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6話 対人距離感がくるっとる!

「さあ着きました! 古城を改築したみたいで良い雰囲気ですよ! もしかしたら人気の宿なのかも。ああ、どうか部屋が空いてますように。今日のあたしたちって、持ってると思うんで、予約なしでもきっといけるはずです!」


「本当に入るのか?」


 恐る恐る訊いた途端、少女の身体が大きく揺れた。


 胸もここぞとばかりに大揺れだ。


「ンクシュンッ! ディクシッ! ディクシッ! は、早くお風呂で温まりましょうよドルテさん!」


「お、おおおおおう!」


 これはあくまで緊急避難的な措置なのだ。


 元気に明るく振る舞ってはいるものの、クレスの手は氷のように冷たかった。


 彼女を休ませねばならない。


 二人でなけなしの所持金を全額フロントに前払いして、俺たちはようやく雨風をしのげる場所の確保に成功した。


 男女がとある共通の目的をもって利用する施設――逢い引き宿も宿には違いないのである。





 フロントで鍵を渡されて部屋に入る。


 甘いココナッツのような香りが鼻孔をかすめた。


 照明は落ち着いた光量だが、薄桃色だ。


 部屋には二人がけのソファーとローテーブル。奥にクイーンサイズのベッドがあった。マクラが二つ並んでいる。


 壁の一面を覆い尽くすように鏡が張られていた。


「わああ! なんか可愛い色の照明ですね! 結構綺麗な感じだし当たりじゃないですか?」


「冒険者宿よりかなり豪華な作りだが、正直初めてなんで俺も善し悪しが判断できん」


 俺の腕を抱くようにして二の腕に大ぶりな胸の谷間に押しつけ、挟むようにしながらクレスは顔を上げた。


 うっ……濡れているからか彼女のぴっちりした服のせいか……しっとりした柔らかさが伝わってくる。


「なにかと比較しなくってもいいんですよ。今、感じたことがすべてですって」


 俺が感じているのは誰かさんの胸の柔らかさだけだよ! もう部屋の内装とか雰囲気とか、頭の中からぶっ飛んでいっちまったよ!


 い、いかん。冷静になれ。


「奥に扉がありますよ? ちょっと偵察してきますね」


 ウサギが跳ねるようにクレスは扉を開くと「きゃああああ!」と悲鳴を上げた。


「だ、大丈夫かクレス!」


 駆け寄ると少女がプルプルと肩を震えさせて振り返る。


「み、見てください! 大きな浴槽! これ、一緒にお風呂入れますって!」


 言いながら目の前で少女はアームガードとすね当てを外した。


 そして――


「ほら、風邪引く前にお風呂入っちゃいましょう!」


 俺の目の前でぴっちりとした服を、ずるんと剥くように一気に脱ぐ。


 水蜜桃がぷるんとみずみずしい果肉のように飛び出した。


 ツンと上向きな先端はほんのり桜色をしている。


 適度に引き締まった腹筋とくびれたウエストのさらに下には――


 これ以上はやばい。


「お、おい脱ぐなら脱ぐって言え! あと、先にシャワー浴びてこいよ俺は外で待ってるから」


 いや違うんだ。その台詞は誤解を招く。ああもう、俺、さっきから何言ってんだよ。


 こんなんだから童貞って言われるんだちくしょう。


 顔を手で覆い、少女に背を向けその場でしゃがみ込む。


 なにか別の事を考えよう。


 文明は川沿いに発展する。耕作に適しており船を使った運輸にも河川は大活躍である。治水によって氾濫を防ぎその恩恵を以下略。


 その一方で、大きな河川が近くにあるわけでもない辺境都市ラディアは、古代魔導文明の遺跡を再利用して栄えた町だった。


 文明の利器が発達しまくっているのである。


 蛇口をひねればお湯が出た。


 魔法万歳。魔導器万歳……。


 クレスがこちらにやってきて、しゃがんだままの俺の頭の上にふよんと二つ、柔らかいものが乗っかった。


 あああああっ! こいつの対人距離感どうなってんのおおおおおッ!

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