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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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481.しつこい悪魔汚れ

「エッシュ。

シャロの事、これからも守ってあげて」


 お祖父様の質問には答えず、記憶にある愛称でお願いしてみる。

うっかり口調が前世に引きずられてしまったのは、ご愛嬌よ。


「な、に……まさか……待て!」


 待つはずがない。

()と最後に話した()()()のように時間がないのだから。


 転移魔法の発動を金緑の瞳で気取られないよう、魔力を瞬間的に練り上げて白いリコリスと共に移動する。


「……あらあら?」

「ロブール公女?」


 目の前には薄赤い結界。

そのすぐ側にいたのは第2王子を除く王族達と、私に真っ先に気づいたアッシェ騎士団長。

相変わらずマッスルダンディなイケオジね。


 国王を座って抱える、沈痛な面持ちの王妃。


 王妃の正面にいる幼い王女は、ぐったりとして動く素振りのない国王(父親)の手を握り、ボロボロと泣いている。


 少し離れて地面に倒れている、胸から血を流している側妃。


 第3王子は王妃と王女に背を向け、そんな母親を前に呆然と座りこんでいた。


「……何で……父上まで……馬鹿だよ、母上……」


 ボソボソと返事のない母親に言葉を投げる様は、痛ましい。


 そんな彼らを、突然現れた私から守るようにして立つ騎士団長。


 警戒するのは悪くない反応よ。

だって周りの私への認識では、転移魔法などできるはずのない無才無能公女ですもの。

ただでさえ学園は異常事態。

そんな中で私の存在を忌避する気持ちはわかる。


 他の王族達から距離を取り、リリと話していたのはレジルス王子。

無表情がデフォルトなのに、眉を顰めていたわ。

表情からはわかりにくいけれど、父親の死を悼む余裕がない感じかしら?


 この国の王を突然失って途方に暮れつつも、継承権を持つ王子の役目を全うしようとしている。

そんな印象を受けた。


 あらあら、私に気づいて2人が同時にこちらを見たわ。


 けれどその前は、国王と側妃に視線を投げかけていた。

故人2人の体に宿っている悪魔の力について、色々話していたんじゃないかしら。


 リリならその力に気づいたでしょうし、だから一国の国王の亡骸にも拘らず、すぐに遺体を動かせずにいるのでしょうね。


 まさか死んでも消えていなかったなんて。

悪魔汚れはやっぱりしつこい。


「公女。ご無事でしたか」


 ミトラの中に隊長の奥さんの気配を隠したリリが、私の姿を確認した途端、ホッとした様子で駆け寄る。


 私に不遜な眼差しを向ける騎士団長に、しれっとぶつかったわ。

けれどリリのひょろひょろした体格じゃ、ビクともしない。


 に、しても……。


 うっとりと地面に座りこむ王族全員の顔を、くまなく眺めてしまう。


「顔面偏差値ハンパない……」

「「「「「「?!」」」」」」


 まあまあ、ついうっかり本心が。


 それよりこの場の全員が、一斉に私を見たわ!

意図せぬ息の合った偶発的キラキラ顔面総攻撃に、お婆ちゃんはしてやられそう!


「……こ、公女……不謹慎……」


 王妃の上ずった声なのに、どことなく咎めるような口調。

心の琴線がピリリと震えて……。


「いえ、良いの」


 あらあら?

すぐに視線を逸らされた?


 小さなお孫ちゃんズまで、一斉に最初の対象に視線を向けた?


「ふふふ、貴方達皆、魅力的ね」

「「「?!」」」


 まあまあ、どうしてかしら?

皆一様に、体をピクリと痙攣させた?


 何事かとじっと視線を投げ続けてみるのだけれど、決して私を見てくれない。

むしろ鋼の意志を感じるくらい、それぞれの故人へと視線をロックオンしている。


 でも仕方ないわ。

皆、愛する家族が亡くなっ……。


「公女、転移魔法については大方、レジルス王子の魔法具だろう。

空気を読まないロブール家の特徴を発露するのも、場を選びなさい。

教皇。

申し訳ないが、公女とあちらのテントへ避難……」

「俺が案内しよう」


 ズモモモ、という暗い感じのバック音を背負ったような騎士団長がリリに私を案内させようとする。


 すると同じくズモモモな感じのレジルス王子が遮った。


 ズモモモ合戦かしら?

高度な遊びだけれど、それこそ不謹慎なんじゃない?


「いえ、是非私にお任せ下さい」

「いや、全学年主任として、生徒を安全な場へ逃がすのが俺の務め……」


 かと思えば、リリと第1王子の案内したがり合戦が。


 騎士団長がイライラした雰囲気を、より一層醸し出し始めたわ。

主君の遺体がマズイ状況ですものね、わかるわ!


 でもそろそろ相手にしていられない。

だって時間は有限ですもの。

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