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100.下級貴族の次男坊と祖母ちゃんの鼻

「いつまで役に立つかわからない魔獣避けと食料が必要だと言うなら、置いて行く。

俺はこのグループのリーダーだが、お前達のグループのリーダーではないから、これ以上の事は知らない」


 うちのリーダーがハッキリキッパリ宣言したわ。


「下級貴族の分際で、この森から出た後でどうなるかわかっているのか」


 それに対して脅しのように凄む家格君。

けれど全くの見当違いだと気づいていないようね。


「心配してくれなくて結構だ。

それに下級貴族の次男坊をなめるなよ。

俺は将来冒険者となるから、貴族としてのしがらみなど、そもそも関係しない」

「お前のいる領地がどうなるか……」

「それこそ意味がない脅しだな」


 ラルフ君がため息を吐いて、どうでも良さそうにしながらも説明をし始めたわ。


「俺の親が治める領地は昨年の卒業生が発表した塩害地だ。

世間の注目を集め、大きな商会に貴族平民共に人気のあるデザイナー、冒険者や他領も絡み、国王陛下すらもその研究の今後に期待している領地だと知っているか?

その言葉が出るという事は、Dクラスの研究だからと甘く見て内容など大して頭に入っていないのだろうが、四大公爵家とはいえ、替えの利く次男のお前の一存でどうにかできる領地ではなくなっているんだ」

「何だと?!」


 再び怒鳴られても、ラルフ君はどこ吹く風ね。

冷静だからこそ家格君も少しは聞く耳を持てているのかしら?

ひとまず殺気は消えたわ。


「落ち着いたらどうだ。

俺にはお前達への善意もないが、悪意もない。

事実しか告げていないだろう。

もしそれをすれば、ニルティ公爵家の方が世論に糾弾されるのは目に見えている事くらいは、もう理解できているんじゃないのか。

四大公爵家は確かに貴族に権勢を振るう事ができる大貴族だが、下級貴族や平民が大きく動く時、その非難を止められるか?」

「はっ、大げさな事を言うな!

たかが1つの領地がそこまで影響を与えるはずがないだろう!」


 あらあら、家格君のお顔に焦燥が見え始めたわね?


「与えるさ。

あの領地はな、1度は周辺の領地共々教会に見捨てられ、教会を動かせなかった国にも不信感を持つ者が増えている。

それだけあの塩害で起きた被害は甚大だったが、他領からすれば明日は我が身だ。

冒険者として国内を動いていれば誰でも気づく。

直接的に被害のあったあの周辺の領地だけじゃなく、王都も含めて国への少なからずの不信という小さなさざ波が起きているんだ」

「そんなもの、いずれは薄れるに決まっている」


 そうね、家格君の言う通りただの不満なら、或いは誰も煽る事がなければ薄れるでしょうね。


「この国の貧困に喘ぐ下級貴族や平民が占める国民の割合がどれくらいだと思っている。

昔、貴族相手に裁判を起こしたリュンヌォンブル商会との決着がどうついたか知っているか。

仮にも公子だというなら多少なりとも耳にしてはいないか?」

「いくら大きな商会とはいえ、会長は平民だろう。

貴族との裁判なら貴族が勝つに……」

「知らなかったようだな。

世論が動いて最後は他ならぬ他の貴族達もが商会側に有利に動いた。

結果その貴族は商会へ多額の示談金を払って王都から消えた」


 そうそう、あの時会長にどう煽るのが効果的なのかをレクチャーしたの、私なの。

会長とのお付き合いも随分と長いのよ。


 会長もまだ貴族を相手にするならどう動くべきかわかっていなかった頃だし、あの貴族は手広く商売をしていたから正面切って喧嘩なんてしても分が悪かったわ。


 貴族を相手にするならそれ用の戦い方をしないと、裁判なんかそもそも受けつけずに門前払いよ。

特にあの時はまだあの商会も今よりは小さかったから尚さらね。


 戦わずして勝つ。

これ、大事。


 家格君だけじゃなく金髪組も目が大きくなったから、きっとこの3人は知らなかったのね。


 お孫ちゃんは神妙なお顔だから知っていたのでしょうね。

きっとラルフ君が言わんとする事もちゃんと理解しているわ。


 この子うちの孫なの!

前々世の私のだけど。

さすがでしょ!

ふふふふん、祖母ちゃんは鼻高々よ!

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