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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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598.違う、そうじゃない〜ミハイルside

「レジ、いや、ポチとシャローナが行方不明だと小耳に挟んだんだが」

「盗み聞きした、の間違いでしょ」


 俺と王女に紅茶を出しながら、リリが口を挟む。


 もちろん聞かなかった事にする。


「違うよ、リリ。

木に引っかかってただけ」


 うぐっ。

王女のフォローが痛い。

フォローになってすらいない。


「ふん、間抜け」


 リリも容赦ないな。


 しかし俺は、どちらの発言も聞かなかった事にする。


「王女なら、どこにいるかわかるのでは?」


 王女はレジルス(愛犬ポチ)に、細工した首輪をつけている。

シャローナはともかくポチに関してだけは、少なくとも居場所を特定する事ができるはずだ。


「そうだね。

わからなくはないんだけど、しなくても察してる。

だから少し放っておいて、出方を待とうかと思ってるんだ」

「そうですね!

放っておいても問題ないと思います!」


 リリよ、嬉しそうだな。

そんなにライバルが邪魔だったのか……。


「一応、理由を聞いても?」


 王女の様子を観察しながら、尋ねてみる。

俺とラルフが王女から離れて、約1年という時間が経過している。


 俺がヒュシス教の教皇となったリリと対峙した時、教皇リリの記憶から、亡くなる直前の王女の、生気がない疲れ切った姿を視た。


 今の王女の姿は、片側だけ短くなっていた髪以外、背格好が一致している。

この1年で、背が少しだけ伸びたんだろう。


 疲れた顔をしているが、目元の隈が少し薄い?

瞳には僅かに生気が宿っているし、教皇リリの記憶とは僅かに様子が違う。


 違う時代から飛んで来た、俺とラルフ。

そしてレジルス(ポチ)の影響か?


 魔力を回復するポーションもできたし、流民達の末路も俺が記憶している時代とはかなり変わった。

王女の生活にはいなかった、愛犬ポチも常に側を張りついていたはず。


「シャローナもポチも、どちらも危害を加えられる事はないから。

それに今回の件には、異なる者も……」


 途中、王女は何かを逡巡するように紅茶を一口飲んでから、話を続ける。


 異なる者と言ったか?

まさか悪魔ジャビが関わっている?


 俺達の時代では、王女が悪魔を呼び出した事になっている。

可能性は高い。


 何故なら、俺の時代では明言されていない王女の死期まで、恐らくもう時間がないから。


「いや、とにかく放っておけば良いよ。

もしシャローナが攫われたのだとしても、向こうが思うようにはいかないと思う。

3日前にシャローナが攫われたとしても、状況的には眠らされているか、それに近い状態になってる。

もちろんシャローナには、傷一つつけられないし、そもそも危害を加えられてすらいない可能性の方が高いよ。

だってそうなれば、必ず私に何か言いにくるはずだから。

この件に関わっていそうな人間は、黙っている性格じゃないんだ。

ポチも賢いし、そもそもポチは捕まってないんじゃないかな?

それなら理由があるかもしれないし、そもそもポチは元野良犬だ。

どこかで探検しているか、野生にもどったのかもしれない。

それなら、そうだね。

そっちの方が、後腐れなくて良いかな」

「王女?」


 ふと、王女の瞳に憂いが見て取れた。


 僅かな表情の変化だが、猫の姿で初めて会った時より、表情は出ている。


 このあたりは、愛犬効果かもしれない。

いや、そんな事よりも……。


「王女……生きて下さい」

「え?」


 口を突いて出たのは、きっと心からの願い。


 教皇リリの記憶にある王女は、生きる意志を持っていなかった。

死への恐怖すら麻痺していただろうし、それだけ疲れ切っていて、無感情に近かったのだと思う。


「生きる事を、どうか諦めないで欲しい」


 もし王女に生きる意志があったなら、俺やラルフ、レジルスが助けようとするよりも、ずっと生存する確率が高くなるんじゃないのか?


 そんな想いに駆り立てられる。


「ちょっと!

姫様が死にたがってるとでも言いたいの!」


 リリが俺に詰めよる。


「違いますよね、姫様!

姫様は死にませんよね!」

「諦めないと、約束して欲しい」


 縋るような眼差しで、王女を振り返るリリと、俺の言葉が被る。


 王女はきょとりとした顔をしたかと思うと、僅かに眉根を寄せた。


 きっと返答に困っている。


「リリ、人はいつか死ぬよ?」

「それは……そう、ですが…」


 違うぞ、王女。

わりかし本気で答えているんだろうが、そうじゃない。

リリはそういう事を言いたかったんじゃないんだ。


 リリも変なところで納得するな。

間違いなく、リリの真意は伝わっていない。


「それにミハイル。

生きる事を諦めているなら、多分私は生後すぐに死んでる」


 違うぞ、王女。

わりかし本気で答えているんだろうが、そうじゃない。

俺はそういう事を言いたかったんじゃないんだ。


「そ、そう、ですか……」


 どうしよう、俺もリリの事を言えない。

1年経過していても、王女の情操は死んでいた。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。


作者:違う違う、そ・お・じゃ、そ・お・じゃ・な〜い♪

ラビ:昭和の懐かしドラマ主題歌ね。

作者:くっ、このフレーズが、ずっと頭に鳴り響く……誰か止めて〜。

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