表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

337/698

328.在りし日〜国王side

『ほう、とうとう娘を直接的に』


 受理した書類を持って、広い国王の自室へと戻る。

茶を出すよう指示してから、椅子に深く腰かけた。


 思い出したのは、そう言って切れ長の目をスッと細めた、在りし日のライェビスト。

顔の造作が美しく、左の目元のホクロがそこに色を添える。


『ああ。

愚息が直接、傷つけたそうだ。

すまない』


 子の父親として、素直に肯定し、謝罪する。


『しかし若気のいたりが行き過ぎただけです。

既に治癒で完治しておりますのよ』

『それで?』


 この場に当事者の両親として、側妃を同席させたが、完治したのだから良しとしようとする魂胆が透けて見える。


 顔の造作だけは、万人に受けるような穏やかで、優しげだ。

しかし中身はそうではない。

かなりの野心家で、第2王子を王位に就けようと考えておる。


 それ自体は大した問題ではない。


 先代の王妃達__現王太后となった実母と、戸籍上は母とよぶ前王妃の関係が、ある意味良好で、ある意味では異常であっただけの事だ。


 かの女人達は、亡き王女の犠牲を間近で見ておった、傍観者。

そして使えぬ王が即位した後は、国政を回した同士。


 故に血の繋がりなど関係なく、王妃2人の内、初めに産まれた子供の教育が順調であるなら、その子供を王位に就けると決めて、互いに子を成した。

余が王となったのは、かの2人の考える国王たる水準に達した、最初の子供であったが故。


 今の王妃と側妃の関係が、王位にまつわる本来の姿であろうな。

とはいえ、王妃が我が子を王にと望んでいるとは思えぬ。

王妃もまた、亡き王女がどれ程の犠牲を払い、何故亡くなったのかを知っておる故に。

そして我が子を想う母であるが故に。

更に王家と四公はこれからも王女の、稀代の悪女たる印象を払拭は決してせぬと知るが故に。


 国王と王妃、四公の当主達は真実を継承し、しかし王女にまつわる偽りを是正せず、その功績を隠蔽し続けるであろう。

それこそが、王女への()()だなどと、聖獣達は思いもせぬであろうな。


 稀代の悪女か……。

()()()()では、そうかもしれぬな。


『それにこの国の第2王子の婚約者として、後の王子妃として、相応しい教育を受け、教養を身につけるよう、幾度となく公女に伝えて参りましたわ』


 真実など、何も知らされぬ立場の側妃が、相変わらず母として息子の暴力を謝罪もせず、墓穴を掘り続ける。


 王家に取り入れる血筋と、当時の政治的な背景から王家に迎えた。

余の実母も含めた先代の王妃達とは違い、側妃として。


 側妃はアッシェ家の血筋からはかなり薄まった傍系の中から選ばれた。

ヘインズ=アッシェは愚息に付き従いながらも、暴力は止めようとした故に、呼ばなんだが、あの者の父であり、側妃の後ろ盾であるアッシェ家当主にも、同席させるべきであったかもしれぬな。


 親としては止めるべきであろうが、国王としてはこのまま放っておくべきだと正反対の考えの狭間に揺れる。

このあたりで、側妃の権限を幾らか削るべきではある。


『なのに全てを拒否し、学園でのクラスもD。

怪我をさせたのはジョシュアだけれど、そうさせたのは公女と言えるわ』

『教育に教養?

する必要が?』


 娘を、もしくは公女を貶される事に、父や当主として羞恥なり怒気なりを孕むでもなく、淡々とした口調であるからであろうな。


『当たり前ではありませんか!』


 側妃が平然と、当然のようにそう言い放てるのは。


『公爵がそのように、公女の自主性に任せると仰っていっこうに教育なさらないから、いつまでも公女が奔放に過ごし、ジョシュアとの仲が進展しなかったのです!』


 全てをロブール家側の落ち度に持って行こうとするのは、そろそろ止めた方が良かろう。


 長年の付き合いからわかる。

羞恥や怒気ならばまだ良い。

しかしこの者の場合、面倒臭さが先にきておるのだ。

そうなった時、ロブール家の気質は、こちらとしては面倒な方向へと舵をきりやすい。


『王子は養女を所望していたはずだが?

本人達も希望していた。

私はどちらでも良いし、ロブール家と縁を結ばなくとも、それはそれで良しと伝えていたが?』


 当然のようにこの者から側妃へは、敬語もない。

やはりこの者は婚約自体を……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ