夜闇の神と方法
神子に神が降りたと聞いて、王女は絶句する。だがすぐに、心配そうな表情をした。
「それでユーネフィアは、いえ……神子は大丈夫なの?」
「はい。ですが、神は王女マリアナ様を連れてきてほしいと……」
宰相の言葉を聞いて、王女マリアナは扉の方へ歩き出す。
「神がお望みなのでしたら、向かいましょう」
宰相は慌てて、「承りました。こちらです」と先立って案内する。
王女マリアナと宰相は、紋様が刻まれた柱が両側に並び立つ、通路を足早に歩いていた。
やがて、目の前に扉が近付くと、王女マリアナが内心慌てつつも、落ち着きを持って開けていく。
すると、その空間には、天井の硝子の所から日が差しており、室内を照らしていた。
中央には石造りの祭壇のような場があって、十七歳くらいの女の子が立っていた。
白を基調としたローブを纏って、おっとりした目元が印象の女の子だった。
王女マリアナは、その女の子に近付いていくと、声を掛ける。
「貴方が神子に降りた神なのですか? 私にどのようなご用でしょうか?」
すると、神子ユーネフィアの口から、少年らしき声色が発せられる。
「そうさ、ボクは夜闇の神……キミがこの国の王女で合ってるかな?」
「はい、私がこの国の王女、マリアナ・エイジェリンで合っています。それで、夜闇の神がどのような用件で……」
夜闇の神は、答える。「率直に言うよ。世界に掛けられている闇喰いの呪いを解く方法があるのさ」
王女マリアナは、即座に問う。
「何故こうなったのかも分からない呪いをですか?」
「そうだよ、方法は簡単さ。この祭壇で剣に神の力を宿すのさ。陽光神の力をね。どうする?」
王女マリアナは、暫し思案してから、口を開く。
「只、それには危険が伴う筈です。違いますか? 恐らく、神子に陽光神を無理に降ろすという方法の筈です。この国のこの祭壇は、大地の神を降ろすためのものですから……」
夜闇の神は「その通り、良く分かったね。ちなみに、ボクがこの神子の身体を借りるのは大丈夫だよ。世界への闇喰いの呪いで干渉しやすくなっているからね。それはそうと、どうする?」と説明した後で、問い掛けた。
「どうする? と言われましても……今すぐは決めかねます。一日、時間を下さい」
「仕方ないね。良いよ、一日待とうじゃないか。明日、また会おう」
すると、神子の雰囲気が元に戻る。
「あれ……? 王女マリアナ様? わたしは何をしていたのですか?」
神子ユーネフィアは、手を口元に持ってきて不思議がる。
王女マリアナは、口を紡ぐが、暫くした後に重々しく話していった。夜闇の神が話したことを。
神子ユーネフィアの反応は意外なものだった。
「そうだったのですか……でもわたしは」
そこで、王女マリアナに近付くと、そっと抱き締める。
「どちらを選んでも責めたりしませんよ。マリアナ様の決めたことなら」
王女マリアナは、瞳を潤ませた。
その時、宰相のファルグスは呟く。
「さて……どうしたものか……」白い髭を撫でながら、何かを考えているようだった。