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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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353.人生で初めて、受けた祝福に感謝している!〜ミランダリンダside

「ほら、こうやって手をかざして……」

「あ……すごい……」

「さあ、次はムジカがやってみて」

「えっと……こう?」


 ムジカと呼ばれた少年は、ロブール公女と同い年か、少し年下のように見える。

それくらいの外見の少年は、きっと神官見習いね。


 明かりを灯すほどでもないけれど、それとなく薄暗くなってきた室内。

そこで襟に中級神官の、青のラインの入った上着を羽織る20代くらいの青年が会話しているのを、気配を殺して聞く。


 台を前に、並ぶ大小の背中を見つめている私は、狭い個室の隅にいるのだけれど、彼らは気づかない。

こんな時は、聖獣ドラゴレナの祝福があるって、本当に便利ね。


 薄茶色の髪を、飾り気のないゴムで1つに縛っている神官は、同じく薄茶色の髪のおかっぱ少年に、手ほどきしている。


「ん……少し、違うかな。

もっと体を楽にして……そう、僕の体に軽くもたれて立ってみて。

肩の力を抜いて……」


 神官はそう言って、少年の後ろに周って……やだ、バックハグ!


「こう?

力、抜けた?」

「うん。

それじゃあ、次は……」

「あ……待って、ゆっくり……」

「うん、大丈夫。

無理はさせないよ。

ゆっくり入れていくのを、感じられるかな?」

「うん……温かい……けど、ちょっと……ん、熱い……」


 そう言いながら、今度は台を前に、少し覆い被さるようにして、少年の手に自分の手を添える。


「じゃあ、今度は内側に巡る熱を……ほら、こうやって外に出そうか……」


 この神官の穏やかな声も良い!

でも、きっとそろそろ現実に戻る頃かしら。


「こう……」

「そう、そこからは強く出していくんだ……」


 2人の声に、熱がこもっていく。


「……やった!

やったよ、出来た!

兄さん、浄化できたよ!」

「良かった。

コツは掴めたようだね!」


 ああ、現実の世界が戻ったわ。


 2人はやっぱり兄弟なのね。

髪色もそうだけれど、顔立ちも似ているもの。


 台の上には、紙を下敷きにした、握りこぶし大の石。

ついさっきまでは、未浄化で、私の目には薄く黒い靄を放っているように見えた。


 この2人の目には多分、それは見えていなかったと思う。


 ただ、神官になるくらいだから、感じる事は出来ていたはずよ。


 紙には瘴気を内に封じる魔法陣が描かれてあったわ。

それが今は消えている。


 浄化出来ると消える仕組みになっていて、この兄弟は浄化の練習をしていたの。


 血縁関係で、血が濃いほど魔力の親和性が高いとされているわ。

だから体内の魔力の循環や放出を、上手く覚えられない子供には、親兄弟が自分の魔力を体に流しつつ、直接本人の体で覚えさせる。

1番手っ取り早くて、1番暴走を起こさない、安全とされるやり方ね。


 目の前で、組んず解れつでのそれを見ていたのだけれど、ロブール公女の言う通りよ!

教会には、萌えがある!

秘密の園!

インスピレーションが滾るわ!


 ああ、聖獣ドラゴレナ!

私は今、人生で初めて、受けた祝福に感謝している!

こんな日が来るなんて、思いもしなかった!


 公女!

どこまでもついていきます!

私の推し神様!

まさか公女があの……くぅ!


 そうよ、その為にもまず、公女を探さないと。


「これで次の見習い昇格試験に受かるかな?」

「そうだね。

まずは少しでも浄化する能力を示す事が第1条件だからね。

まだ時間はあるから、もっとスムーズにできるように、兄さんもサポートするよ」

「うん!

ありがとう、兄さん!」


 仲良し兄弟は、そう言いながら部屋を後にした。


「ふう……良い物が見れたわ。

でもいつまでもここにはいられない。

公女がどこにいるかはわからないけれど、確実にこの教会のどこかにはいる気がするのよね」


 言いながら、けれど公女からのアドバイスを忠実に遂行する。


 肩に下げていたノートを出して、とにかくインスピレーションを文字に起こす。


 そうしながらも、あの時の第1王子の顔を思い出して、ふと手を止めた。


『消えた、だと……』


 普段は無表情でいる事の多い王子は、明らかに愕然としていた。


 けれど王子の言っている事は、私にも正確に感じ取れた。

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