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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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601.瞳の煌めき〜ラルフside

「王女に会わなくて良かったのですか?」


 ロブール家の家紋がついた馬車に揺られながら、この時代のロブール公子であるソビエッシュに尋ねる。


 ニルティ公女が歓喜の声で叫び、扇子を投げて騒いでいた件は、ソビエッシュ共々、見なかった事にした。


 俺の時代では威厳のある先代王妃。

まさかあんなお茶目な一面があったとは。


 もちろん婚約者が()()ハディクだ。

喜ぶ気持ちを察するのも、容易いが。


「ああ。

リリを知っているだろう。

そなた達の事は、私の婚約者であるベルジャンヌ王女から聞いている。

そなたに会う前に、リリと偶然居合わせた。

チェリア嬢が行方不明になった件は、既に王女の耳に入っただろう。

私とリリが話していたのも、生徒会室の窓から見ていたんだろう」

「気づいてらしたか」

「そなたが生徒会室の掃除道具入れにいた時からな」

「……そうですか」


 俺がこの時代に戻った場所は、生徒会室の掃除道具を入れたロッカーだった。

と言っても王立学園の生徒会は、貴族の中でも高位貴族が主で構成されている。


 掃除道具を使うのは、基本的には掃除夫だ。

そもそもが魔法で掃除する事も多いからか、箒と雑巾が1つずつ入っているくらいだった。


 シャローナの姉、ミルローザを引き連れたソビエッシュは、リリに何かを伝えた後、何かをリリに向かって吠えるミルローザに殺気をぶつけて黙らせていた。


 ひとまずリリと合流できないかと、生徒会室を出たところで、ソビエッシュと対面して、今に至る。


 俺に気づいて待ち伏せしていたんだろう。


 それにしても俺達は初対面だ。

なのに不審者とも思わず、俺が王女と面識があったとよくわかったな。


「……どんな風貌なのかも含めて、俺の婚約者であるベルジャンヌ王女から聞いていたからだ」

「……そうですか」


 考えている事が伝わってしまったか?


 チラリとソビエッシュを見やれば、時折煌めいたように見えるミハイルの目と同じように、ソビエッシュの瞳も煌めきを帯びている。


 同じ血筋だからかと一旦、納得しておく。


「そなただけでなく、そなたの主だという、私とよく似ているらしい男の事も、俺の婚約者であるベルジャンヌ王女から聞いている」

「……そうですか」


 何回【俺の婚約者である〜】と続けるつもりなんだ?

まさか……。


 他国の高位貴族であるミハイルの侍従。

それが今の設定だ。


 口調も含めて、あまり大きな失言はできない。

当然、分をわきまえない失言にも気をつけ、手短に返事をする。


「それで今、馬車はどちらに向かっているのか、お聞きしても?」

「アッシェ公子がニルティ公女に話した発言を、父であるロブール公爵に尋ねる。

恐らく今日を逃せば、父は暫く邸に戻らない。

私の婚約者であるベルジャンヌ王女との婚約が、今後も継続するかを確認する」

「……そうですか」

「アッシェ公子も含めて、私はベルジャンヌ王女以外を婚約者にも、妻にも据えるつもりはない」

「……そうですか」


 ソビエッシュは何故、キリッとした顔で俺を正面から見据えて、俺に宣言をするのだろう?

意図が全くわからない。


 わかるのは後に運命の恋人達と呼ばれ、王女以外と婚姻を結び、子を成した事。

孫もでき、孫の1人が俺の同級生となり、同じチームを組んで動くようになった事。


 なのに少なくとも今、ソビエッシュが優先するのは、行方不明中のシャローナではない。

婚約者のベルジャンヌ王女だ。


 運命の恋人達は、いつから運命の恋人となるんだ?

ソビエッシュが王女に惚れこんでいるのは、何となくわかる。


 私の婚約者云々と宣うのも、恐らく雄の牽制。

どこかのレジルス第1王子のような、ドス黒い執着心に似た何かを肌で感じる。


「……私とチェリア嬢が?

あり得ない……」


 不意に、ソビエッシュが呟く。

まさか口に出して……いや、それはない。


 思わずソビエッシュを見やれば、ソビエッシュの瞳から煌めきが消えた。


 訝しげな眼差しも、逸らされた。


「そなたは……やはり暫く私と行動してもらう。

反論は許さない。

次期ロブール公爵としての命令だ」

「……わかりました」


 目を合わせる事なく、高貴族らしい口調で命令された。

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