表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

346/698

337.安心したら駄目なやつ〜ミハイルside

「悪かった」


 殴ってしまったヘインズに謝罪しながら、頬に治癒魔法を施す。


「いや、いい。

けど、俺は絶対に公女にだけは手を出さねえ。

絶対だ。

マジで、色々、怖すぎんだよ」

「……わかった」


 空色の瞳は、俺の背後を見据え、明らかに怯えている。

色々がどんなものか知りたかったが、短く区切りながら話す様に、危機感を触発された。

今は止めておく。


「それよりも……」


 ゆっくりと後ろを振り返る。


「ひっ」

「お兄様ったら、青春ですわね」


 小さく悲鳴を上げるのは、空色の瞳の令嬢。


 のほほんと、どこか祖母を彷彿とさせる眼差しをむけるのは、空いた机に行儀悪く腰かける妹だ。


「その腹はどういう事か説明しなさい、ラビアンジェ」


 まるで妊婦のように腹が膨れている。

季節柄、まだ薄手の服だ。

華奢な体だから、余計に目立つ。


 先日までは薄かったから、無いとは思う。

思うが……この妹はぶっ飛んだ方向から、精神を意図せず抉る。

油断してはならない。


「温めておりますの」

「……何をだ」

「さあ?

生まれてからの、お楽しみでしてよ」


 腹を見つめる妹は、珍しく素の微笑みを腹に向けている。


「妊娠、では……」

「お兄様、流石にこのお腹は早すぎましてよ?

大きさが5ヶ月くらいですもの」


 どうやら妹は妊娠したわけではないらしい。

ほっと胸をなでおろすものの、呆れたような顔をされたのは、納得いかない。


「ファルタン伯爵令嬢は、休学中と記憶しているが?」

「ふぁい?!」


 ビクッと背筋を伸ばして返事をしたが、引きこもり令嬢らしい怯えっぷりだ。


「大丈夫でしてよ。

沼仲間ですもの。

取って食われそうになったら、近くでしっかり目に焼きつけますわ」

「それって結局助けないやつ……」


 沼仲間って何だ?

だがあの顔に、目を爛々とさせた妹には聞かない。

聞いたら何かに負ける気がする。


 それに安心させる気が感じられない言葉で、かなりビビらせている。


「それで、何故令嬢は学園に?

覗き見とは、趣味が良いとは言えない。

それにこれまで妹とは、そこまでの接点はなかったはずだ。

あの山中が初対面だったと、記憶しているが?」

「それは……その、申し訳ありません」


 令嬢は素直に謝るものの、妹はにこにこ微笑みを浮かべ、興奮気味に喋る。


「昨日、趣味が高じて仲良くなりましたの。

美男子が強面男子を追い詰める様はもちろん、まさかの壁ドン!

お見事でしたわ!」

「……」


 違う、そこは褒めなくて良い。

思わず無言になってしまう。


「ミランダリンダ嬢の隠密スキルは、素晴らしいものでしたわ。

ですが全神経を視覚に集中するあまり、ドアを開き過ぎて転がるとは、不覚。

私が押してしまったので、この方に落ち度はありませんのよ。

ですが次こそ完璧に覗きを完遂するべく、擬態ローブを羽織って行動しましょう!

ね、ミランダリンダ嬢」

「は、はい!」


 妹が令嬢を見て、何かを誘い始めた。

令嬢も、ハイじゃない。


 擬態ローブとは、蠱毒の箱庭でも使っていた、性能だけはやたら良いローブの事だろうが、覗きの犯行道具になっている。


「違う、そこじゃ……いや、覗くのはもう、私だけにしておいてくれ……」


 ガクリと項垂れる。

恐らく妹は自分の趣味の為なら、軽犯罪くらいは平気で犯す。


 長らく疎遠になっていたが、少しずつ距離を縮めている。

と、兄としては思いたい。

思いたいのだが……知れば知るほど、妹はヤバい方向に才能を極振りしている。

無才無能とか言ってたやつ、出てこい。

あ、そこにいたな。


「え、何で俺を見て睨むんだ?!

いや、考えてる事はわかる。

色々悪かった。

贖罪もする。

けど、今は頼む!

なんか巻きこまれたくねえ!」


 そうか。

確かにあの時までのお前は悪い。

未だに兄としては、腹立たしい。

だが巻きこまれたくない気持ちは、どうしてかわかる。

何か嫌だが、わかってしまう。


「そういえば、忘れておりましたわ。

いつも覗きたいわけではありませんのよ。

ラッキーなんちゃら的に、心湧き立つシチュエーションをたまたま目にするから、良いのですわ。

ね、ミランダリンダ嬢」

「あ、はい!

それは確かに!」


 そうか、ホッとさせるような言葉のようで、なんちゃらのあたりで、口元をニヨニヨ弛めた所に、兄は安心できないぞ。

まあ、いい。


「お前が用?

珍しいな」

「ええ。

教会にお使いに行く事になりましたわ」


 やっぱり、全然、少しも、安心したら駄目なやつだったか……。

※※後書き※※

いつもご覧いただきありがとうございます。

ブックマーク、評価、感想ありがとうございますm(_ _)m


7/10発売の本作の口絵の一部が、カドカワBOOKSツイッターにて公開されています。

よろしければご覧下さいm(_ _)m

悪女っぽい顔をしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ