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474.陛下の激昂〜レジルスside

「お母様……」

「ソフィニカ王妃……」

「ソフィニカ、しっかりせよ!

レジルス、中で何があった?!」


 意識を失って崩れ落ちた王妃を抱き止めた陛下が、珍しく焦りの表情を浮かべる。

弟妹達は突然の事態に顔色をなくして呆然と呟く。

もちろん俺も焦っているが、対処できない。


 あの薄赤い結界を抜けてすぐ、王妃には治癒魔法を何度かかけた。

しかし魔法が弾かれてしまい、結局は元のように王妃の体に直接魔力を流して対処に当たっていた。


 血縁関係にあるからか、俺の魔力は王妃の魔力と上手く絡んで乱れを最低限に抑える事ができていた。

それでもこうなった原因は掴めずにいたが……。


 なのに陛下達がこの場に現れた途端、王妃自身の魔力が俺の魔力を完全に拒絶し始めた。

下手に流せば、王妃の内臓を逆に傷つけそうな程に。


 学園の外周りを担当していた魔法師達にも、当然陛下であっても魔法や魔力で王妃を救う事はできない。


 この事件を引き起こした者の全貌がわからない為、王城に待機させたと聞く魔法師団長であっても難しい。

学園の校舎周りに張った結界は、副師団長が解く事になっていた。しかし薄赤い結界が邪魔して解けずにいる。


 近くにいた学生達は既にいない。

護衛騎士達だけでなく、学園の外周りの警備を担当していた魔法師達も加わり、この場から遠ざけた。


 学園の外には、学園祭に参加するべく集まっていた者達がいる。

まだ校内に入るのを規制していた、主には平民達。


 血まみれ状態だった一部の学生達も含め、外の来客と合流してしまっては混乱を招きかねない。

急きょ近くに目眩ましの魔法をかけたテントを張り、そちらに誘導している。


「生活魔法すらも全く使えなくなったあの中で、王妃殿下は流石と申し上げるべきか、襲い来る魔獣達から近くの者達を守ろうと障壁を発動されました。しかし暫くして突然、苦しまれ……。行動を共にしていた令嬢2人とレジルス王子殿下によって、幸いにも症状が落ち着いたように見えたのですが……」


 王妃の一部始終を見ていた騎士が、陛下に報告する。


 その間にも王妃は呼吸しても、何かに阻害されて上手く肺へ送れずにいる。

苦しさにもがく力も、弱々しい。

それでもギリギリのところで僅かな空気は取りこめているらしい。

それがまた、生き地獄ではないかと思わせる。


「クリスタ様。

その力をどこで手に入れられたか、お聞きしても?」


 そんな中、陛下の背後にいた側妃の方へと移動して声をかける者がいた。

息子である魔法師団長に当主の座を譲っても、なお稀有な立場としてロブール公爵と呼ばれる男だ。

夫人と血みどろだった護衛は、先にテントへと向かわせたらしい。


「……何の事です、公爵?

それより夫人を1人にして良いのですか?

公爵がこの場にいても、どうする事もできないでしょう。

大切な奥方の側へ行かれては?」


 冷めた目で事態を見つめていた側妃は、軽く公爵を睨む。

公爵をここから遠ざけようとしている?


「四大公爵家の1つ。

ロブール公爵として質問している。

お答え願おう」


 日に反射してか、透明感を感じさせる金緑の眼光が側妃を冷え冷えと射抜く。


「無礼ですよ、公爵。

既に公爵は当主ではありません。

確かに公爵と呼ばれはするでしょうが、立場を……」

「側妃、答えよ」

「なに……陛下、そのように仰られては王族として……」

「答えぬか!

クリスタ!」


 側妃の言う通りだ。

確かに当主を退いた以上、仮にも王族に籍を置く側妃より立場は下。

王の妾として存在した側()とは、立場が違う。


 しかし王族の長たる国王に命じられれば、逆らえない。

国王と対等な配偶者として、時に執政も担う王妃とは違う。

側妃は国王直系の王子王女(子供)より、立場は低い。


「……私には何の事か……」

「クリスタ!

この期に及んで嘘を申すな!」

「……そんなに、ソフィニカが大切ですか?!

私も陛下の妻なのです!

妻の言葉を信用できぬと?!

私よりも、立場が下の老いた公爵を信用すると?!」

「余はそなたを妻としてはソフィニカと同等に接し、これまで妻であるそなたの人柄を間近で見てきた!

そなたはソフィニカと違い、王妃として、母親としての器が足らぬ!

嫉妬と妬みの感情から他者に牙を向ける!

故に側妃なのだ!

それを未だに理解できぬか!」


 陛下の激昂した言葉に、側妃は表情をごっそりと無くした。

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