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-5-

届かない想いは


どこに…?



教室に入って席に着くと机に影ができた。

顔を上げると見知った顔があった。

「瑞希、おはよ」

クラスで一番仲の良い黒山瑞希くろやま みきがいた。

「おはよう。今日は寝れた?」

「あんまり…かな」

瑞希は桜の変化に気づいていた。理由を聞かないのは瑞希の優しさだった。

桜はその優しさがありがたいと思っている。

「また?…最近顔色悪いわよ」

「寝てないからかな?大丈夫、体はダルいとかはないから」

桜が笑うが、その笑顔は無理をしているようにしか見えなかった。

「でも…」

「おい!事件だ!!」

瑞希言いかけた時、クラスの男子が叫びながら入ってきた。

「なんだよ、大声出して」

「それがよ!B組の大西っていんじゃん?」

「大西…?」

男子の言葉に瑞希が反応した。桜は首を傾げる。

「瑞希、知ってるの?」

「ああ、うん。小学生の時同じクラスだったの。中学・高校も色々相談に乗ってたの」

「へえ…」

再び男子の方を見る。今だに興奮したまま説明している。

「その大西がよ、昨日の夜、道路に倒れてるのが見つかったんだ!」

ザワッとクラスがどよめいた。

「でも特に異常がなかったから今日来てんだけど、さっきたまたまB組の奴と話してたら

大西がダチのとこ来て火室ひむろの事を指さしたんだ」

「火室を?」

「そう!で、『あの子転校生か?』って聞いたんだ!」

ざわめきが大きくなった。B組の火室京子ひむろきょうこは“上高のマドンナ”と呼ばれるほどのアイドルだ。

桜も噂は聞いていた。

「B組の火室さんって瑞希の親友よね?…瑞希?」

瑞希は目を大きくして固まっていた。桜は怪訝な顔をして瑞希の腕を揺らした。

「瑞希!瑞希ってば!!」

瑞希はハッとして桜を見る。

「どうしたの?」

「あ…いや」

明らかに困惑の色を出している。

「瑞希?」

「…さっき、相談に乗ってたって言ったわよね?」

瑞希の言葉に頷く。瑞希はキュッと口を結んでからゆっくり開いた。

「それ…京子のことだったの」

「え…?」

ため息をつく瑞希に驚きを隠せない。

「だってさっき転校生って…」

「そんなはずないわ。私達と同じ学校だったし、3人で仲良かったもの。

それに大西は京子のことが好きだったの」

桜は信じられないという顔をした。

「それ、大西君は火室さんのことを…忘れちゃったってこと…?」

「…みたい、ね」

瑞希は前髪をクシュっとした。桜は呆然としていた。


放課後、桜は図書館を出た。

そして今日のことを思い出す。

記憶喪失、しかも火室京子限定の記憶喪失になってしまった大西。

その話はすぐに学年全体に広がった。心配した瑞希が京子の様子を見に行くと、

彼女は今にも泣きそうな顔をしていたらしい。

「(どうして記憶喪失なんて…)」

『大西、昨日京子に告白したんだって。でも京子は断った』

ふと、お昼休みの瑞希の言葉を思い出す。

「(フラれたからって記憶が…?そんなバカな)」

ふう、と一息つく。その時、後ろに人の気配がした。

振り返ると図書室でよく見る生徒がいた。

「あの…楠木さんですよね?」

「…はい」

桜は内心参った、と思った。こういう雰囲気は絶対に…。

「好きです」

「(やっぱり)」

桜も告白されることが多い。なので告白の雰囲気がわかるようになったのだ。

そして桜は告白されるのが嫌だった。

「…気持ちは嬉しいですけど、ごめんなさい」

よく知らない人に告白されてもこう答えるしかなく、尚且つ相手を傷つけてしまうのが嫌だった。

「そ、そうですよね。すみません急に」

「いえ…」

「じゃあ、これで…」

生徒は桜に背中を向けて歩き出した。桜はため息をついた。

「本当…困る」

自分を想ってくれたのはありがたい。

けれど、付き合う云々はお断りだ。

好きでもない人間と付き合える程、自分はいい人間ではない。

『だって有名人じゃん。“1年C組の楠木桜は女神”って』

水谷が言っていた言葉を思い出す。再びため息。

「女神だったらこんなことは考えないわよ」

そう放たれた呟きは誰の耳に入ることなく消えた。


-届かぬ想いはただ彷徨う-

全然更新してなくてすみません…。

話自体はできてるのに、PC変わったらデータ移行ができず、地道に書き換えております…。

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