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《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&1/9最終巻発売予定


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241.異常……祖父母目線?〜ミハイルside

「けれど駆け落ちした兄の子供が弟の養女として出戻るのは醜聞なのも確か。

あなたも少なからずつらい思いはしたでしょう?」

「嘘つき!

だったらどうしてお祖父様が表立って動かなかったのよ!」


 関わりはなくとも祖父に殺意を向けられていた可能性を示唆されたシエナは感情的に叫ぶ。

だがあの霧はむしろ薄くなっている?

逆に盛り上がっていた塊が大きくなり、少しずつ人の形を取り始めた。


 そんな結界の外の変化にも妹は興味を示さず、相変わらず穏やかに告げる。


「既に当主を引退し、領地に引きこもっているのにそれはできないわ。

現在の当主の正式な発言を覆す事は、先代といえど許されない。

四公の当主とはそういうものだし、お父様には当主以外の強い立場もある。

争えば痛手を被るのはお祖父様よ」


 蠱毒の箱庭での一件で同じ次期当主であるウォートン=ニルティの言動を垣間見た。

そして父の魔法師団長としての地位はかなり強い。

本人は大して気にしていないが。


 まだ未熟だと自覚するからこそ妹の言葉が重くのしかかる。


 ふとレジルスの無表情の中にも気遣わしそうな視線が妹から俺に向いているのに気づき、気にするなと首を軽く振っておく。


「そしてそんな気質の反動のように、1度懐に入れた人や物事への情は厚くて重くなりがち。

皮肉なものね。

だからこそ伯父様はあなたの実母の為に駆け落ちし、あなた達母娘の為に平民であり続けた。

あなた達がいなければ伯父様は貴族に戻る事まではなくとも、何かしらの地位につくという選択肢もあったのよ?

お祖母様はお祖父様の特別で、身内への愛情は人一倍深い方だもの。

妻のおねだりに息子の口利きくらいならしたはず。

それでも伯父様はそうしていない。

仮にも四公の次期当主から平民となるのだもの。

それも見つからないように隠れ暮らす必要があったのだから、その苦労は大変だったのは想像に難くないわ。

なのに他ならぬ娘によって、ねえ?」

「……違う……私は……」


 シエナがぎくりと顔を強張らせる。


「あなたが私達を取りこもうとした時、私にもあなたの悪夢が見えたわ。

あなた達親子が遭遇した馬車事故の真相も」


 そこで妹はふうっと息を吐く。

そこにはどことなく憐憫の情が窺える。


「どうして現在()に満足できなかったの?

私はあなたが私をどれだけコケにしようと、公女としての立場を奪おうと、一線さえ越えなければ()()()()()()()()()()()()わ。

それくらいには私にとって今の立場はどうでも良かったし、あなた達が私に向ける敵視や憎しみすらも微笑ましいと受け流してしまえる程度の事だった。

あなたの過去がどうであったとしてもよ」


 どういう事だ?

妹が何かをしたという事か?


 それよりも……妹は何故こんなにも知っている?

まるで既に当主教育を……いや、それより上の教育を施されたかのようにすら思わされる。


 しかも……悪意に慣れ過ぎだ。


 物心つく頃には母の悪意を向けられ、今では本人も認識しているように憎まれている。

あの元婚約者や元義妹によって貶され続け、悪評高い。

それに便乗して軽く扱う貴族達も多かった。


 気にしないと言っても普通ならどこかで気にするものだろう。

少なくとも幼かった子供が親の愛を全く求めないなんて事はない。


 こんなにも穏やかな顔で話す事自体が正直……異常だ。

お祖父様を相手にしているかのようにも感じる。


 あの人こそロブールらしい……その通りだと思う。

祖母以外には興味を持たず、与えられた役割を淡々とこなす。

必要なら愛情深い顔もするが、必要なければ関わる事すらしない。


 妹こそがロブールらしい……いや、違うな。

妹は多分いつでもこうやってシエナを切り捨てる意志を示せたのにしなかった。

それは母も俺もそうだ。


 どことなく情を垣間見せて受け流してはいても、その悪意や憎しみに付き合ってきている。

この逃走猛者っぷりなら間違いなくからまれる前に逃げられた。

なのにそうしなかった。


 妹が時折見せる今のような表情といい、祖父母目線で見守っているかのような距離感を感じてしまうのは気のせいだろうか……。

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