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437.祖父母の好み〜ミハイルside

「そうだったの!

そんな偶然もあるのね。

好みが同じだったのかしら。

嬉しいわ」


 感激した様子の祖母と、そんな祖母に目元を和ませて無言でサラダを食べきる祖父。


 そんな2人に微笑みを投げかけつつ、やはり小さな違和感を持つ。


 これまで何度も妹お手製のドレッシングを食べたが、いつもは俺の好むレモンやライムベースのドレッシングに、バジルやミントをプラスしている。

妹も何となく、そちらのドレッシングの方を好んでいるように見える。


 オレンジベースのドレッシングに、ローズマリーの風味をプラスした物は初めてだ。

それも俺の記憶に僅かに残る、祖父母と共に食事を摂っていた頃に時折食べたドレッシングの味そのもの。


 妹に赤子の頃の記憶があっても、祖父母と離れたのは妹がまだ乳以外をほとんど口にできない頃。

偶然だろうか?


 どちらにしても祖父母が喜んでくれた事は、妹にも教えてやらねばな。


「食前酒も美味しい。

辛口の御酒のようだけれど、他国のもの?

香ばしくて口当たりがまろやかね」

「そうだな。

これは東の諸国の酒か。

珍しいが、酒はミハイルが?」


 祖父も酒は好きだが、どちらかと言えば1人で飲んでいる印象が強い。


 祖母もこうして酒で喜ぶのは珍しい。


「いえ、ラビアンジェです。

学園で知り合った学生の中に商人もいましたから、その伝手を辿って仕入れていたんでしょう」


 本当は違う。

間違いなく幼少期のバイト先で知り合った城下の平民達の伝手だ。


 もちろんそれを先代当主である祖父には言えない。

言えば何故そうなったのか理由を話さねばならなくなる。


 いくら祖父の進めた政略結婚とはいえ、既に母が亡くなったとはいえ、離縁したロブール元夫人が好き勝手した挙げ句、ロブール公女が虐待を受けた末の伝手ともなれば、祖父と揉めかねない。


 もちろん祖父は仮にも、ロブール公爵家の当主だった男だ。

母が健在だった時に自分の娘への所業をある程度隠し、情報操作していたにしても、祖父には筒抜けだった可能性は否定できない。


 しかし表立って揉める要因を提供するのは避けたい。


 そもそも祖父が気にするのは、ロブール公爵家の体面。

祖母と違って妹自身の気持ちを慮りはしない。


 下手をすれば、妹の自由も奪おうとするだろう。


 だからといって妹の破廉恥方面の自由は俺だって認めていないが……。


「これとは違う甘口の物なら、私もラビアンジェから贈られました」

「そうか。

シャローナは甘い酒を好むが、私は辛口を好む。

この酒なら私もシャローナも、どちらも満足できるな」


 祖父の口にも合ったらしく、祖母も同じ物を美味いと感じられる飲み方を発見したのが嬉しいのかもしれない。


 まさかラビアンジェは、それを見越して?


 この国で一般的なワインより、東の諸国で手に入る澄んだ色をした妹が清酒と呼ぶ酒の方が、翼を焼いた味とは合うが……。


 妹はいつの間にか、祖父母の好みをリサーチしていたんだろうか?

だとすれば、ドレッシングも……いや、ロブール公爵家各人の好む味を他言する者はいないはず。


 四大公爵家ともなれば、敵味方も取り入りたい者も多い。

だから好みを自ら吹聴しないし、使用人も把握しないよう気をつける。


 何より、妹が元々の伝手以外にリサーチしていれば、俺か祖父は気づいただろう。


 だとすれば、たまたまか?


「ラビアンジェにこの酒を仕入れるよう伝えてくれ」


 よっぽど酒が気に入ったんだろう。

祖父の言葉にハッとして、是と答えようとした。


「あら、それならご自分の口で仰ってはいかが?

私達の為に用意してくれたんですもの。

孫に直接お礼も言えない祖父母には、なりたくないわ」

「しかし……」

「明日はラビアンジェも出店で学園にいるわ。

先に両陛下と挨拶はすべきでしょうけれど、きっと話す時間はあるはずよ」


 どことなく祖父が渋るのを、祖母がやんわり止める。


 生徒会に連絡があり、ジョシュア第2王子は欠席となっているが、確かに学園祭では王族が総出で訪れる。


 学園祭を観覧する者の中に学生を除く四大公爵家の直系がいれば、少なくとも国王夫妻に挨拶はするだろう。


 しかし祖父は自ら妹に会うつもりはないんだろうか?

これも元当主だった体面からか?

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