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ー3ー

記憶にない"夢の光景”


自分自身に疑問を持たせる



真夜中、世に言う丑の刻時。桜はベットから跳ね起きた。

その顔は驚きで満ちていて、体中汗で濡れていた。

「…な、に今の」

肩で息をしながらポツリと呟いた。

昼間、階段で落ちそうになったり、日直を全て一人でやった疲れが出たので早く寝た。

そしてまた夢を見たのだが…。

「私、知らない…」

その内容に桜は心当たりがなかったのだ。


『お父さんとお母さん、まだかなあ…』

小学生の桜はベットでゴロゴロしながら呟いた。

机の上には明日の遊園地に来ていく可愛い服が畳まれて置かれている。

『早く帰ってこないかな』

たまに夜に出かける両親。いつもは寝てしまうが、今日はふと

起きて「お帰りなさい」と言ってあげようと思った。

きっと二人は夜遅くまで起きていた事に怒りながらも笑顔で「ただいま」と言うだろう。

そう思うと目が冴えてくる。

時計を見ると長針と短針が重なる数分前だった。

『ちょっとぐらい、いいかな』

桜はベットから起きてクローゼットに隠してある靴を取り出した。

たまに夜、部屋を抜け出して”夜の散歩”をしていたのだ。

いつものようにパーカーを羽織り、窓から飛び降りた。

普通の小学生なら大怪我では済まないが、身体能力がよく、鍛えている桜は綺麗に着地した。

『どこ行こうかな〜♪』

桜は鼻歌を歌いながら歩き出した。

桜がたどり着いたのは近くの公園。ここで星を見るのが大好きだった。

いつものように遊び場を通り抜けようとした時。

キィンッと音がした。

『っ!?』

ビクッと肩を震わせて足を止めた。

周りには誰もいない。

『な、何の音?』

桜は泣きそうになりながらキョロキョロと目を動かす。

キィンッと音が再びしたのと同時にドサッと何かが倒れる音がした。

『おい!しっかりしろ!』

緊迫した声が聞こえた。そしてその声はよく知る声だった。

『お父さん…?』

そっと垣根の間から音がする方を覗き込む。すると父親と倒れている母親の姿。

『お母さん!!』

思わず飛び出して母親のもとへ駆け寄った。


それが両親の運命を決めると知らずに


『桜!?』

突然の娘の登場に父親は驚く。そして倒れた母親も弱々しく顔を上げた。

『な…んで』

『お母さん!大丈夫!?』

桜は泣きながら母親に縋り付く。母親は桜に話しかける。

『桜…とにかくここから、離れ…なさい』

『いや!お母さんが死んじゃう!』

『行きなさい!!』

普段は温厚な母親の怒鳴り声にビクッとなる。

そして来た道を戻ろうとした時。

[ニガサナイ…!]

人間とは思えない声に驚いて振り向くと牙を見せ、ツノと人間ではあり得ない鋭い爪を生やしたモノが飛びかかってきた。

『…!!』

恐怖で動けない。桜は座り込む。

『桜!』

父親の姿が見えたと思った瞬間。

ザシュッという音と共に赤い血が飛び散るのが見えた。

ゆっくり倒れる父親、再び襲いかかって来るモノ、叫ぶ母親。

『(うそ…全部、うそ)』

現実を受け入れられない自分、なんとか立ち上がり桜を庇う母親。

そして…。

[シネエエエエエ!!]

ドスッという音とゴホッと血を吐き出す母親。頬に感じる生暖かい血。

ズルズルと落ちていく母親。下を見れば血の海と倒れている父親と母親。

二人に生気を感じない。

『うそ…うそ』

うわごとのように呟く桜にモノは襲い掛かろうとした。

[ウギャアアアアアア!!]

ボッとオレンジ色の炎に包まれながら叫び、炎が消えると普通の人間が倒れていた。

『大丈夫か!?』

誰かが駆け寄ってきたが、桜は動かなくなった両親を見つめていた。

『うそ、うそ、うそだーーーー!!』

そう叫んで桜は倒れた。


「私…が?」

桜は片目を覆って思い出そうとしている。

「お母さんが倒れて…お父さんが庇って…?」

しかし、桜には全くその記憶が無いのだ。

「だってお母さん達は事故で死んだって…お兄ちゃんも同じ車に乗ってたって…」

自分が忠吉の両親に聞いたのは両親と兄の事故死。葬式だってやった。

自分の記憶と夢が一致しないことに桜は戸惑いを隠せない。

「どういうこと…?私が…違うの?」

布団をギュッと握った。


「思い出したか…」

桜の部屋の前で聞いていた忠吉はポツリと呟いて自分の部屋に戻った。

その格好はいつもの忠吉ではなく、黒い服を纏っていた。

まるで闇に紛れ込むかのような黒い服を…。


ー偽りなのは夢か記憶かー

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