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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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332/699

323.当たり〜ミランダリンダside

「っぶね」


 ヘイン様は尻もちをつきながら、元いた場所にいきなり突進してきた白い兎を見やる。

頭に角の生えた一角兎で、もし美女が彼のお尻を蹴っていなければ、あの角で間違いなく刺されていたに違いない。


「ヴァルァ!

ヴァルァ!

ヴァルァ!」

「「「グォン!

グォン!

グォン!」」」

 __ヴォン!

 __ヴォン!

 __ヴォン!


 魔獣達の攻撃は尚も続いている。

けれど、とふと疑問が浮かぶ。


 どうしてこんなにも最初から攻撃的なの?

こちらから何かしたならわかるけれど、ここは郊外とはいえ、人が行き来する場所。

あのバシリスクもそうだし、種族の違う複数の魔獣が同時に襲うだなんて、あり得ない。


 それに音波狼も兎熊も、1度狙いを定めると、他を全く気にしない集中ぶりに、異常さを感じる。


「やっだー!

兎熊じゃない!」


 そんな中、嬉々として叫んだ美女の声で我に返る。


 美女は角で刺そうとする兎に、狙いを定められている。

この兎も、もうヘイン様には目もくれない。


 けれど突進する兎を余裕の表情でヒラリ、ヒラリと躱しつつ、スカートのスリットの中に手をやる。


 チラリと現れる細く、引き締まった足が、大人の色気を醸し出しているわ。


 そこから取り出した短刀を鞘から引き抜くと、兎熊の方へと素早く投げた。


「ヴァルァ?!」


 兎熊の長い耳にサクッと刺さる。


「ヴルルル……ヴァルァ!

ヴァルァ!

ヴァルァ!」

「……いや、私ではないだろう」


 何を思ったのか、公子を見て(うな)り、攻撃の速さが増す。


 しかし流石四公の公子。

相変わらず何かを思案しているけれど、余裕で防いでつっこんでいるわ。


「チッ、コレじゃなかったか」


 そんな舌打ちする美女に、内心、だったらどれ、とつっこんでしまったのは秘密。


「ちょっと、いつまで転がってるのよ!」

「うわ?!」


 跳んできた兎の角を鷲掴みにした美女は、ヘイン様に……兎を投げた?!


 驚いたヘイン様だけれど、魔法で水球を出して兎をキャッチ。

そのまま、その中に沈める。

その中で苦しそうにもがくのは可哀想だけれど、襲われたのは彼の方だもの。


「ほら、さっさと囮になんなさい!」

「ゲッ?!

マジかよ?!

クソッ」


 美女に捲し立てられ、悪態を吐きつつも、慌てて立ち上がる。


 そんな、危ないじゃない、なんて、これまた内心で美女を批難。


「まて、下手な攻撃をするな!」


 すると、何かを考えていたような素振りだった公子がハッとした顔になる。

やっぱり何かを考えていたのね。


「肉を損ねる!」


 ……ん?

でも、え、肉?!

何を言ってるの?!


 でもあの魔獣の肉は硬いし美味しくないって……。


「あら、わかってるじゃない。

ほら、さっさと注意そらしなさいよ!」

「ひでぇ?!」


 せっかく立ち上がったヘイン様のお尻が、また美女に蹴られた。

でもその絵面が……何かの琴線に触れて、そんな自分に内心驚く。


 けれどこちらに集中していたはずの音波狼の1体が、ヘイン様の方向へと飛び立とうとした?!

さっきまで、一点集中していたのに?!


 結界横の低木が弾け飛んだ時に舞った、土埃を風と土属性の魔法で巻き上げつつ、集めてピンポイントに3対の赤い目を同時に狙う。


 良かった!

結界の中からでも、攻撃できるのね!


「「「ギャウ?!」」」


 目潰しまではいかないけど、痛みは与えられたみたい。

バサバサと羽を動かし、空中で体をくねらせてのたうつ。


「「「グオオオオン!

グォン!

グォン!

グォン!」」」

 __ヴォン!

 __ヴォン!

 __ヴォン!


 けれどそれも少しの間の事。

兎熊と同じく再びこちらの結界への攻撃が激しくなる。


 もちろん成り行きに任せているかのように、終始無言でいる王子の張った結界は、揺らがないから、これで良いのよ。


 __バシャバシャバシャ!


 突然の水音に、公子の方を見やる。


 ずぶ濡れの兎熊の近くには、ヘイン様?!


 一角兎は……水球の中でビクビクと体を痙攣させていた。


「ヴルルル……」

 __ヒュッ。

「ヴァ……」


 ヘイン様の方へと向き直り、唸り声を上げて新たな獲物へと襲いかかろうとした、その時……。


 __ボン!


 短刀が兎熊の頭に刺さり……頭が弾け飛んだ?!


「そうそう、これこれ。

当たりみたいね」

「「…………その短刀……」」


 当たりって爆破するの?!


 驚いていると公子と王子の、どこか引いたような声が重なった。

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― 新着の感想 ―
おかしいな、チーム腹ペコのメンバーってこの人たちだっけ
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