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259.勘違い

「……思い違いをしていたようだ。

あまりに趣味が悪すぎると思ってはいたが。

どういう意図で欲しいのか教えてくれ」


 そうね。

物凄く盛大な勘違いよ。


 でも前世で結婚の挨拶に来た男性が女性の両親にそんな事を言っていたドラマのシーンがあったわ。

私の言い方も悪かったのね。


「言葉そのまま、欲しいだけでしてよ。

放逐とはいえそれは卒業後の事。

それまでは違いますわね。

親の温情なのか、はたまた当主として監視下におきたいのか。

そのどちらかか、どれもかはわかりませんわ」

「それで?」


 あらあら、少し圧が出ているわ?

もちろん気にしないけれど。


「そもそも悪魔の件は私達には黙秘命令が下っておりますし、単に魔法呪の発生に巻きこまれただけというのが表向きの話である以上、誰の落ち度でもありませんもの。

もちろんロブール家の元養女も然り。

表立っての罰は与えようもありませんから、あの箱庭への転移で決まった事に対しての現状維持。

しかしそれが事実上どこまで続くのかはわかりませんでしょう?

それに私自身、彼を信用してはおりませんの」

「つまり?」

「彼を引き取ったものの、彼を通して何らかの干渉を何者かから受けるのは避けたいだけですわ。

私、ベルジャンヌ王女亡き後この国で唯一の聖獣の契約者となっておりましたし」


 ちなみにディアナの事はあの場の私達以外、秘密よ。

リアちゃんの事は奥の手を使ったから、上手く誤魔化せたし、寿命を迎えてもういない事はお父様が報告してあるみたい。


「ですから彼に関わる全てを今この時よりアッシェ家には放棄して頂きたくて、卒業後に放逐されるのもわかっていながらこうしてお願いに伺いましたのよ」


 何せ速やかに彼を活用したい上に、今は青春を楽しむ為にも色々とバレるのも避けたいのだもの。


「なるほど。

アッシェ家が利用価値をアレに見出して放逐を撤回せず、その後にどう利用価値が出ても再び取りこもうとして欲しくない。

もしくはアレが自らすり寄ろうとしても突き放せ、と?」

「ええ。

仮におじ様が当主のうちはそうしなくとも、その後の事まではわかりませんもの」


 あら、かるく威圧かしら?

あなたも実際にはそうするかもしれない、と皮肉っているのに気づいたのなら、それはそれでいいわ。


「それにアッシェ家の者を信じる気にはなれませんし、それはお互い様でしょう?」

「……ほう?」


 私が怯むどころか、何も反応せずに淑女のポーカーフェイスを崩さないからかしら?

私の出方を窺った後、軽く片眉を上げたわ。


 しばらくして、ふうっ、と息を吐いて雰囲気が元に戻る。


「無才無能過ぎて貴族の社交界に顔を出した事もなく、第2王子がアレも含めて取り巻き共々長らく馬鹿にし続け、あらゆる責任からも王妃教育からも逃げ続け、義妹を虐げ続けた公女、だったか」

「ふふふ、ある部分は事実ですから否定も致しませんわ」

「父親のロブール公爵の事はある程度知った仲だ。

彼の反応を見ていたから噂を鵜呑みにはしていなかったが、これ程差があるのも珍しい。

良いだろう。

どのみち公女には愚息の親として折りを見て償うつもりではいたからな。

学費や寮費は既に卒業分まで支払っているし、それ以外の物も学園にいる限りはうちで負担するが完全に手を引くと誓おう。

だが卒業後の援助は一切無しだし、アッシェ家からアレを除籍をするとしよう」

「ありがとうございます。

お仕事中にお時間を取らせて申し訳ございませんでした。

それでは」

「ああ、そこまで送ろう」

「何の知らせもなく訪れた礼儀知らずですから、お構いなく」

「ふ、そうだったな。

気をつけて帰られよ」


 私の方も最初からまあまあの無礼を四大公爵家の当主にしてこの国の騎士団長にはたらいているのだから、身のほどはわきまえているのよ。


 にこやかな微笑みはそのままに、城の敷地に併設されている騎士塔にある団長室を後にする。


 あの元婚約者との顔合わせ以来ね、ここに来たのは。

いつぞやはそこの庭園を抜けて1人帰ったのよね。

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