表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

403/665

394.ブーイング

「会いたかったわ……私、頑張ったでしょう」

「クェ、クェ」


 目の前のリアちゃんを、そう言って抱き寄せる。

リアちゃんも抵抗せず、むしろ私に頬をスリスリしてくれた。


 はあ……羽毛と獣毛のハーモニー__ブツン。


 あらあら?

私の中の理性の切れる幻聴が……本能が暴走しちゃうわ!


「クェエ゙?!

クェクェクェ……」

「ご褒美のモフモフ吸い……ズヌォ〜、はぁ、たまらん〜、ズヌォ〜、んふ〜、生まれたての羽毛と体毛〜、ズヌォヌォヌォ〜、たまらんのぅ〜、たまら〜ん」


 抗議の鳴き声らしきものが遠くで聞こえるけれど、これも幻聴よね。

顔を傷つけないよう配慮している、柔らかあんよの踏ん張りが、更に私の本能を刺激してくるわ!!

止められない、止まらない!


「ングェ〜……」


 何だか断末魔のような鳴き声……気の所為よね。


 と思った途端、私の顔の接地面の力と抵抗あんよがフニャリとなくなって……嬉しい!

受け入れてくれたのね!

期待に応えちゃう!!


「ズヌォ〜、ズヌォ〜、んふ〜、はぁ〜、幸せ〜…………。

まあまあ?

孵化で疲れてしまったのね。

お疲れ様」


 ふと、全身の力もフニャフニャになっていた事に気づいて、理性をかき集めて顔を上げた。

そうね、孵化したばかりだもの。

長時間お腹を顔で圧迫したら、疲れて眠っちゃうわよね。


「酷いぜ、ヒャッハー!

生まれたてはキツイぜ、ブ〜ブ〜」

「「「「「ブ〜ブ〜」」」」」

「……恍惚の、顔で……惨、い……」


 ドラゴレナ夫妻の曲調がまるでブーイングね?


 教皇は耳を押さえ、這々の体で意味不明の言葉を呟いているから……錯乱中?


 悪魔の力もほぼ吐き出したみたい。

残りは心の引っかかりを取り除きさえすれば、契約は綺麗な形で破棄できそうね。


 そこでディアが少しも動いていない事にも気づく。


 卵の殻と、固定していたベルトは瞬時に亜空間へ片づけてディアを確認……え?


「ディア?」


 そっと片手で甲羅を支えて、持ち上げた。


 見慣れた赤色から、どこか薄氷をおもわせる白藍(しらあい)基調へと体の色が変わっている?

名残りは光の加減で5色の光が見える事。


 観察する限り、リアちゃんから継いだ聖獣の力を全て譲渡して、自ら発生させ、育んだ聖獣の力を定着させたという事かしら。


 ディアを改めて魔法で診てみれば、なるほど。

特殊な状況で聖獣になったディアならではね。


 リアちゃんの聖獣の力を呼び水のようにして、自分の中に新たな聖獣の力を目覚めさせていたなんて。

だからリア()ディア()なんていう、一種の相反する熱操作となる力を扱えていたのかもしれない。


「ずっと頑張っていたものね」


 片手にリアちゃんを抱えたまま、もう片方の手に載せたディアを抱きしめる。

元々の白灰色に近い色も、可愛らしいわ。


「さて、仕上げでもしましょうか」


 2体を抱えたまま、ニコリと教皇に微笑みかける。


「何……くっ、それよ、り……腹を……隠し……令嬢が、恥を」

「お腹?

あら、いつの間にか服に大きい穴。

そんな事より、()()

私が誰か、まだわからない?」


 お腹って何かしらとリリの目線を追えば、卵の殻が消えて、空いた穴からお臍が見えてしまっていた。

これくらいどうという事もないわ。

まだ若いから、お腹が多少冷えても問題ないもの。


 瞳にかけていた幻覚を解除して、本来の瞳を顕にしつつ、前々世で女の子だと思って名づけた名前で呼びかけた。


「……え……」

「さあ、聖獣()()()()()

一緒に悪魔の力を滅するわよ!」


 抱えていた2体は、タイミング良く奥さんズから伸びてきた蔦に預ける。

蔦を編んで瞬時にベビーベッドを作る奥さんズ。

やるわね!


 私も自分の亜空間から、前世で馴染みのある三味線を取り出した。


 私が無才無能だと信じこんでいたらしいリリは、瞳の色や、きっと今では誰も知らないはずの名前を呼んだだけでなく、亜空間収納だなんていう高位の魔法を当然のように使用したから、驚いたのね。


 けれど驚愕したお顔は無視して、今代のドラゴレナに目で合図を送ると、すぐにジャララとドレッド音が私の隣から聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ