始話
男女の恋愛を描いてみた小説です
別れた元彼が死んだ。
精神的、身体的に貞操を消されて殺されたらしい。
「寄りを戻して欲しい」
それが彼から聞いた最後の言葉になった夏と秋のあいだの季節。
彼が孤独なのは分かっていた。
それでも自分の幸せを優先したんだ。
私が私でいるために。
きっとこの気持ちを持ったままでは続かない。
何回も繰り返したこのやり取り。
私の精神が削られていた。
その結果がこれだった。
彼の
「君がいないと死んでしまう」
と、涙を堪えようとしてる顔で叫んだ顔が浮かんでくる。
それから不思議と思い出せなかった彼との記憶がどんどん浮かんでくる。
一緒に見た映画。
アニメ好きで共通だった私たちはその映画で体力根こそぎ持っていかれたっけ。
一緒に泳いだプール。
田舎の方だからあまりでかい施設ではなかったけど
冷えたプールはとても気持ちよかった。
シャボン玉のように浮かんでくる記憶に私は懐かしさが込み上げていた。
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私達は今思えばお似合いだったと思う。
話し始めて友達として仲良くなるのに時間はかからなかった。
もともとお互い趣味が共通していたこともあった。
付き合ってからも互いのことはまるで兄弟のように思えるほどそっくりだった。
LINE入れ替わりで送ってもバレないほど
互いの考えがわかるほど
異性として好きじゃなくても
何故か彼の事を考えている自分がいた
その彼が亡くなった。
もう考えなくていい。
あんなメンヘラな彼。
束縛してくる彼。
喧嘩した日。
めんどくさいと思う日。
なのに、どうして
思い浮かべてしまうの。
あんなに嫌いなとこあるのにどうして人として好きなの。
他の人なら許せない。
他の人なら縁すら切れると思えるのに。
彼が消えてからは虚無感しか無かった。
学校も彼がいないだけで静かで
いくらLINE送っても返ってこなくて
本当はまだ生きてるんじゃないかという希望をどこかで望んでしまっている。
しかし、そんなことは無い。
学校でも自殺と発表され
葬式も行われたらしい。
私は葬式には行かなかった。
葬式に行くと。
そこで彼の亡骸を見てしまうと
彼の死を認めてしまうから。
「私が…あの時…」
私が選んだ幸せは彼を失っても幸せでいれるほどの幸せだったのだろうか。
いや、幸せで居れるならこんな虚無感には襲われなかっただろう。
「また…選択間違えたのかな…また…大切な人失っちゃった…」
暗い自室で泣き崩れる私の姿は闇に溶けていた。