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最終章 (完)

翌日も高熱は治まらなかった。その次の日も、その次の日も……

 母ちゃんが僕の手をずっと握ってくれていた。それだけで少し安心した。

明らかに体が弱っていくのがわかった。鼻から酸素を送るチューブがついていた。息も苦しくベッドから少しも動けないという状況だ。

 母ちゃんは僕の手を強く握っていた。朝木さんは泣いている。みそのは朝木さんの肩に手をそっと置いていた。裕太も泣いていた。みんな僕の周りにいてくれていた。

 僕はわかっていた。もう死ぬんだと。きっとみんなもわかっているのだろう。息が苦しい。母ちゃんが背中をさすりながら、「翼がんばれ翼がんばれ」と言い続けた。

朝木さんが泣きながら言った。

「一緒にサッカー見に行く約束したじゃない」

僕には答える力が残されていなかった。

爺ちゃん婆ちゃんも泣いている。

 僕は最後に全身の力を振り絞って言葉を発した。

「ありがとう……」

 僕はその瞬間光に包まれた。光の向こうに、一人の女性が見えた。その女性の方へ近寄っていくと、朝木さんだ。少し大人っぽくなっていた。そしてお腹がふくれていて妊婦のようだった。

「翼君ありがとう」朝木さんはそういった。

 僕たちは抱きしめ合いキスをした。そしてまたぱっと光が僕を包み、そして何も無くなった。


 享年16歳 翼


 結局運命の本がなぜ落ちていたのか、誰が作ったものなのかわからないままだった。ただ運命は変えられた。僕が運命の本を見つけたことで一人の命を救えた。そしてその人と結ばれることができた。運命はきっと変えられる物、変えるために存在しているのではないか……

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