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428.血筋〜ジョシュアside

「しかし血筋だけで良いなら、四大公爵家に拘る必要もないのではありませんか?」


 ロブール公爵家という血筋だけならどこよりも秀でている。


 しかし血筋を辿って紐解けば、ラビアンジェ公女は父方と母方の両祖母、そして母親は没落してしまったチェリア伯爵家に繋がる。

何よりロブール公爵家当主は、政治に無関心すぎる。


 それなら後ろ盾になり得る発言力を代々受け継いできた、幾らかの野心を醸し出す侯爵家や公爵家のみで血筋を連ねてきた血筋の方が良いに決まっている。


「もっと有能で、まともな後ろ盾になり得る公爵家もあるでしょう。

実際、今私の婚約者候補として名が上がっているバルリーガ公爵家はもちろん、ダツィア侯爵家、フォルメイト侯爵家も第二王子としての私を支えられる家柄です。

その上、3人の令嬢達も公女と違ってAクラスだ。

学力も学年で常に5位以内をキープしている。

母上の言うように、王妃が実子である兄上を王位に就かせようとしているからと、私に婚約者候補達で差をつけているわけでもないのでは?」


 これまで腑に落ちなかった疑問を口にすれば、母上はジロリと睨む。

しまった、と思った時には遅かった。


 カップが飛んできて、腕にぶつかる。


「王妃の事は触れないでちょうだい!

あなたの選択ミスを理由に、私に与えられた特権を奪うような強かな女よ!

この母を側妃だからと、ずっと下に見て馬鹿にしてきた女だと忘れたの!」

「母上……」


 忘れている訳ではない。

幼い頃からずっと聞かされてきた。


 母上は随分と昔、学園に入学した頃から父上を好いていたらしい。

しかし年齢と家柄、タイミングによって王妃の座を得られず、側妃として入宮した。


 そう、タイミングも大きく影響していた。


 今の王妃は婚姻後、1年経っても懐妊の兆候が現れなかった。

そして当時の貴族間勢力図が要因で、もう1人を()()として迎える予定だったらしい。


 王妃を2人設ける事は、前例がある。


 そうして2人目の王妃候補を選び始めてすぐ、王妃は第一子(兄上)を授かった。


 その時点ではまだ王妃選びとは公示しておらず、父上と四大公爵家当主達で協議した結果、王妃の子が無事生まれ、更に1年以内に王妃が第二子を懐妊しなかった場合、()()を娶るとした。


 結果、母上が側妃として召された。


 もし王妃の子(兄上)が何らかの理由で命を失っていたなら今頃、母上の立場は王妃だっただろう。


 私がそう思える程、母上の周囲の者達は熱い信頼と敬愛を母上に注いでいる。


 今は私の不甲斐なさから感情的になりやすいだけだ。


 そう思って落ちこんだ時、母上が苛立ちを吐き捨てるかのようにため息を吐いた。


「ベルジャンヌ王女よ」

「稀代の悪女?

それがどうしたと?」

「そうね、もうなりふりを構っていられないから、ジョシュアには教えてあげる。

けれど決して口外しては駄目よ。

この秘密を知る者は、陛下と王妃、そして四大公爵家当主くらいしかいないから。

ちゃんと約束できる?」


 母上からの圧が再び強まり、思考がぼんやりとしつつ、絶対に約束せねばならないと一種の強迫観念のような感情が生まれる。


「…………もちろんです。

これ以上母上に落胆されたくありませんから」


 私の言葉に気を取り直したのか、母上は艶やかに微笑む。

我が母ながら、なんと気高く美しい人なのか。


「その言葉、忘れないようにね。

ベルジャンヌ王女は、稀代の天才魔法師だったの。

そして王女の母親である側室はチェリア伯爵家、いえ、当時はチェリア侯爵家ね。

先々代の国王陛下が王太子だった時の、行方不明となった婚約者。

それが側室の正体よ」

「……それは……え?」


 思考が鈍くなっているのも手伝って、情報を上手く整理できない。


 稀代の悪女の母親は、出生不明の平民ではなかった?

チェリア伯爵家が、侯爵家だった?


 それにロブール公女のような無才無能な王女が……稀代の天才魔法師?


「ジョシュアが驚くのも無理はないわ。

私が知ったのも偶然だったの。

私の家がアッシェ家の傍系だったご縁で、先々代王妃であるスリアーダ様と懇意にしていた祖母がいるの。

祖母は年上だったスリアーダ様を姉のように慕い、憧れていたらしいわ」


 私の戸惑いに何故か気を良くした母上は、にっこりと微笑んで話を続けた。

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