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197.助長と危険な武器

「ならば……」


 お兄様がシエナを叱ると言いたいのでしょうけれど、私だけが窺い見えるお顔を見る限りでは……。


「話の通じない相手に正論や現実など伝えても無意味では?

既にその子の中での真実は書き換わっておりましてよ」

「なっ、やっぱり酷いのはお義姉様じゃ……」

「お黙りなさい、シエナ=ロブール」

「っ……」


 予想通り、再び口を開くシエナの言葉を、強めの口調で被せるようにして黙らせる。


 今は味方に仕損ねたお兄様と王族の第1王子がいるから黙るしかないでしょうね。


 まあまあ。

ギリギリ奥歯を噛みしめているようだけれど、歯が傷むわよ?


「あなたいつもより余裕がないのを、もう少し自覚なさいな。

あそこでずっとあなたのお顔七変化憤怒寄りを最初から見続けている、この学園のSクラス給仕おばさんと呼ばれるマリーちゃんに気づいていなかったのではなくて?」

「は?!」


 食堂の方に目をやり、やっと見られていた事に気づいたみたい。

固まったわ。


「このままだと腕っぷしの良いマリーちゃんに討ち入られてしまうとわからないのかしら?

彼女がSクラスと称されるにはそれだけの理由があるわ。

凶悪極まりないドSプレートの餌食になりたくはないでしょう?」

「……ちょっと、何言ってるの?!」


 ふふふ、慌てているわ。


 どうやら浮気症な旦那さんや恋人を持つ下町マダム達に絶大な人気を今なお誇り続ける、あのドSプレートの怖さは知っていたようね。


「あれがマリーちゃん……」

「いや……ドSプレート?

武器か?」


 王子は保険医時代から勤務していたはずなのに、マリーちゃんを知らなかったのかしら?


 お兄様はドSプレートまでは知らなかったようね。

見た目の素朴さからは想像がつかない無駄に地味な威力のある危険な武器だから、取り扱い注意なのよ。


 そうしてお兄様に改めて向き直るわ。


「けれどね、お兄様。

これまで野放しになさっていたどころか、そうなるように増長させた原因の一端を担っていたのは、どなたのどのような言動かお考えになって?

責任はこの子1人だけのものではございませんでしょう?」

「……すまない。

そうだったな」


 私の言葉にシュンと項垂れる男性陣。


 あらあら、どうしてか王子まで?


 ……ああ、そうね。

私が教師陣にお願いして無礼なだけならば基本はスルーで良いとしていたけれど、シエナを増長させた最たる影響を与えたのは彼の異母弟だったわ。


 でも異母兄の王子がそんな風になると、基本的に聞き流して相手にしなかった義姉()にも責任はあるように思えてくるから、やめてくれないかしら。


 一応聖獣ちゃん達と愉快な仲間達にお願いして、シエナが私以外の誰かを標的にした時だけはお知らせしてもらうようになっていたのよ。

どうしてか他の人達にも時々適用されていて、学園パトロールをする羽目になった事もあったけれど。


 でもこの子に関しては私以外に何かする事はなかったようだから、結局行き着く所まで行ってこうなってしまったのよね。


 それよりも、とそっと後ろを軽く振り返ってガラスドアを視界に入れてみる。


 よし!

マリーちゃんのお顔が憤怒から満足気ね!


 半泣き状態の見習い君、よくぞ止めてくれていたわ!

後で彼にもおすそ分け……しましょう?


 はっ!

ずっと行商人スタイルなのに重さを感じさせない直立不動だったわ?!

荷物の重さを変えているって気づかれていないかしら?!


 物の重力操作って、魔力はあまり使わない割りに繊細なコントロールが必要だから、私の表向きの能力では扱えきれない魔法よ。


 まずいわ。

荷物の中身を検分される前にとんずらしなくっちゃ!


「それではお2人共、シエナの事をお願い……」

「後からすぐに向かうから、待っていてくれないか?」


 さっさとこの場を離れようとしたのに、成り行きを見守っていた王子に話しかけられてしまう。


 どうやら今度言葉を遮られるのは私の番だったみたいね。


「………………食堂で用事を済ませている間でしたら?

この後、学園の外にも用がございますの。

時間があるわけではありませんわ」


 もちろん美人さんと、ついでに厳ついオジサンにお肉とラップの差し入れよ。

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