終話
彼side――――――――――――――――
「…俺は」
そうだ、俺は3階のマンションから飛び降りて死んだはず。
あれ…なんで死んだんだっけ…。
いや、俺は誰だっけ…?
手には両手で持つような大鎌が握られている。
黒いレインコートのような物を来てる俺は…誰だ?
周りを見渡すと海と山が見える。
前からは目を腫らした身長が低い女の子が歩いてくる。
こんなもの見られたらやばい人と思われると直感で感じ、アワアワ焦るがその子はこちらに見向きもせずにスルーしていった。
「…俺って見えないの?」
試しに女の子の周りで色々してみるが全く反応がない。
ふむ…。
「俺は…幽霊ってことなのか?」
しかしなんだろうか。
この子を見ると放っておけないというか、生前何か関係あったのだろうか?
…まさか。この世に人はたくさんいる。
それでも気になってしまう。
俺は彼女の後ろをついて行くことにした。
彼女に近づく黒い人影?みたいなものが目に付いた。
よく分からないが雰囲気で良くないものと分かる。
俺はそれを鎌で叩き斬る。
その影はゆらゆらと煙のように掻き消え消滅した。
俺は…この子を守るためにここにいる…のか?
何となくそんな気がした。
彼女side―――――――――――――――
あれから2日後だろうか。
短いようで彼がいないだけで長く感じる最近。
何故か彼が近くにいる感じがする。
どうして?
気の迷いだろうか、心を保つためだうか。
何故かそんな気がする。
最近少し肩が軽くなった気がすることが多くなった。
事故も起きず、平和な日々を送り続ける。
彼のお墓に参りに行きたいが、場所を知らないため行けない。ご家族とも顔を合わせづらいし…。
諦めて家事を終わらせ、仏壇にお参りしようと考えた。
彼side――――――――――――――――
勝手に家に上がっている俺は正直家に彼女以外誰もいない今、物凄く居やすかった。
見えないとはいえ気を使うものだ。
彼女は家事を始めてせっせと動いている。
相変わらず記憶は蘇らないが、彼女を見ていると何故か安心できた。
俺はふと気になっていた仏壇に目をやる。
「…勝手にあがってます」
申し訳なさから俺は仏壇で手を合わせた。
その時、後ろで音がした。
「あぁ…思い出した…」
彼女side―――――――――――――――
何故かは分からない。引っ張られたと言うべきか。
仏壇にお参りしようと思った。
後でもいいはずなのに。
私は鏡を吹いていたことすら忘れ、仏壇に近づいた。
何か、違和感を感じる。
違和感に気をとらていたせいで
私は鏡を落としてしまった。
「あ…割れてないよね…」
私は拾おうとして、その鏡に黒いなにかが写っているのを見つけた。
「…?」
仏壇の目の前で綺麗に正座し、横に現実じゃありえない死神が持つような鎌を置き、ただひたすら目を閉じ手を合わせている。
仏壇を見やるがそこには誰もいない。
しかし、鏡越しになると見えるその黒い姿は見覚えがあった。
「ユキオ…?」
その黒い死神のような男が振り向くと
死んだはずの彼の顔だった。
彼は私の方を向くと
「…久しぶりだね、ごめんね。
たくさん迷惑かけちゃったよね…たくさん怒らせちゃったよね…
これからは…幸せになってね」
瞬きした頃には
彼の姿は。まるで幻のように消えていた。
これはあくまでフィクションです。
もしあなたがこの選択を迫られた時
どうしますか?
完璧に後悔がない答えを選べる人はそう多くないでしょう。
一瞬の判断で一生の後悔か
一瞬の判断で一生の虚無感か
曖昧にしたままだと…
気づいた時には
もう既に手遅れかもしれません。
もう既にその人は居ないかも知れませんよ?
それでは皆さん
"良い夢を"