冒頭の「掴み」が弱いので必死に考えたら何か出た
「小説の冒頭には、“掴み”が大事です。読者を一気に引き込む仕掛けを設けましょう」
小説の書き方を教えてくれるネット上の記事、エッセイ、本など様々なところで、ほぼ絶対に言われていることですね。今さらです。
初心者の私から言うと、「そんなんの分かっとるわい! だから具体的に、どないせいちゅうんじゃ!」です。
「掴み」を用意しなきゃいけないのは、本などを読まなくても分かっていること。しかし、それが「出来ない」、または、「弱い」という状態に陥ってしまう現実があります。
先日、私の書いた連載小説を読んでくれた読者様から、「最初の数話の掴みが弱い、それ以降が良いのにもったいない。最初数話は書き直した方がいいですよ」というご指摘を受けました。だいぶ要約と意訳しましたが、大体こんな感じです。
余談ですが、感想をくれる読者は、神様です。が、たまにこういった神の雷を頂きます。
ラーマーヤナでは、インドラの矢とも呼ばれているがね。
すみません、話を戻します。
前にも他の神様から、さらっと似たような雷を頂いていて、その時は「まったくいい掴みなんて思いつかん、無理です神様ぁ~」ってなって放置してたんです。
そんな怠惰で愚かな人間に、今回の神様が雷を落とされたのですね~
でも今回、私は少し文章力がレベルアップしてたので、「無理ですよ~」と言いつつ、必死に書直し案を考えました。
目指せ、掴み力アップ!
ということで、幾つかランキングに乗っている作品の最初数話を読んだり、書籍を漁ったり、秘密の古いお呪いを唱えてみたり……
そんなこんなで、初心者なりにちょっと気づいたことがあるんです。
それは――
「掴み自体に、“出来ていない”とか“弱い”があるんじゃない! 他に原因があったんだ!」
はい、何を言っているか分からないですね。これから説明します。
私は、初め「凄い掴み」を発明しなくてはと考えました。もはや閃きの勝負だと。
しかし、他の作品などを読んでいて気付いたんです。大体が突飛なことしてないなと。
考えてみてください。そんな、読者が「うおぉぉ!」って引き込まれるような、突飛で奇抜な「凄い掴み」なんて、簡単に発明できるわけないじゃないですか。
そんなことが出来るのは一部の天才だけです。
数多の凡人は、ある物を活かすしかない。人は土から離れて生きられないのよ!
すみません。取り乱しました。
掴みとは、出来事の“発端”だと、私は考えます。
だから、どんな作品でも「掴み」というもの自体は、ちゃんとあるんです。
その効果を阻害する「原因」があるから、掴みが「機能しない」、のだと私は考えたわけです。
大体の作品がそうですが、掴みというものは下で示した例の様に、斬新な物なんて使ってないのが殆どです。
○異世界に突然転移する。
○曲がり角で、男女がぶつかる。
○トラックに轢かれて転生する。
○悪者に絡まれている人からTUEEEして助ける
などなど他にも色々ありますが、ざっくり言ってしまえば、どこかで見たことあるようなありふれたものばかりです。
同じことを言いますが、掴みとは、出来事の“発端”だと思います。
だから――
「親方~空から女の子とか降って来ないですかね~」
「ないだろそんなの。いいから仕事しろ」
「へ~い」
今日も炭鉱の仕事はいつもと変わりません。
第2話に続く!
――何も起こらない!
ってやらない限り、どの作家も出来事の「発端」書いているはず、いや、書いてます。
ではなぜ掴みが弱くなるのか。
それは、掴みを「機能しない」に陥らせている「原因」があるから。
さてここで、私の愚作を例にとってみましょう。
ちなみにハイファンタジーですが、剣と魔法以外に、テロリストとか爆薬とか現代っぽい単語が出てきます。FF的なのをご想像ください。
テロリストたちが、地下トンネルを隊列を組んで走っていて、行き止まりに来たところで爆弾を仕掛け始める。(重く、緊張感のある感じで描写)
↓
(場面が変わり)鉱山を警備する主人公たち(計3人)が、巡回警備の交代までの間、待機室で喋っている。
↓
待機室の3人をそれぞれ、地の文で人物紹介する。
↓
作品の世界において、鉱山の所有者である企業(依頼主)や世界観はどんなものか説明する。
↓
冒頭のテロリストが仕掛けた爆発が起こり(テロリストは、自分たちで堀ったトンネルで鉱山内に入ってくる設定)、主人公たちが「な、なんだ!?」ってなる。
第1話おわり
ざっと書き出すとこんな感じです。
これを書いた時、「冒頭の爆弾がいつ爆発するのか、ハラハラするだろうなぁ~そんで、次の話から緊急事態になるし、掴みばっちりじゃん、しかもキャラ紹介や世界観も触れてて上手く纏めたぜ」とお花畑な思考をしてました。
そら、雷落ちますよ……
この時の考えでは「掴み」は、冒頭のテロリストの仕掛けた爆弾が、いつ爆発するのか、また、爆発したら次話以降一気にテロリストが突入してきて、主人公たちと戦闘状態になるということです。つまりは、緊急事態の発生。
さて、ここで掴みを機能不全にしてる原因を分析!
【原因1】
冒頭の「テロリストたちが、地下トンネルを隊列を組んで走っていて、行き止まりに来たところで爆弾を仕掛け始める」です。
※のっけから重厚な感じに書いてしまった。その後も重厚ならいいが、そうなっていない。1話の中で作風が安定しない感じがして、読者の集中力を削ぐ。
爆弾を強調したいなら、テロの描写はさらっとでいいし、なんならさっさと爆発させるべき。掴みがぼやける。
【原因2】
「待機室の3人をそれぞれ、地の文で人物紹介する」です。
※お話の中に、登場人物の紹介が1人につき4、5行の独立した文章で存在していて、掴みを強調することを阻害している。
読者が注目すべきは登場人物の設定ではないはず。人物の描写は、物語の中で小出しで十分。
といった感じで、原因は2つだと考えたわけです。
そして、原因1の冒頭はばっさりカットし、原因2については、物語の中に登場人物の特徴をちりばめて、説明の量を削減しました。
これで、読者に掴みに集中してもらう土壌はできました。
ただ、先ほど、掴みはありふれたものでいいと申しましたが、ありふれた物をそのままを使ったら、「テンプレだ」とか「捻りがない」と雷を受けます。
今時、トラックに轢かれて異世界に転生なんてそのままやったら、掴みにもなりません。
ですから、少しの捻りを加えて、掴み力の底上げは必要です。
でも、難しく考える必要はありません。その捻りだって誰かがやったことがある物だろうし、常識の範囲を抜けられないでしょう。本当にちょっと考えればいいんです。
大事なのは、掴みが機能すること阻害する原因を取り除き、掴みを活かす土壌を作ることです。
言ってしまえば、100点とりに行くのではなく、初めの数話の掴みは70点ぐらいの合格点を目指しましょうってことですね。
ちなみに底上げについてですが、私は、「爆発という出来事の発端」を、どうしても第1話の最後に持ってきたかったので、爆発を次話への掴み(引き)ということにして、別の掴みを用意しました。
冒頭の待機室で主人公たちが喋ってるシーンで、主人公だけが見える“正体不明”なものを出して、「なんでみんな見えないんだ?」って主人公が慌てるものです。
次話になっても、爆発後の緊急事態の最中に、その正体不明なものがちょくちょく見えるんですが、数話後に重要なキーになってきます。
これも、ありふれた掴みですよね。
でも、正体不明のものと爆発からの緊急事態という掴みの2段構えにして、底上げした感じです。
そして、もともと書いてあった数話後の展開に、上手く繋がっていく流れになりましたし、強調できる土壌が出来たおかげで、掴みに集中しやすい1話になったと思います。
神様にも「読みやすくなった」とか「引き込む力が上がった」とおっしゃっていただきましたし、一応成功したのかなと思います。ありがたや、ありがたや……
とまぁ、底辺に住まう初心者作家が、掴み力UPについて、ちょっと考えてみたという話です。
あくまで、一つの考察みたいなものなので、検証もしてませんし、参考程度に捉えて頂けたらと思います。
ただ、ここにきてまた問題が。
既に書いた話を修正したので、新規投稿にアップするわけでもなく、新たに読んでくれる読者がいないということです。
さて、その解決策については、あとがきに。
解決策、それは、あとがきで宣伝すること……ぐらいしか思いつきませんでした(;´∀`)
興味を持っていただけて、作品を読みに来ていただけると嬉しいです。
(感想を頂ければ)すぐに神様になれます。
ページ下部に、リンク貼っときます。