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最終話

 遡る事十年前。


 俺とワーグナーは、街に迫る強大なモンスターを討伐するクエストに参加していた。

 そのモンスターの名は、エンドギアス。恐竜型モンスター最強の力を誇るエネミーだ。


 異常な凶暴性を持つモンスターであり、時折気まぐれに街へやって来ては跡形もなく破壊の限りを尽くす、命を持った大災害だ。


 戦闘は熾烈を極めた。三日三晩に及ぶ戦いの末、俺がエンドギアスにとどめを刺し、戦いを終わらせた。はずだった。

 奴は死んだふりをして危機を逃れていた。油断した俺は奴に殺されそうになったが……そこを庇ったのがワーグナーだ。


 彼女は俺の盾となり、命と引き換えに俺を助けた。エンドギアスはその後敗走、姿を消してしまい、以来行方不明となっていた。

 だが、いまそのエンドギアスが街にやって来ている。デスワームの傷からして、砂漠ダンジョンを経由して移動しているようだ。


「間に合ってくれ……ワーグナー……!」


 全力で走り、バンデッタに到着したが……遅かった。

 街は徹底的に破壊され、見る影もなくなっている。冒険者達が必死に食い止めたであろう形跡はあるが、奴には敵わなかったようだ。


 エンドギアスは街の中央に陣取り、勝ち誇るかのような咆哮を上げていた。


 ティラノサウルスがより戦闘向けに進化したような、屈強な肉体を持っている。尻尾を揺らせば大気が震え、一歩踏み出すだけで大地が揺れる。絶対的な生命力を持った破壊生物がそこに居た。


「なにこれ、街が……!」

「生存者を救助して避難しましょう、この場に居ては危険です」

「分かっている! いいか、エンドギアスには絶対近づくな、俺達で勝てる相手じゃない!」


 「潜伏」を駆使しつつ、逃げ遅れた人々を救出していく。道中、幾度もエンドギアスの攻撃を受けそうになり、肝を冷やした。


 あいつは、あの時の個体なんだろうか……。


 様子を見ながら、エンドギアスを観察する。そしたら、決定的な証拠を見つけた。

 左胴体に大きな切り傷が付いている。あれはかつて、ワーグナーが付けた傷だ。


「お前か……十年前、俺から全てを奪った……!」


 瞬間、俺はなりふり構わずエンドギアスへ走っていた。

 ワーグナーを奪った相手だ、許せるはずがない。何があろうと俺が倒さなくちゃならない、最大の仇敵だ!


「ダメだよおじさん! おじさんが言ったじゃないか、戦っちゃダメって!」

「うるさい! あいつは、あいつは俺が! 倒さなきゃならないんだ!」

「ミスターコウスケ……アンナさん、援護を!」


 アンナとミコトの援護を受けながら、俺はエンドギアスに立ち向かった。

 だが、クルセイダーとは違う。火力があまりにも足りなさすぎる。どれだけ攻撃を当てても、奴には一ミリもダメージが入らなかった。


 逆にエンドギアスが繰り出す数々の攻撃は、掠るだけでも大きなダメージを受けてしまう。直撃したら、恐らく俺達は消滅するだろう。

 恐怖が一瞬足を竦ませる。刹那、エンドギアスの踏みつけが目の前に落ちてきた。


「ぐうっ!?」


 運よくカス当たりで済んだが、それでも体勢は崩れてしまう。動けぬ俺へエンドギアスが止めを刺そうと襲い掛かってくる。

 もうだめか。覚悟し、目を閉じる。


『やらせるか!』


 その時だった。ラピッドDが、エンドギアスに猛烈なパンチを叩き込んだ。


「お前、ここに!?」

『話は後、早く逃げて!』


 ラピッドDの機能を駆使し、エンドギアスに連続して攻撃を当てていく。その内の一発が、ワーグナーが残した傷に当たった。

 するとエンドギアスが苦しみ始める。あの古傷のせいで、局所的に防御力が低下しているんだ。


『そこを狙えば……ぐっ!?』


 猛然と走ろうとしたラピッドDが失速した。効果切れだ。

 立ち直ったエンドギアスがラピッドDを尻尾で殴り飛ばす。まずい、あの一撃を喰らったら、いくらラピッドDでも!


「おい、大丈夫か! ……えっ」


 ラピッドDは装甲が壊れ、素顔が見えている。リチュアの素顔が。


「リチュア……どうして、お前……おい!」

「コウスケさん……! ワン支社長から、聞いたんです。街に、エンドギアスが迫ってきている事、コウスケさんの、因縁の相手だと……! コウスケさんが、大切な人を奪われたモンスターを見たら、絶対戦っちゃう……だから私、貴方を……守りたくて……!」


 リチュア……なんて、事だよ……。

 エンドギアスが迫ってくる。このままじゃ、あの時と同じだ。ワーグナーを失った時と。

 嫌だ、もう目の前で誰かが死ぬなんて、俺は嫌だ! 


「残りストレージは千円……行ける!」


 ありったけの金を払い、DLC装備を引き出す。

 クルセイダー専用の聖剣、Xギア。俺の身の丈にも迫る大剣を、歯を食いしばって握りしめる。

 俺には守るべき人が居る、乗り越えなくてはならない過去がある。エンドギアスを倒さなければ、未来は切り開けないんだ。


「ワーグナー……俺に、力を!」


 エンドギアスへ向けて俺は走った。奴は当然迎え撃つが、そこへパチンコと手裏剣が目くらましをしてくれる。


「行けおじさん!」

「エンドギアスに一撃を!」


 ミコトとアンナだ。彼女らの援護を背に、ワーグナーの残した切り札へ剣を突き立てる。

 深々と刺さった剣はエンドギアスの心臓部まで達し、多量の血を吐き出す。やがてエンドギアスはデータの粒子となり、消えていった。


「リチュア……無事か、リチュア!」


 急いで倒れたリチュアの下へ駆け寄る。ダメージは大きかったようだが、無事なようだ。


「コウスケさん……よかった、怪我がなくて……」

「生きているんだな、リチュア……俺、お前を、守れたんだな……!」


 感極まり、リチュアを抱きしめてしまう。

 ワーグナー、見ていてくれたかい。

 どうにか俺、守れたよ。かつての君と同じ、大切な人をな。


  ◇◇◇


 エンドギアスが残した爪痕は甚大な物だった。被害者も多数出て、復興には時間がかかるだろう。

 ワンは複雑な顔をしていたよ。儲かるのはいいが、傷ついた街を見るのは忍びないと。リチュアから背景は聞いていた。奴も奴で俺と同じ想いを抱えていたんだな。

 ただ、この街には俺を始めとした沢山の冒険者が居る。全員で力を合わせれば、きっとすぐに街は元通りになるさ。


「おじさーん! はやくしてよ、準備遅いよー」

「ああすまない、今行く」


 そして俺は今日もDLCを使い、クエストに挑む。早く街を復興させなくちゃいけないし、一つでも冒険者ランキングをあげなくちゃならないからな。


「本日はクエスト五件をクリアしてもらいます。そうでないと白月の流通も間に合いませんからね」

「おい、いつの間に俺達のマネジメントを担当するようになったんだ。そんな立場にないだろお前」

「別にいいじゃん、面倒な事やってくれるなら私楽でいいしさ」

「その通り。むしろ感謝して頂きたいくらいなのですが」


 物凄く勝ち誇った笑みを浮かべられると腹が立つのだが……まぁ実際助かっているからよしとするか。


「それじゃ、今日も気をつけていってきてください。くれぐれも、無茶はしないように」

「分かっているよリチュア。それじゃ、必ず無事に戻ってくる」

「はい!」


 それじゃあ、今日も頑張ろう。

 俺の目指す、理想の冒険者になるために。

ここまでご愛読いただきありがとうございます。

最後が駆け足になってしまい申し訳ありません。コウスケは前作のハワードよりキャラクターとして弱く、書いていくうちに彼の魅力が見えなくなってしまったので、ここで終わらせることにしました。

ひとえに私の力不足です、次はもっと魅力あるキャラクターを作っていこうと思います。

今後とも私の作品をよろしくお願いします。

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