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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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546.猫と子兎と少年はどこに?

すみません!

順番を飛ばして投稿していたようです!


初のベルジャンヌ視点となります。

ベルジャンヌもラビアンジェだったりするので、タイトルにside表示はしておりません。

「ベル」

「しっ」


 不意に現れたキャスケットに、静かにするよう小さく指示を出す。


 数年前から愛称で呼ぶようになった、白い小狐の聖獣キャス。

私の事を憎む王と王妃の命令を受け、表立って姿を見せるのは控えて貰ってる。


 聖獣ピヴィエラから引き継ぐ形で聖獣へと昇華したラグォンドルは、存在そのものを隠している。


 10才で婚約したソビエッシュ=ロブールによく似た青年が、治癒魔法を使えるお陰で少し余裕ができた。


 お陰でこうして、以前から興味のあった神殿を調べられる。


 ロベニア国の国教に定められた神殿。

女神ヒュシスを唯一の神として祀っている。


 教皇は私が生まれた頃には、既にその立場に任ぜられていた男。

徐々にハゲ、んんっ。

進行する頭皮と顔に貼りつける笑みが薄いのが特徴だ。


 教皇が守銭奴だったお陰で、金さえ与えておけば扱いやすくて助かる。


 といっても私に金はない。


 ベリード公女とニルティ公女が生家にバレないよう、個人資産から秘密裏に出してくれた。

正直、助かった。


 お陰で流行病の発生源だと決めつけられた流民達を、ロベニア国内の民から守れた。


 元々立場が弱い流民は、自国で起きた紛争から逃れてロベニア国に流れてきている。


 当然、ロベニア国内でこれといった権利が与えられず、お荷物的な立場に位置づけ。

貴族が税金対策で流民達に食料(施し)を与えるせいで、より国民達の印象が悪くなっていた。


 流民達は身を寄せ合い、貧民層が集まる川下で暮らしていた。


 そこに発生した下痢や嘔吐、酷い時には意識を混濁して命を失う流行病が発生。


 まずは貧民層で騒ぎが起き、流民達を弾圧しようと動くのに、そう時間はかからなかった。


 けれど私は予兆の段階で気づけた。

平民の中でも貧民層近くに住む子供達の頼みで、文字を教えに行っていたから。


 子供達の中には好奇心が強い者もいて、流民の子供と知り合いだった事も大きく関係している。


 だからこそ今回の流行病騒ぎに、一筋縄ではいかない何かを感じる。

流行病の発生源と発症時期、症状に違和感を覚えてしまう。


 ただ違和感の原因を突き止める時間が、これまでになかった。


「行くよ」


 肩に乗ったキャスに、微かな声で告げる。


 神殿内の、幾つかある建物。

人気のない建物に入って、更に奥へ進む人物の後をつけて進む。


 灯りが無いと何も見えない程、暗い回廊。

今まで他人に気づかれた事のない、緻密に魔力を練った索敵魔法を使って進む。


 こんな時間ができたのは、ミハイルとラルフのお陰。

流民達が病に苦しむ殺伐とした状況の中、治療する忙しさに没頭して、それ以外の時間を取れなかった。


 治癒魔法を使えるミハイル。

力仕事だけでなく、食材を調達して調理できるラルフ。


 2人は自ら志願しただけあって、非常に力になっている。


 特にラルフが作る魔獣料理。

豚骨風スープとかいうのは、栄養価が高くて美味しかった。

流行病に侵された流民達も、スープなら口にできる者が多くいた。


 神殿では料理どころか、私と金銭取り引きして出すとしていた食材すら、出し惜しみされていた。

教皇と更に取り引きするにしても正直、時間と金が足りない。


 流民達の中に紛れていた隣国三大部族の部族長息子まで病に倒れてしまい、流民達の統制すら危ぶまれる状況に陥っていた。


 一攫千金を狙って危険度Sの魔獣でも狩って、冒険者ギルドに売りつけようかと本気で考えていたのは、リリには秘密。


 とは言え、ミハイルとラルフの発言を全て信じてはいない。

2人がロベニア国と緊張状態にある国の、間者である可能性が高い。


 今後、戦争に発展する可能性も考えた情報戦も、視野に入れる必要があるかな?

ベリード宰相に伝えておくべき?


 とはいえ、これまで私がベリード宰相と内密に話し合い、他国に恩を売らせているのも確かで。


 ラグォンドルがピヴィエラと過ごした森に、私が張った結界も他国への恩の1つ。

2国間で張り合う事で折り合いのついた結界は、いがみ合う国に幾らかの相互理解をもたらした。


 少しずつでも年単位の時間をかけた事で、両国から戦争の緊張を和らげている。


 今現在、隣国から流れる流民の保護に出ているのも、他国に対する未来の恩に繋がるはず。


 そう思ってミハイルとラルフを受け入れた。


 2人の顔色を終始観察していたものの、私と流民達に対する悪意は感じられない。


 私は昔から悪意に曝されてきた。

だからか、他人の悪意を見抜くのは得意だ。


 ポチも2人に懐いている。

ポチが私と同じく悪意に敏感なのは、何年も一緒に過ごしてきたからわかる。

青年2人の瞳が、ポチと一緒にいた猫と子兎の瞳と同じ色だったのも、影響しているかもしれないけど。


 ポチとの付き合いも、随分と長くなった。


 ポチが時々、キャスやリリと本気で喧嘩するのはいただけない。

でも、どちらかというとキャスとリリがいただけない?

ポチはただの犬だし。


 だから怪我をしないよう、ポチには首輪型の魔法具を着けた。

飼い犬だとわかるように、ポチの顔と名前も書いた(描いた)


 そういえばポチと一緒にいた猫と子兎。

今はどこでどうしているのかな?

アッシェ公爵とエビアスが私を地下牢に入れた時までは一緒にいた。


 目を覚ましたら2匹が消えて、ポチになっていた。


「あれ?」


 キャスが不思議そうな声を出す。

それもそのはず。


 回廊の角を曲がると一本道。

突き当りには壁。


 なのに見た事もない、流民達の服装とも違う、黒くて丈の長い詰襟服を羽織った少年が忽然と消えた。


 黒目黒髪。

ロベニア国にも近隣諸国にもいないような顔立ちの少年は、一体どこに消えたんだろう?

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