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115.希望の火と怖気と謁見終了〜ジョシュアside

「では何故宰相が隣国との協定に抵触してでも学園長に話したと思う?」

「・・・・私にも・・・・話してくれています」


 なけなしの、必要のないプライドで返答する。


 父上は再びため息を吐いた。


「お前などたまたまこの場にいた故、耳に入った程度の事。

そろそろ身の程を知れ」

「くっ・・・・」


 無表情に淡々と話す父上の言葉に、存在を軽んじられているようで更に心が痛み、うつむく。


 しかし・・・・私はあの婚約者にそれ以上の事をして貶めてきたのだと、どこか冷静な自分も感じる。


「そもそもお前に人命や国の政に関わるような権限を与えた事すらないであろう。

学園での言動は全て聞き及んでいる」


 思わずギクリと身じろぎする。


「ふむ、わかっておるようだ。

それが今のお前への評価だ。

故にお前には王子としての()()()の権限しか与えておらぬ。

この場にお前はいてもいなくてもどうでも良い。

それで、何故学園長に話したかわかるか?」


 学園での言動・・・・最低限の権限・・・・。


 いつでも確認する事ができたあの婚約者の報告書すら読まず、決めつけて怪我まで負わせた事は、ただ何も、苦言すらも呈される事がなかっただけだと言外に告げられた。


 それが何を意味するか・・・・頭が真っ白になり、もう何も考えられない。


 カタカタと小さく体を震わせる。


「この程度で答えられぬようになるか。

まあ良い。

学園から救助を出さぬようする為だ。

此度の件は学園側の不手際。

それを払拭しようと救助隊を教師で編成して向かわせかねん。

下手に救助を出したところで誰も出られぬようになる故、先んじて話したのだ。

学園長はわかっていような」

「もちろんにございます。

なれど彼らが助かる方法は皆無でございますかな?

救助を向かわせられぬのはお聞きしましたが、陛下も宰相も1度として彼らが助からぬとは口にされておりませぬが」


 父上はその言葉にわずかばかり表情を崩す。


「ほう、気づいておったか。

良策とは言えぬし、あくまで中の者達が気づくかどうか。

この事はそれこそ隣国との協定に引っかかる故、黙っておった。

宰相」

「は。

王子はどうされますか」

「どうせ何もできぬ。

捨て置け」


 そうして宰相の話が耳に入るも、半ば呆然と聞きながしていた。


 しかし全ての話が終わった時、私の中に希望の火が灯る。


 そしてそんな私を父上は再び蹴落とした。


「さて、昨年の卒業生からDクラスが譲り受けた資料があるそうだな」

「・・・・はい」

「そこに書かれてある事。

お前はそれをわが国の第2王子の婚約者であり、四大公爵家の1つ、ロブール公爵家の正式な血統に連なる公女に対して行うと危惧するか?」

「それは・・・・はい」


 一瞬誤魔化しそうになるも、学園での報告を受けているんだったと思い直す。


「何故だ?

むしろ四大公爵家の公子がいるなら、身を挺してそなたの婚約者を守らねばならないはず。

仮にもお前はその公子を側近にと考えたのであろう?

国の決めたこの国の王子の婚約者だ。

お前が公女を軽んじるならば臣下としてそれを諌めるべきだとその者は何故思わぬ?

報告されるのはそれとは正反対の言動ばかりのようだが?

ヘインズ=アッシェ。

あの者もそうだな」


 すっと父上の目が細くなる。

1番恐れていた事が起こる。


「申し訳ありません。

全てが私の責任です。

ヘインズに至っては既に改心しております。

エンリケはまだ・・・・」

「そうか。

お前と公女が入学してから今年で4年目と2年目ともなるが、まだその程度の側近しかおらぬのか。

ならばもし公子達がそうせず公女を軽んじ、その資料の通りに害をなすなら、それはお前の責。

もちろん、公子のグループで追従する者がいるとするならそれもまたお前の責。

むしろ生還する者がおらぬ方がお前にとってもアッシェ家の3男にとっても都合がよいのかもしれぬな」

「な、に・・・・」


 思わず顔を上げ、怖気が走る。


 父であるはずの目の前の男は、何の温かみもない、ただ自分を検分するだけの底冷えするような目を向けていた。


 これが、この国の王・・・・。


「良く考えよ。

話は終いだ。

宰相、下がらせよ」

「は」


 宰相が短く了承を示し、促されるままに学園長と共に退出するしかなかった。

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― 新着の感想 ―
ロブール公女は試金石の役目を担っていたのか。 はじめは第二王子妃候補だったのが逃げ続けたことにより使える人間を見極める道具になったんだね。 第二王子自体が見限られる一歩手前だけど。
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