗るとはな」

「口を慎め。

次期アッシェ家当主であるハディクからも、聞いた事はない。

大方、聖獣と契約できずにいたロブール公爵家の言いがかり……」

「とは言え次期当主の私が知っているのは、ロブール家だからだ」


 エビアスの話を再びぶった切るソビエッシュ。

間違いなく、エビアスとの話に価値なしと判断し、早く切り上げようとしているな。


「2日前に国王と謁見した際、私と王女の婚約解消を認めるよう迫られた時に確信した」


 静かに告げるソビエッシュの言葉に、まさかと思う。


 ソビエッシュが牢に入っているのは……。


__フン。


 腕に抱くレジルス(ポチ)が、呆れたように無言で鼻息を鳴らす。

ポチも同じ事に思い至ったようだ。


「そもそもだ。

お前がこれからやろうとしている、チェリア嬢を側室とする行為。

何故、宰相という地位にも就くベリード公爵が認める必要がある。

そなたとベリード公女が婚姻を結び、子が出来なかった時に検討するべき事案であって、ベリード公女を妃に迎える前にすべきではない。

子供でもわかる不義理だ」

「……チッ」


 舌打ちしたのはもちろん、エビアス。

不義理については理解しているらしい。


「そしてアッシェ家側からニルティ家への、両公子公女の一方的な婚約解消。

本来ならアッシェ家は、多額の慰謝料をニルティ家に対して支払う必要がある。

なのに国王からの一声だけで、ニルティ公爵は頷いている。

謁見の場で、私はそう聞いた。

もちろん誰とも婚約をしていない状態でなら、アッシェ公子とベルジャンヌ王女との婚約も、王自身の娘の事だ。

王が主導で行うのも、まだわからなくはない。

だがアッシェ家とニルティ家の事でどうして国王が、片方の家門のみ一方的有利に働くような口を出し、なおかつそれを当主が認める必要が?」

「はっ。

だが貴様ととベルジャンヌの婚約は、ロブール公爵家の意向を聞いている。

他の三家も同じだ。

当主同士で合意しただけに……」

「違う。

王による命令だ」


 ソビエッシュが再び遮る。


「何故、断言できる」

「教えてやる必要はない。

ただ、私には確信する術がある。

それだけだ」

「私はこの国の王太子だぞ」

「だが王ではない。

そして私の父親であるロブール公爵は、私と王女との婚約解消や破棄について、次期当主である私の意向に任せるとした」

「ならば認めれば良いだろう。

ベルジャンヌより出来の良い、ニルティ公女との婚約を認めてやる。

ブランジュが良いなら、ブランジュでも良い」


 この国の王太子がこんな道理のない男で良いのか?


 俺は未来から来た人間だし、本来の身分は末端貴族。

決して政治にも関わらない。

領地を治める事もない。


 それでもこの国の未来を憂いそうになっていた。

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