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天国のようで地獄

 俺達は、制服が可愛いと有名なファミレスに着いた。

 席は案外空いていて、待つ事なく座れたのは良かった。


 しかし! 俺は今、天国と地獄を両方覗くという、仏様も閻魔様もビックリな体験をしている。

 理由は簡単、ファミレスには、一つの席にソファーと椅子がテーブルを挟んで配置されているのがあるだろ? 何故か! 何故か三人一緒にソファーの方で座ってるんだよ! しかも俺が真ん中!

 嬉しいよ! 嬉しいけど、四人用の席だから、必然的にソファーの設計は二人が座れるようになっている。

 そんなとこに三人もいるんだ。先輩達に密着しちゃって俺の脳がアッツアツにオーバーヒートしちゃってます。


「とりあえず、ドリンクバー三つお願いします」


 田端先輩は店員にドリンクバーを頼んでいた。

 ああ! 店員の俺を見る視線が、何故かゴミ虫でも見るような目になってる! やめて! 可愛い服着てそんな目で俺をみないで! これは巧妙に仕組まれた罠なんだ!


「さ、飲み物取りに行こ」


 そう言って、三人、立ち上がる。

 つかの間の開放に俺は深呼吸をした。


「桜井君? どうしたの?」

「いえ、何でもないっす」


 そうだよな。突然ファミレスで深呼吸とかおかしいよな。

 気を取り直して、俺はコーラを取りに行った。

 水野先輩は紅茶、田端先輩はメロンソーダを持ってきた。


「優雅君、ちゃんと真ん中座ってね~」


 くっ! やっぱりか! すべてはこの田端先輩のせいだ。

 突然、優雅君真ん中ね~、とか言い出して、俺が遠慮しようとしたら、俺の耳元で、あら? 優雅君のマニアックさを広めて欲しいの? とか言われたんだよ! うるせえメイド大好き万歳!

 

「ええ、はい! 座りますよ!」


 半ばヤケになりながら叫ぶ。


「では! 改めまして、優雅君の入部を祝い~乾杯!」

「「乾杯!」」


 それぞれのコップを軽く当てる。


「ぷはぁ~! この一杯がたまんない!」


 田端先輩、あなたは一体どこのおっさんですか?


「あ、その気持ち分かるよ~」


 えっ!? 水野先輩分かるんですか!? そんなチビチビ飲んでるのに分かるの!?


「ま、まぁ。とりあえず、ありがとうございます」


 田端先輩はグラスを勢いよくテーブルに叩きつけるを

 いや、だからどこのおっさんだよ。


「ぷひ~。いや~、優雅君入って来て良かったよ。活動してるの私とさーちゃんだけだったからね」


 何と羨ましい……じゃなくて寂しい事だろう。二人だけではする事も限られるだろう。


「そう言ってもらえれば入ったかいがありますよ」

「お、言うね~コノコノ~」


 肘でグイグイしないで~。


「私も優雅君入って良かったよ。男手が欲しいときもあるしね」

「そうなんですか~。これから頑張りますね!」


 水野先輩に言われるとやる気しか出ねぇよ!

 それから俺たちは小一時間程話してから帰路についた。


「お兄ちゃん、顔がニヤついてるよ。少しキモイよ」

「おい、夏美キモイはねぇよ」


 確かにニヤついてたけど少々ぐさっときましたよ?


「高校で何かいい事あったの?」

「おお! 俺、部活入ったぞ!」


 俺がそう言うと、妹の夏美はジトっとした目で俺を見る。お兄ちゃん悲しいよ。


「はいはい。帰宅部ね」

「あ……」


 確かに帰宅部だけどな~。説明し辛れぇ……。


「いやな、俺の高校は部活動強制加入なんだよ」

「ヤバイじゃん」


 俺は妹に帰宅部について話した。


「へぇ~。救済措置みたいな部活かねぇ」


 時々思うが、こいつは中学二年の割には、結構大人びている。物事の理解は早いし、機転もきく。のくせに小柄な体躯にツインテールときた、完璧小学生にしか見られない。


 そんな大人びているのかどうなのかな妹は俺にニヤけた顔を向ける。


「それで、お兄ちゃんは可愛い先輩二人と今後一緒に部活すると」


 こいつ俺をからかう気だな。そうはいかせない。


「いや~、お兄ちゃんはどっちがいいのかな? 話を聞いた感じ水野先輩推しっぽいけど」


 夏美が俺をからかうのはよくある事だ。

 これがかなりウザイ。


「春が来たね~。嬉しい?」


 対処法は


「おう! 超嬉しいよ!」


 開き直る事だ。こうすれば、これ以上の会話は無くなる。


「……そ、そう」


 デメリットを挙げるならば、夏美に可哀想な目で見られる事だ。


「俺は晩飯食ってきたけど、お前どうするの?」

「帰宅部で食べて来たんだったよね。私は冷蔵庫にあるやつ適当に食べるよ」

「分かった」


 俺らは二人でこの家にいる。

 親がいない訳じゃない。父親は貿易の仕事をやってるらしく、世界を飛び回っている。

 母親もデザイナーだかなんかで同じく世界を飛び回っている。

 俺が中学一年の時に二人とも同時にいなくなった。

 俺はともかく小五の夏美の面倒をもっと見るべきだったと俺は思っている。


「お兄ちゃん? どうしたの?」

「何でもない。ちょっと考え事してた」

「帰宅部の事?」


 少しでもこいつに気を使わせない。俺は中一の時にそう決めた。


「そうだよ。これから楽しみだ!」

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