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239.昼ドラ?〜ミハイルside

「それに少なくともその内の1つはあなたの養母として常に身近にいたのだもの。

あんなにも欲まみれで自尊心が高くて傲慢、自分の能力とやらを過信しかしない人間の側に何年もいて気づかないとも、あのお母様がそれを話さないとも思えないわ」


 続ける妹の言葉には納得しかないが、辛辣だ。


 もしかしたら……いや、間違いなく妹は実の母親を切り捨ててしまっているのか。

もしあの日俺が離れに向かわなければ、俺もこんな風に切り捨てられたままだったのかもしれない。


 もちろん今も妹が俺を完全に受け入れてくれたとは思っていない。

だが義妹だったシエナや母への態度とは明らかに違う事に内心ほっとしている。


「そんな言葉に惑わされないわ!

私は引き取られてからずっと公女として無事に生きてきたんだから!」

「そうよ。

あなたがロブール公女として無事に在り続けられたのは、既にお父様が当主となっていて実の両親が亡くなっている養女という立ち位置にあるから。

だからこそお母様があなたの命の存続に一役買ってもいるわね」

「どういう事よ」


 ()めつけながらも今更ながらに妹の言葉へと耳を傾けるのは、その先の言葉が俺と同じく気になるからだろう。


 母がシエナを生かしている?


 俺達2人の様子に妹は柔らかく笑う。


「ふふふ、どうして知らないふりをするのかしら?

それともそこには気づいていないの?

お母様は初めから次代のロブール公爵に嫁ぐと双方の家で取り決めていた。

つまり駆け落ちするまでは次期当主としてロブール家にいたあなたの実父こそが、お母様にとっては真の婚約者だったの。

駆け落ち相手であるあなたの実母を誰よりも憎んでいたのはお母様。

伯父様の弟であるお父様に嫁ぐ事はお母様にとっては屈辱だったんじゃないかしら。

だからこそ私とお兄様はお母様に愛されていない。

そして私は実の娘のあなたよりも、伯父様に似ているわ。

持っている色も顔立ちも」


 そう告げられたシエナは、一瞬泣きそうな顔を見せた?


「あなたもそうでしょう?

私を従姉とも、義姉とも見られない根本的なところはそこが起因している。

加えてお母様は自身の母親からお祖父様の色を全て継いだ男児を望まれていたのに、私は母方の祖母が最も疎んじた妹であるお祖母様の色と顔立ちだもの。

お母様は自身の母親から叱責を受けたわ。

私を産んだその時ですら、何の労りもなくね」


 その言葉にはさすがのシエナも戸惑ったようだ。


 妹が産まれた時、父は仕事で邸におらず、俺は祖父と待機していた。


 あの日は母方と父方の祖母2人が出産に立ち合っていたが、母方の祖母は確か立ち会い中に貧血か何かで倒れたのを薄っすらと覚えている。


 妹の話は誰からも聞いた事がない。

シエナもそうだと歪んでしまった顔の表情で察する。


「お母様からすれば私こそが人生を躓かせた失敗の象徴であり、かつての元婚約者……といっても実際は婚約関係ではなかったのだけれど、お母様にとっては自分を捨てて他の、それも平民を選んだ憎い男の象徴でもあるのでしょうね。

初恋を拗らせた哀れな女の末路よ」


 相変わらず孫を見守る祖母のように優しく話す妹の心理が読めない。


 何故そんな穏やかな顔で話せる?


 チラリと後ろを見やれば、レジルスは気遣わしげな表情で妹を見つめていた。


「そんな思いをさせた娘は思い通りにならなくて日々苛立ちを募らせていたところに、王子の婚約者に選ばれても全く意に介さず、勝手に帰宅したともなれば憎しみが大爆発してしまった。

しかもそのせいで得意だった魔法を封じられ、更に娘は悪評まみれになるのだもの。

愛とは無縁の母娘関係になっても仕方ないわ」


 どうして妹はそんな事まで……俺ですら初耳だ。


「だったらどうして私を可愛がってくれるのよ?!

私は憎い男の娘よ?!」

「そこがお母様の可愛らしくも歪んだ人間性ね。

……んふふ、まるでどこぞの昼ドラ……ハマったのよねえ」


 当然に湧き起こる疑問をぶつけられ……あれ、何で妹がうっとりしてるんだ。

昼ドラの意味も含めてちょっと色々わからないぞ。


 それとなく後ろに体をやったシエナの気持ちの方がわかるって、魔法呪の影響じゃないよな?

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