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36話 復讐完了!

 残すは重戦士グスタフだけだ。


「な、なぁドルテ。お前さんさ、今、金はあるんだろ? 教会で腕を再生魔法で治したいんだが……ちょっと立て替えてくれンか。後衛のお前さんを守る盾役は必要だろ?」


 こいつもこいつで立場も空気も読めない男だったようだ。


 クレスがずいっと前に出た。


「ドルテさんは、わたしが守るから大丈夫です!」


「なーお嬢ちゃん。ちょっとは腕っ節に自信があるようだがうおおわああああああ!」


 クレスが「握手しましょう」と右腕を差し出し、グスタフの手をとるとブンブンと上下に揺すった。


 男の巨体が軽々と、天井と床を往復する。


「あれ? 弱くないですか?」


「わかった! 悪かった! もうやめてくれぇえええ!」


「クレス。それくらいで充分だ」


 脳筋少女はグスタフをぽいっと投げ捨てた。


 俺の前に、かつて俺を捨てた連中が全員ひざまずく景色は壮観だ。


 復讐するつもりなんてなかったのに、帰ってこなければこうはならなかったろう。


 キジも鳴かねばなんとやら。


 俺は連中に告げた。


「童貞陰キャ魔導士のくせに指示厨だから追放? とかふざけんな。今更『やっぱ戻ってきてリーダーの座譲るから』とか言われても、慕ってくれる最強女子と組んだからもう遅い」


 言いたいことを言ってやったらスッキリした。


 復讐はむなしいって? いやいや、ため込んでおくよりもやった方がスッキリするぞ。


 胸がすっと軽くなったところで――


「なにやら騒がしいと思ったら、なるほど君らかね」


 ギルドの上層階から騒ぎを聞きつけて、壮年の支部長があごひげを撫でつつ階段を降りてきた。


 掲示板前の状況を一目みて、おおよそ察してくれたようだ。


「移籍したはずのジェイド君たちだね。悪いがうちでは引き取れないな。それと、王都のギルド本部から問い合わせが来ていてね。君らを保護しておいて欲しいとのことだよ」


 ジェイドが顔を上げた。


「ほ、保護って……こ、ここで! ラディアでもう一度一からやりなおさせてくれよ!」


「もちろんだとも。ラディアのギルドはいつでも君らを歓迎するよ。その背負った名声値のマイナスを完済したらね」


 支部長の言葉は優しげだが、目は笑っていなかった。


 ジェイドが支部長に泣きつく。


「だったら上の連中と組ませてくれ! こっちは元トップ10なんだ! 美味い仕事をこなして名声値をすぐに戻してみせるから!」


 支部長が周囲をぐるりと見渡した。


「ジェイド君と組みたいという者はいるかね?」


 誰も手を上げるものはいない。


「こ、こんな掲示板頼みの下級冒険者じゃなくてトップ3を紹介してくれよ! 支部長あんたなら出来るだろう!」


 支部長はため息交じりにギルド職員に目配せをした。


 すぐにギルドの衛兵が十人単位でやってきて、ジェイドたちを取り囲む。


「うそ……だろ……」


 唖然とするジェイドに支部長は告げた。


「君たちのこれからの冒険は、炭鉱や王都の城壁修繕といった単純労役になるだろう。贅沢はできないが、生きていく分には充分だし、なにより安全な任務だ」


「い、いやだ! いやだいやだいやだあああああ!」


 ジェイドが絶叫した。


「アタシだってそんな仕事したくないわよ! ジェイド! 全部アンタのせいだからね!」


 ベラドンナがジェイドにくってかかる。


「ぼ、ボクは回復魔法も使えますしお役に立ちますから、誰かパーティーに入れてください!」


 トニオが悪あがきをする。


「腕さえ治してくれりゃあ役に立ってみせるからよ! 誰か! 指名してくれよ頼むよ!」


 グスタフも以下同様である。


 支部長は「連れて行きなさい」と、四人をギルドの地下留置所へと送致した。


 クレスが俺の隣で、そっと呟く。


「ドルテさんちょっとだけ……寂しそうです」


「そうか? 終わってみれば別になんてことないぞ」


 元仲間の没落。しかも相手の自業自得。寂しそうなのはきっと、果たされるべきものが果たされたから故に空白ができてしまったことだろう。


 連中は哀れに思うが、救いの手を差し伸べる気などさらさらない。


「おい眼鏡よ! 我はその、なにか悪いことをしてしまったか?」


「いやいや助かりましたよさすがネプトゥ様。存在するだけで俺のリベンジにナイスアシストでしたし」


「ほ、褒めるな! それよりもっと罵れ! でないとゾクゾクせんではないか? なぶってくれなきゃ寂しくてぇ我死んじゃうかも」


「やらねぇよ! ったく」


 あーもう、こいつをどうにかしなきゃならんな。


 クレスが安堵の息を吐く。


「よかった。いつものドルテさんが戻ってきましたね!」


「心配してくれたのか」


「もちろんですよ。それで、これからどうします?」


「そうだな。とりあえずネプトゥの教育も兼ねて、また簡単な依頼をこなしていこう」


「調教ッ!? 我を調教するというのか下劣なる眼鏡様よ♡」


 よだれ出てるぞ変態魚類。


 さて、今日も今日とて掲示板で仕事を探そう。


 名声値を稼いでランキングが上がればやれることも増えていく。


 少しだけわくわくしてきたな。


 だって、まだこの世界には、手つかずの海底遺跡や大魔導師の向こう側の秘密が待っているのだから。

応援ありがとうございます~♪

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤解といてないけど大丈夫なのだろうか... 異常性癖の変態だと思われてるんじゃ? [一言] 続いて欲しい。できればあのマゾのロリ状態での戦闘シーン見たい。
[良い点] いきてくるしめ [一言] 我らは冒険に勤しむ!
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