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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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285.昭和のスポコン少年漫画と丸茄子

「ど、ど、どうしてロブール公女がこんな所に……」


 慌てふためく彼女は、記憶が定かなら、アッシェ家の傍系にあたる伯爵令嬢。

私の5歳年上だったはずだから、学園はもちろん、他でも顔を合わせる事もなかった。


 なのに不思議と私を識別できたのね。


 彼女とお兄様になら、多少なりとも話した事はあったと思うわ。

だって彼女は……。


「新種の魔獣?」


 少し冷静さを取り戻し、警戒した声音となった神官の言葉に、思わず考え事を中断する。

彼の視線の先を追っていく。


 まず見えたのは、姿を見えなくしているディアの姿。

もちろん私の目にはちゃんと見えている。


『おかあさん、たのしかった!』

『それは良かったわ』


 目が合うと、ディアが私の頭に転移しながら、念話で興奮を伝える。

部外者の2人を意識した隠密行動を取れるなんて、うちの子優秀じゃないかしら。


 健やかな成長が感慨深いわ。

頭頂部に感じる柔らかな腹毛も相まって、身悶えするほどのパッションが胸の内から溢れ出そう。

そんなうちの天使からは、それとなくフルーティーな花の香りがするわ。


 あら、誰かさんはずっと無言で騒いでいた動きをピタリと止め、スンスンと鼻を鳴らしたわ。

と思えば、ビクビクと辺りを見回し、警戒し始める。


 どうしたのかしらね?


 それより隊長はどこに……ああ、地面に潜っているのね。


「ン゛ン゛ブェェェェ〜!!」


 あらあら、最後に追いかけてきた魔獣がかなりのダミ声で鳴く。

なかなか耳にくる、不快な不協和音のよう。


 常備してあるお手製の耳栓をポケットに転移させてから、さっと耳に装着する。

これ、なかなか重宝するのよ。


 普通の生活音は拾いつつ、自動音量調整と不快な音を心のTPOに合わせた音へと自動変換してくれる、素敵魔法具なの。

前世で加齢によって耳が悪くなっていった頃に、特に欲しかった一品ね。


 完全防水仕様だから水に潜っていても、声を正確に拾える優れもの。


 数ヶ月前、元義妹で従妹のシエナと、魔法呪化しそうになったディアがドッキングした時も、装着していたの。


 あの時のお兄様や第1王子の反応を見る限り、かなり不快指数は高めだったんじゃないかしら。


「メェ~、メェ~」


 あら、外見からはかけ離れた子羊の鳴き声。

ちなみにディアの耳には直接耳栓を転移させたから、頭頂部に変化は感じない。


 けれど、ひぃ、と耳を押さえる誰かさんや、何かを堪えるように身を固くした神官を見る限り、現実的不快指数は高そうね。


『みみせん、おもしろ〜い!』


 頭の振動と楽しそうな声音から察するに、ディアは耳栓をつけたり、外したりして遊び始めたみたいね。


 子供って、何でもオモチャにして楽しむ才能の塊だと思うわ。

前世の孫達も小さい頃、私や旦那さんの老眼鏡や補聴器の耳にかける部分をあらぬ方向に折り曲げたり、放り投げたりしたのよ。


 最後は旦那さん共々、部品を揃えて自分で交換したり、曲がり具合を調整したりするようになっちゃった。

ネット通販って便利よね。

普通じゃ手に入らない物も、手に入れられるもの。


「な、何でそんな生温かい目を……」


 あらあら、ついうっかり。

気を引きしめ直して、デフォルトの淑女の微笑みを浮かべ直す。


 何故かしら?

ビクッとしてうつむいてしまったわ。


「公女、あの魔獣を見た事は?」


 ふむ……私を調査したと言っていたわね。

魔獣について実はそこそこな知識を有すると知ったのかしら。


「そうですわね……」


 間違いなくドレッド隊長によって品種改良されたらしいバロメッツを改めて見やる。


 メェメェと子羊ちゃんのような鳴き声とはかけ離れた、立派な体躯は約2メートル。

全身をモコモコな白い毛に覆われているまでは、可愛らしく感じない事もない。


 けれどお顔は前世で見た、昭和のスポコン少年漫画かとつっこみたくなるの。

立派な眉毛に、目鼻立ちの濃い羊顔だもの。


 そこからは、普通の羊からあまりに逸脱している。


 本来なら蹄のはずの脚先は、薔薇の棘のように太くて鋭い。

お腹からはうねる蔦が出ているから、羊は宙に浮いている。

棘のついた蔦は何本も絡まって、一本の茎のようにも見えるわ。


 そして更にその下には、紫色のまん丸な丸茄子が……。

何故に、丸茄子?

いつもご覧頂きありがとうございますm(_ _)m

耳栓については【225.俺じゃない】をご覧下さい。

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