表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《書籍化、コミカライズ》稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

185/699

177.卵〜シエナside

『ごめんな、シエナ。

俺自身が未熟だったせいで、色々と勘違いしていたんだ。

お前の義姉はお前の言っていた通り、本当はそこまで性根が腐った女じゃなかった。

もっとちゃんと俺がお前の言葉を素直に受け止めていれば、こんな風に(こじ)れる事もなかったんだ』


 そもそも何をどう聞いたらアイツが性根が腐ってない女に聞こえたのよ!

裏の意図を汲み続けなさいよ、この間抜け!


 だからその後シュア様の学友で側近だと豪語していたエンリケ=ニルティを呼び出して泣きついたのに……。


 ……なのにあの役立たず!!


 せっかく小さい頃からの私の()()にも手伝ってもらって、転移陣を書き換えてもらったのに!


「どうしてアイツが無傷で……。

せめてマイティカーナ=トワイラのように治癒魔法でも癒せないくらいの、致命的な傷を残して帰っていたら……」


 結局彼女は亡くなったけれど、私を可愛がってくれていたのも確かよ。


 ペチュリム=ルーニャックも気が弱くて不安はあったけど、ちゃんと決めた役割は果たした。

アイツのグループのむさ苦しいリーダーが正しくクジを引いたもの。


 だからあの髪と瞳の色がよく似た腰巾着2人にまでは怒りも湧かない。


「これは随分荒れたわね」


 不意に可愛らしい少女の声が後ろから聞こえた。


 ハッとして振り向けば、私より少し低い背丈にローブを目深に被っている小柄な体躯。

見えているのは形の良い唇だけ。


 久しぶりに会えたからか、少し気分が浮上する。


 だって彼女こそが私を平民から本来の立場に戻してくれた立役者で、恩人。

そして何より大事で誰よりも私を理解してくれている、唯一心を許せる親友だもの。


「ねえ、いっそジャビがアイツを殺してよ」

「無理よ。

私は直接的に手を出せないわ。

そういう決まりなの。

それより物に当たるのはいいけど、怪我をするのは駄目」


 まだ怒りがくすぶっているせいで、答えが解っていても言ってしまう。


 予想通りの返答に憮然としたけど、ジャビはそれを気にするでもなく足首の傷に細くて形の良い指が触れる。


 するとすぐに癒えて消えた。


「ありがとう」


 ジャビにはいつも素直にお礼が言えるから不思議ね。


「どういたしまして。

あら、口も?」


 そう言うとひんやりした細い指が私の頬を包んで、口の中に感じていた血の味も消えた。


「よくわかったわね」


 思わず感心する。


 ジャビという名前と、昔から私の望みを叶えてくれる良き理解者、そして空間転移も治癒魔法も他の魔法もお手の物なとんでも魔法師だという事以外は彼女の事を何も知らない。

その素顔さえも。


 けれどそれでいいわ。

小さな頃から私の望みを叶え続けてくれるのは彼女だけ。

私にはその事実こそが何より重要で、それ以外は些事でしかないわ。


「だってシエナは私の大事な子だもの。

それより良い道具になりそうな物を見つけたのよ。

手を出してみて」

「こう?」


 両手の平を上にして差し出すと、ポン、と真っ白な卵を乗せられた。

どこから出てきたのかしら?

思ったより軽いわ。


「随分大きな卵ね。

私の顔くらいある」

「聖獣になれるかもしれない卵よ。

もし上手く孵化させたら王家への交渉に使えるし、きっと皆が今の君の地位を正しいと再認識するわ」

「そうなのね!

嬉しい!

何の卵なの?

温めれば良いのかしら?」


 ほら、やっぱり!

ジャビはいつでも私に最善の方法を与えてくれる!


「何かは生まれてからのお楽しみね。

温める必要はないの。

毎朝毎晩、時間が許す限り君の魔力を全力で注ぎ続けるといいわ。

孵化するかどうかは君次第だけど、これから夏休みでその卵との時間を増やせるでしょう?

君こそが真の公女だもの。

絶対できるわ」

「そう言ってくれるのは今ではもうジャビだけよ」

「だったら沢山言ってあげる。

もし孵化したらこれをすぐに飲みこませて。

私の魔力を込めた魔石。

小さいから飲みこむのは簡単よ。

きっと従順な子になる。

じゃあ、またね」

「ええ、また」


 彼女はいつも突然現れて、こうして突然いなくなるの。

たまにはお喋りに付き合ってもらいたいのだけれど、それは叶わなかったわ。


 気づけば叩き割った食器も元に戻ってた。

ジャビがやったのね。


 お陰で気分も良くなったし、早く帰って卵に魔力を注がなくちゃ。


 卵の周りに幻覚魔法をかけて、念の為誰もいないのも確認してから、来た時とは比べ物にならない程足取りも軽く部屋を後にした。

いつもご覧いただきありがとうございます。

ブックマーク、評価、感想、レビューはありがたく頂戴しております。

誤字脱字のご報告もありがたくm(_ _)m


シエナsideこれにて終わりです。

当初は悲劇のヒロイン症候群に陥ってるヒドインくらいの、勉強だけはそれなりにできるプライドだけのお嬢様なつもりだったのに……こんな子で良いのかと我ながら引いてたり(^_^;)

次回からはラビアンジェ視点に戻ります。

まずは彼女の今世のしがらみと人間関係を整理しがてら話を進めていく……はず。

今後とも温い目でお付き合い下さると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 用済みだから孵化したナニかに喰わせるつもりとしか…( ´-ω-)まあ、哀しむヤツいなさそうだが。
こらだめだ、悪魔じゃん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ