表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/697

275.白と黒の世界〜教皇side

「今すぐ僕達への命令も、そのふざけた魔法も解除して!

王族らしい扱いなんて一度もされてこなかったじゃないか!

ベルが義務なんて負わなくていい!

こんな国、もう無くなっちゃえばいいんだ!

だから……だから……」


 そう言って宙に浮きながら、必死に止めようとする小さな九尾の白い狐に向かって、姫様は微笑んだ。


「初めての命令が、こんなのでごめんね、キャス。

でも王族だからじゃないよ」


 少しの時間、姫様から離れていただけだった。

なのに長かったはずの、銀の混ざった白に近い薄桃色の髪が、肩まで短くなっていて……どうしてかこんな……。


 顔を腫らして隅っこで泣きながら丸くなっている、あいつが()()やったの?


 それともそれ以外の、姫様に悪態ついたり傍観ばかりしていた、ここにいる人達?


 それとも…………あの女?


(ねえ、姫様……)


「聖獣の契約者だから。

君達の主である事が、私のたった1つの矜持で、喜びだったから。

大丈夫、また逢える。

絶対逢いに戻ってくるから、今は逝かせて。

愛してる……キャスケット、ラグォンドル。

いつかこの国に戻って来るよ。

その時は私を見つけて。

次は穏やかに、何にも縛られずに、一生一緒に……笑って暮らしたいな。

だからそれまで、いつか私達が再会するこの(場所)を護っていて。

お願い」


 己の聖獣に向ける微笑みも、藍に金環を浮かべた瞳も穏やかで。


 ただ、それが自分に向けられたものではない事が……寂しかった。


(そう、寂しかった……だから姫様……こっちを見てよ……ううん、見なくていい……いいから、だから……)


 屋根が消し飛んで、顕になった空から注ぐ朝日。

清々しい陽光に照らされた、華奢な体の目に触れる至る所には、清々しさとは対極にある、禍々しい赤黒い呪印。

今もなお火で炙るかのようにして、それは肉を焼きながら刻印されていく。


 かと思えば、それよりも早く、白銀の炎が刻印を上書きするようにして聖印を焼き刻み始めた。


 見るからに痛々しくて、体も震えている。

きっと立っていられるのも不思議なくらい、壮絶な痛みに耐えている。


 なのに姫様が纏う空気は静かで。

そんな状態なのに綺麗だと感じさせる程、清廉で神々しい。


 やがて全身が白銀に輝いたように燃え光ったかと思うと、輪郭が揺らぐ。


 __バサッ。


 と思った瞬間、前ぶれもなく小さくな体は一瞬にして消え、真っ白な灰の山ができた。


「ベル!

ぁ……ベル……馬鹿、だよ……何でこんな。

待って!

ベル、ベルジャンヌ……駄目だ、駄目!

置いて逝かないでよ!」


 白い聖獣が小さな灰山に飛び寄ろうとして止まり、藍に金の散る瞳からポロポロと涙を溢しながら、まるでそこに姫様が居るかのように喋りかけた。

かと思うと、追いかけるように踵を返してかき消えてしまう。


「……ベル……ジャン、ヌ……様……」


 のろのろと力なく灰山に歩み寄ろうとしたのは、姫様にただ守られていただけの、桃金の髪の少女。

その顔は絶望に打ちひしがれ、ぼろぼろと涙を流していた。


 しかし白灰の真上に青銀の竜が浮かぶと、歩を止める。


 竜は狐と同じ色合いの瞳から、涙を一筋流す。


 伝い落ちた滴は下に辿り着く前に、水の玉となって白灰を包み、竜共々ふっと消えてしまう。


(ああ……色が……)


 清々しいはずの朝日も、真っ青なはずの空も、照らされているはずの幾人かの者達も、この世界の全てが自分の中から瞬く間に色を喪くしていった。


 __コンコン。


 部屋をノックする音が遠くで聞こえ、意識が浮上するのを感じる。


「……姫様」


 自らの声に目を開ければ、見知った部屋に1人いた。


 __コンコン。


 再びノックの音がして、暫しの間の後にドアが開き、亜麻色の髪に碧眼()()()青年神官がしずしずと入ってきた。


「教皇猊下、お目覚めになってくだ……おはようございます」


 既にソファに腰かけていたから、起きていると思われたのだろう。

白い法衣に身を包んだ、白と黒以外に色の無い世界の住人は、微笑みながら朝の挨拶をしてくる。


「ああ、おはよう」


 いつもの色も味気もない1日が始まった。

お待たせしました、本日より新章開始です。

お休み中にも関わらず、ブックマークやポイント頂けて、とても嬉しかったです。

お待ち頂いた方も、たまたま目にした方も、お付き合いいただけると嬉しいです。

暫くは毎日お昼頃に更新できると思います。


こちらも本日より更新再開しております。

【秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話】

https://ncode.syosetu.com/n7383ha/


こちらは毎日更新中です。

【太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する】

https://ncode.syosetu.com/n1110ia/


よろしければご覧下さいm(_ _)m


今はカクヨムが先行投稿となっていますので、先に読まれたい方は、そちらをご覧頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 再開を待っていましたよ、嬉しいです。新章はなにやらシリアスな様子。なんとなくゆるい雰囲気が好きな物語なのですが、ラビアンジェが時折見せる怖さも物凄く魅力的なので。どっちでもこい!です。楽し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ