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425.歪な家族の経緯〜ミハイルside

「え……いえ、待って?

住んでいるの?」


 ハッ、そうだった!

普通は使っているとかだよな。


 祖母に気を利かせたつもりが、戸惑わせてしまった。


「実は……」


 だが今更どう取り繕って伝えても、祖母は違和感を覚えてしまうだろう。

それに田舎に引っ越して何年も経ったとはいえ、祖母は先代ロブール公爵夫人。


 ルシアナ()に不可抗力とはいえ致命傷を負わせたなら、必ず何かしら調べて幾つかの真相には辿り着いているはず。


 中途半端に知って不安がらせてしまうよりはと、そう考えてこれまでの事を全て話す事にした。

もちろんロブール公爵家の歪な家族の関係と、それが元で起きた事に留めて。


 悪魔や聖獣、教皇の起こした事件は無かった事になっているから口にしない。


 この夏、妹が離れと呼ぶ小屋で住んでいると俺が知ってからの事を掻い摘んで話していく。


「そんな……ルシアナがラビアンジェをそこまで虐待していたなんて……シエナも……どうしてそんなにラビアンジェを憎んで……」


 祖母は驚きながら全てを静かに聞いた後、間近に起こったシエナ放逐の経緯を知って絶句していた。


 シエナが悪魔と手を組み、魔法呪となって学園内で起こした後、老婆となって北の強制労働施設に入れられ、死亡した事はもちろん伝えていない。


 母が祖母を襲った後、キメラとなって俺の前に現れ、父の手により灰となった事もだ。

この情報も外には漏れていないから、祖母は当然知らないはず。


「いえ、それよりもラビアンジェは大丈夫なの?!」


 しかし祖母は我に返ると、すぐに妹を心配し始める。


 妹は全くもって平常運転で破廉恥活動しています、とは口が裂けても言えない。


 そう、あらかたは客観的に伝えたが、妹が裏で有名作家として名を馳せるだけでなく、突き抜けた破廉恥小説を書いては聖獣から貰った亜空間収納に納品しているとは、何があっても祖母には言わない。


 公女としては、ある意味大丈夫ではないと思うなどとは、言うはずがない。


「はい、幸いな事に。

お祖母様とお祖父様の想いが詰まった離れだと知ると、ラビアンジェは邸で過ごさず、このまま離れで住みつづけたいと言いました」

「でも、もう随分と古くなっているでしょう?」

「はい。

なので改修して私の手で防犯系統の魔法は施せるだけ施しています。

妹にとっては母親よりもお祖母様への愛情の方が大きいようです。

母親への愛情、いえ、そんな幼少期を過ごしたせいか、感情や思い入れは全くないと本人も口にしていました。

お祖母様と妹は母の妨害によって疎遠になっていましたが、妹はお祖母様への感情の方が余程強いように私には感じられます」


 祖母の藍色の瞳をしっかりと見つめ、本心から語る。

少しでも祖母の心痛を和らげ、妹の想いも伝えたかった。


「そう……そう、ラビアンジェが……。

1度ラビアンジェに会いに行きたいわ。

そして謝りたいの。

そんな状況だと知らなかったとはいえ、私も会おうとしなかったのだもの。

ルシアナに遠慮していたのもあったけれど、もしかしたら嫌われているのかしらと思ってしまって、どうしても会いに行けなかった。

もし私が動いていたら、ラビアンジェがつらい目に遭う前に手元に呼ぶ事も、もしかしたらルシアナも喪わずにすんだかもしれないのに……」

「お祖母様が気に病む必要はありません。

私の目が曇っていたのが問題でした。

ただお祖父様の許可を先に取らせて下さい。

お祖父様は、その、お祖母様に関しては……あー、えっと……」

「ふふ、過保護なのよ。

責任感が強いの」


 言い淀むと、祖母が苦笑する。

責任感という言葉に少なからず違和感を覚える。


 もっと後になって、俺はこの違和感が何なのか知ったが、この時はさほど気に留めず、愛情から来る執着のような気がすると胸の内で思うに終わった。


「そうですね。

許可が取れたら、ラビアンジェにも都合の良い日を聞いてみます。

今は学園の文化祭の準備で難しいかと」


 すぐにでも妹に会いましょう、と伝えようとして思い留まる。


 妹が祖母に家族としてのなにかしらの愛情と信頼を寄せているのは間違いない。


 ならばどうして無駄に行動力のある妹は、祖母と1度も会っていないのだろう?


 接触を意図的に回避している気がしてきたのは、俺の思いすごしか?

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