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395.ひねくれ

「「イッツ・オン・ステージ!!」」

__ベベン!


 一緒に宣言して、(ばち)で弦を(はじ)いてから……。


――ベンべべベンベン、ベンべべベンベン、ベンベベベンベンベン!

「「はっ!」」


 前世で孫が作詞作曲したロックテイストな三味線二重奏を、かけ声も合間に入れながら息を合わせてかき鳴らしていく。


 __ドドドド!


 契約しているディアの魔力を借りて、聖獣の力を練りこみながら、氷壁を出して自分達2人と一体を完全に囲む。

契約したからこそできるの。


 ちなみにディアにお願いした凍土は、ディアが気を失ってしまった時に崩れてしまっている。


「「はっ!」」


 私と隊長はかけ声と三味線の双曲を合わせつつ、悪魔の力に対抗できる聖獣としての魔力と、純度の高い聖属性の魔力を一気に放出する。

ドラゴレナの聖獣としての魔力を自分に、契約者としての私の魔力はドラゴレナに譲り合い、一緒に魔法と音波を合わせて、独自に編み出した聖獣衝撃波をリリにぶつけ続ける。


 氷に反射させて共振動も起こしながら、リリの体内にこびりついて離れなかった、しつこい異なる力(汚れを)浮かす。


 イメージはもちろん、前世の眼鏡を綺麗にする音波洗浄器!


「うぉぐっ……ゲホッ、ゲホッ」


 汚れは血管に溶けこみ、濃度の濃いドス黒く粘りのある血(しつこい汚れ)を、リリがゴボッと口から吐き出し始めたわ。

 

「「はっ!」」


 弦に撥を打ちつけるように、更に弦を激しく弾きながら話しかける。


「そもそも悪魔との契約は、ベルジャンヌを復活させる事かしら?

根本的に契約不履行案件になると、まだわからない?」

「あ……そん、な……」

「リリが望む形でベルジャンヌを復活させる事なんて、もうできないわ。

仮に体を復活させる事ができたとして、中には何を入れると言うの?

中身が空洞か、もしくは違う何かの入った体が、リリの望むベルジャンヌだとでも?

大体、リリが言っていた地位や名誉をベルジャンヌが望むと本気で考えていた?

笑わせないで」

「そん……嘘、だ……」

「何に対しての嘘かしら?

勝手な妄想をベルジャンヌに抱き、自分の欲望をベルジャンヌの欲望だと都合良く変換して、叶えようとした事?」

「違う!

俺は姫様の無念を……」

「ベルジャンヌは死の間際まで、何1つ無念だなんて思っていなかった。

自分で選んだ父親役すらまともにできなかった国王の顔も、お門違いな嫉妬にトチ狂っていた異母兄の母親の鳩尾も、生きていた間に拳をお見舞いしていたわ」

「……は?」


 まさか死ぬ前にあの2人まで殴っていたなんて思いもしなかったみたいね。

苦悶の表情から呆気に取られた表情に変わった。


「気色悪い形だけの異母兄はフルボッコにして、むしろ清々しい気持ちだった。

当たり前よね。

自分の腹いせは生きている時に自分でしなきゃ、フェアじゃないもの。

だからね、リリ。

死の瞬間も、次の生を全うした時も、今ここでこうしている今この時も、ベルジャンヌが無念だなんて思った事は、1度としてないの。

そもそも執着した人間以外への関心を持てなかったのが、ベルジャンヌ=イェビナ=ロベニアだと、リリ自身も知っていたはずよ。

物理で殴るだけ殴って、ちょっと仕掛け(ドボン)を施したら、興味なんて失せているに決まってるじゃない」


 何だか自分で言って何だけれど、前々世の私って中身が完全に壊れていたんじゃないかしら?

今思い出しても、人間味がないわ。

なんて思いつつ、続ける。


「そもそもベルジャンヌにとって形だけの血族に、価値を置けたと本気で思っているの?」

「だったら私も姫様にとって、どうでも良かったと言うのか!

あれだけ長く共に過ごしても、姫様は何も言葉を遺してくれなかった!

私には何も……何も!」


 ぼろぼろと涙をこぼして、子供みたいね。

悪魔の力は核に当たる部分以外は手放せたようだし、可哀想だから気づかれない程度に、体力を回復させてあげましょう。


「まるで姫様であるかのように……そうだ、お前は姫様を装った偽物だ!」

「あらあら?」


 ひねくれてしまったわ。

元気にさせすぎたみたい。

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