プロローグ
人は人を愛する
自分の存在意義を見出す為に
自分を必要とされたいが為に
ーーーーー
満月の夜。
日付が変わる頃。
とある路地裏で少女は追い詰められていた。
いや、正しくはよく知る人物と同じ姿をした知らないモノが道を塞いだ。
「ど…したの?こんな、夜中に」
牙を見せ、角と人間ではありえない鋭い爪を生やし、
よく知るクラスメイトに似た“ソレ”に話かけるが、返事はなく呼吸の音がする。
「(…やばい)」
少女は生唾を飲んだ。そして一歩後に引いた時。
[オ…マエハ、オレノモノ…]
「え?」
[ダレ…ニモ…ワ、タサナ…イ]
そう言った瞬間に“ソレ”は少女に飛び掛かった。
「い、いやああーーーー!!!」
覚悟をして目を瞑った時、目の前に人が現れた。
そしてその人物は手に持っていた刀を振り下ろした。
[ウギャアアアア!!]
襲いかかってきた”ソレ”は苦しそうにもがいた。
「悪りぃな。その感情…忘れてくれ」
そう言う声は悲しそうだった。
「(何が、起こったの…?)」
少女はその背中を見つめながらヘタリと座り込んだ。
[ヴ…ガ…ジャマハ…サセ、ナイ]
その言葉に男は殺気を出す。
[オレノ…モ…ガァアアアアア!!]
襲い掛かろうとした時、オレンジ色の炎が“ソレ”を包み込んだ。
“ソレ”はもがきながら地面に倒れ込む。
段々と炎が小さくなっていくのと同時に角や牙、爪が消えていった。
炎が消えた時には自分が知るクラスメイトだった。
「な…なんだったの?」
よく見ると、さっきまでいた男もいなくなっていた。
呆然としていると、クラスメイトが起きた。
「ううん…ここは…」
「!起きた!?大丈夫?」
そう聞くと、クラスメイトは少女を見てキョトンとする。
「?どうし」
「あ、大丈夫です!ご迷惑かけてすみません!」
「え…?」
クラスメイトの言葉に少女は思考を止めた。
路地裏そばのビルの上に3つの人影がいた。
「…また、消してしまった」
真ん中の影が呟く。両側の影は何も言わなかった。
ただ満月は静かに輝いていた。
全てを見届けるように…。
ーーーーー
人は賢いがゆえに必要ないことまで考える
人は賢いがゆえに必要ない感情まで芽生えていく
人は賢いがゆえに【望み】を叶えようとする
たとえそれが愛する人を傷つけたとしても
人は悲しき生き物がゆえに人を愛する
それゆえに人は【鬼】と化す
人はそれをこう呼ぶ
般鬼と