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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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484.眼差し

「ええ。

気配を隠すのが上手くても、その臭いは隠せないわ。

ねえ、それよりも魔法の実験。

したいと思わない?

あなたの欲する王族。

それも偏りのない全属性に、かなりの魔力量を内包していた体」

「そうね。

でも何が狙いかわからないのに、その話に乗るのはどうか……」

「ふざけるな!

公女!

お前は我が国の国王に何をするつもりだ!」


 あらあら、騎士団長が突然のオコ変化ね。


 けれど今は私も、恐らくジャビも話を遮られるのを良しとしない。


「アッシェ公。

黙りなさいな。

スリアーダに言われるがまま、権力を欲して加担した馬鹿な男の子孫」


 体を駆け巡る熱感の質に殺意を感じ始める。

それを自身の魔力と、以前にもらった国王の魔力の残滓を使って抑えにかかる。


 国王の魔力は、自分の魔力でコーティングして体内に取り置きしておいたのだけれど、なかなか良い効果ね。

少し灼熱感が引いたわ。



「な、に……」

「私の最期の言葉を知っていながら、未だに私が誰かも理解できない愚か者。

お前に、お前達アッシェの血に連なる者達に、私を止める権利など端からない。

もちろん、それは全ての王族も四公も同じなのだけれど」


 言い淀む騎士団長に、いつもの淑女たる微笑みを剝ける。


「ふふふ、少しは理解した?

私は今、各方面にとっても怒っているの。

だから私が望むまま、好きに動くわ。

今の私は、思春期真っ盛りのカム着火ナンチャラ女子ですもの」


 ふふふ、驚愕しているわね。

私のオコもなかなか良い働きをしているんじゃないかしら!


「カム……何?

何故そんな得意気な顔を?

いや、それはまあ……それより、まさか公女は………………貴女は何を望む?」

「全てが終われば、わかることよ」


 冷たく言い捨てて、改めてジャビに向き直る。


「ジャビ、あなたの真の狙いの1つはわかっているの」

「ふうん?

何か聞いても?」

「ベルジャンヌ王女の遺灰。

つまり、肉体を得る事」


 ローブの下の目が、私を睨みつけている気がする。


「そこらの遺灰で騙すなら無駄……」

「馬鹿ね。

一緒に取りに行けば良いでしょう?」

「……どうして急に協力を?

そもそも君、まさかあの王女の生まれ変わりなんて言わないわよね?」

「さっきアッシェの子孫に言ったじゃない。

各方面にとっても怒っているって」


 そう言って、袖をめくって腕を見せる。


「「「「?!」」」」


 白銀の聖印を露わにすれば、前々世の私を知る人達が息をのむ気配。


 けれどジャビは口元を愉悦に歪めて、全く違う反応を示す。


「くっくっ、あっはははは!」


 あらあら、声の質が男性のダミ声になったわ?


「そうか!

お前は魂をあの聖獣に呪われたか!

これはいい!

あっはははは!」


 言いながらツカツカと私の前に来て、抱きつくように私の首へ腕を回す。


 ムムッ、悪魔特有の体臭。

亜空間収納にある鼻栓を鼻の奥に転移させる。


 キャスちゃんとディアの抜け毛を、日夜コツコツ集めて作っておいた特製の鼻栓よ。

他にも前世の羊毛フェルトのようにして、針でチクチク刺してできるぬいぐるみも作ってあるの。


 抜け毛とはいえ、聖獣の毛ですもの。

悪魔の臭いを完璧に遮断して、狙った通りラベンダーの香りを届けてくれているわ。


「それはそうだろう!

せっかく悪魔からこの国を守ってやったのに、悪女の汚名を着せられたんだ!

挙げ句、転生しても最古の聖獣に聖印て名前の呪いを受けた!

転生して今度こそまともに血の繋がった家族ができても、また虐待!

婚約者だった王族と四公の子孫共には、また無才無能な性悪女と罵られて悪評をばら撒かれる!

ブチギレ聖獣を支配して、この国を滅ぼしたくもなるはずだ!」


 ジャビの最後の言葉以外は、その通りね。


 幼いお孫ちゃん達はベルジャンヌだった当時を知らないから、とっても戸惑っているわ。

他の人達の顔色をチラチラと見て、顔色を悪くさせた。

ジャビの言葉が真実だと悟ったみたい。


 当時の話を伝え聞いていただろう王妃と騎士団長は、羞恥と申し訳なさ、けれどどうしたら良いのかすらわからない……色々複雑な心模様を含んだ瞳で視線を彷徨わせる。


 当時の光景を目の当たりにしてきたリリは、かつての歯がゆさと憎しみを思い出したように、騎士団長と王族を侮蔑の目で見やる。


 けれど最後は全員、最初からそうだったレジルス第1王子のように私を見た。


 縋るような3つの眼差し、場合によっては私を制圧すると覚悟を決めたような1つの眼差し、私の決断に委ねる2つの眼差し。


 どんな眼差しであっても、私は好きにするわ。

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