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21.家庭内別居の危機と学園の基本理念

『居留守を使うなんて、よほど傷つかれたのね。

お可哀想なお義姉様。

私だけ楽しんでごめんなさい。

シュア様がぜひそうしろって言うから、仕方なく……』


 あの子が夜に帰宅してから1度来たらしいけど、特等席で花火を見てたらそのまま眠ってしまって。

帰宅が遅くなったのよね。


 何かしらを勘違いしたらしいシエナはそう言いながら両手で顔を覆ってポロポロ目から水を溢していたのだけれど、惜しかったわ。


 口元がニヨニヨと笑っているのが指の隙間から見えるのよ。


『残念ね』

『ええ、シュア様もそう思って下さっていると願っているわ』


 え、孫もあなたの顔を残念に思ってたの?

アバタもエクボってやつなの?


 て、うっかり驚愕している間にすっきりしたお顔で出て行ってしまったのよね。

あの子、大丈夫かしら?

義妹を虐める義姉らしいのだけれど、ちょっぴり心配したある朝の一時だったわ。


「そのシュシュ、付加価値がついているらしいの」

「ラビがパッチワークの切れ端10枚限定に幸運もどきのおまじないをかけた方の限定シュシュ?」

「一応あの日販売したシュシュ全てだけれど、あの切れ端の10枚を使って作った素材からして高級品の限定シュシュは特にそうみたい。

あ、キャスちゃんのそのシュシュはあの限定品なんて目じゃないくらいに直接的に強い守護魔法を込めている特別製よ。

キャスちゃんの為に作ったんだから、肌身離さずこれからも持っていてくれると嬉しいわ」

「えへへ、もちろん!」


 ああ、照れ笑いするうちの子本当に可愛い。

神か。

いいえ、聖なる獣様だったわ。


 思わずテーブルにちょこんと座ってカップを抱えた白いお狐様をよしよししちゃう。


 くぅ!

愛いやつめ、愛いやつめ!

ふわふわでやわらかな白い毛並みがたまらぬではないか!

ふぉーっふぉっふぉっふぉっ!


 ……あらあらあらあら。

興奮してつい語尾があちらの世界の時代劇のお代官様のように崩れてしまったわ。


「ラビ、何だか変態爺みたいな顔になってる……」

「うふふふふふふ。

キャスちゃんがあまりに可愛いからよ」

「ラビ、今すぐ顔をもどしてくれないと今日は寝室を別にするからね」


 まあ、9つの尻尾が膨らんで、より一層のふわふわに……。


「ラビ、その変態っぽいワキワキした両手と残念な顔を今すぐやめて。

貞操の危機感で尻尾が戻らないよ」

「まあ、それはもふもふの素敵相乗効果……いえ、冗談よ。

今すぐ止めるから家庭内別居はやめて欲しいわ」


 ビクッとして姿をくらまそうとしたキャスちゃんをすぐに引き止めたわ。


「もうしない?」

「もちろんよ。

悪ノリしてしまったわ。

ごめんなさいね」

「はぁ、もういいよ。

それで?」


 キャスちゃんたら可愛らしいお顔でため息を吐くなんて、人間らしい仕草が板についてるわ。


 そうそう、学園祭では各学年クラス毎に補助金が割り当てられているの。

金額は各クラスの成績別、つまりは結局クラス別で異なるのだけれど、私のいる1年D組が1番少ないのはセオリーね。

そういう所は公平にっていう考えが無いのよ。


 貴族や富む者、つまり社会におけるヒエラルキーの上位に位置する者は学ぶ義務を負い、下位に位置する者への責任をいかにして負っていくのかを学ぶっていうのが学園の基本理念だから当然ね。


 この世界のこの国は王族を頂点にした階級制度だもの。

それに学園は王立。

あちらの世界の小説や漫画のように、学園内では身分に囚われず、皆が平等なんてわけにいはいかないわ。


 むしろ学園だからこそ実社会の身分よりも、学力差社会の風潮が濃いかもしれないわ。

お陰で王族や四公をはじめとした身分が上位の子息令嬢は馬鹿にされないように英才教育を受けた上で入学するの。


 少し前までのあの孫やお供君の私への態度でもわかる通り、落ちこぼれクラスと言われるDクラスの公女の風当たりや心ない陰口がまあまあ強いのがその証拠ね。

普通なら侯爵家より家格が上の家柄は最低でもBクラス以上、王族や四公の子息令嬢は悪くてもAクラスを求められるのよ。


 ふふふ、私はもちろん気にしていないわ。


 そういうわけで支給される補助金は4年Aクラスが1番多くて、1年Dクラスが1番少ないのよ。

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